これは

広告表示を防ぐための更新です。そのうち普通の更新もします。今はとにかく暑い…。

「恋する女優 芦川いづみ」

        いづみR


去年の夏、神保町シアターでの特集上映「恋する女優 芦川いづみ アンコール&リクエスト」で、『男と男の生きる街』(1961)を観て、この芦川さんのイラストに取りかかったのですが、どうもうまくいかず、いったん中止。

その後、ときどき取り出して少しずつ描き直していたら、最初よりは良くなってきたので、ブログに載せようと思ったものの、載せるきっかけがなく。

そんな時、同シアターが開館10周年(おめでとうございます!)の節目に、これまでの特集の人気投票として「総選挙」を行うことに。
芦川さんの特集は以前から人気があって、「恋する女優 芦川いづみ」シリーズは既に第3弾まで開催されているので、そのうちのどれかがきっと上位に来るだろう、そしたらお祝いでイラスト載せよう…と思っていたら、本当に、シリーズ第1弾(2015年8~9月)が見事2位になりました。

(ちなみに『男と男の生きる街』は、その第1弾では上映されてないし、来月から開催される総選挙特集でも上映されません、あしからず…。)

さて芦川さんといえば、比較的初期の作品、例えば『風船』『洲崎パラダイス 赤信号』『誘惑』などの頃は、実年齢がまだ20歳くらい、しかも「前髪がとても短く、横と後ろは長い」という髪型だったため、かなり少女っぽく可憐な印象でした。

しかし『男と男の生きる街』では、先述の作品群から5年くらい経っていて、ご本人も役柄も、しっとり落ち着いた大人の女性に。
髪型も、以前とは正反対(前髪がやや長めで横と後ろはとても短い)なので、かなり印象が違います。
ただ、それでもやっぱり本質的な可憐さは、変わらない。

大人っぽさと可憐さ、2つの魅力が共存している感じを、イラストで少しでも表現したかったのですが、できたかどうか。

ところでこの『男と男の生きる街』、石原裕次郎演じる熱血記者が謎の殺人事件を追う…というスター映画で、全編にわたって関西のいろんな場所でロケされているんですが。
京都のお寺で撮影されたと思しきシーンで、極端な引きの画になるカットがあって。
裕次郎氏や芦川さんなど、メインのスターさんたちが、すごく小さくしか映ってなくて。
なんだか、そこだけシュールというか、妙に印象に残ってます。

そして今度、例の総選挙特集で、さっきチラッと触れた『誘惑』が上映されるのですが、これ、すごく面白いです。
以前、旧作邦画に詳しい知り合いの方が大好きな映画だと仰っていて、期待して観に行ったところ、期待以上の素晴らしさでした。

観た当時にツイートした感想の一部を、ここに書いておきます。
「ラブコメの群像劇で、約60年前の作品なのに全然古くないし洒落てるし笑える。細部まで工夫に満ちた精緻な工芸品のような映画。」

7月7日からの特集上映「神保町シアター総選挙2017」の詳細は、こちらです。
http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/program/10th.html

『イップ・マン 継承』

      ドニー低い構え

2015年  中国・香港  監督:ウィルソン・イップ  脚本:エドモンド・ウォン  出演:ドニー・イェン、マックス・チャン、リン・ホン、パトリック・タム、ケント・チェン、チャン・クォックワン、マイク・タイソン ほか

各地で上映中、または上映予定あり  
公式サイト→http://gaga.ne.jp/ipman3/


武術「詠春拳」の達人でブルース・リーの師匠として名高いイップ・マンの生涯を描く、シリーズ3作目。

今回は、街を荒らす不動産王フランク(マイク・タイソン)と戦う羽目になったり。
「自分こそが詠春拳の正統」と主張するチョン・ティンチ(マックス・チャン)から挑戦状を叩きつけられたり。
物静かで争いを好まないイップ・マン(ドニーさん)にとって、困ったことが続出。
さらには、愛する妻(リン・ホン)が病魔に襲われてしまい……。

シンプルで分かりやすいストーリーですが、作品自体に「物足りない」という感じは無いです。
やはり、素晴らしいアクション・シーンが随所に登場するからでしょう。

今回のアクション監督はユエン・ウーピン。
アメリカでも活躍し、今や世界的なアクション監督ですが、今回、古巣の中華圏、しかも自分の弟子といえる2人(ドニーさんとマックス・チャン)がメインの映画ということで。
いかにも動きづらそうな場所で戦わせたり、素手だけでなく色んな武器を使わせたり、ハイレベルかつ凝った演出になっています。

ただし一部のシーンでは、ドニーさんが自らアクションの振り付けを担当したそうで、それはイップ・マンとフランクとの戦いのシーン。
ここでイップ・マンは、非常に印象的な構えのポーズをとります(上のイラストに描いてあるポーズ)。
実はこのポーズ、正式な詠春拳の型ではなく、「詠春の構えのまましゃがんだポーズ」だそうです。

つまり、リアリズムとしては×なのだけど、かっこよくて劇的な効果もあるから「映画の演出」としては◎、という考え方なのですね。
その結果として、あのポーズが気に入ってイラストに描いたりする観客も出てくるわけですから、まさにドニーさんの思うつぼ、ですなあ。

いっぽう俳優としてのドニーさんは、というと。
昔はドニーさんがこういう「物静かで穏やかな人」を演じていると、なんかちょっと無理してるというか、本来はギラギラした人が頑張って静かな人を演じてるように見えたものですが。
今回は、そういう無理やり感・頑張り感は一切なし!
自然にイップ・マンになりきっているように見えました。

ドニーさんも今年で54歳だし(撮影時は52歳くらい)、人としても役者としても経験を積んで、渋みが出てきたのかもしれません。

また優れたアクション俳優とは、「役の感情や意志をアクションで表現できる人」だと私は常々思ってますが、そういう意味でも、ドニーさんはますます成長しているし、マックス・チャンも今後さらに活躍しそうな予感がします。

最後に、この映画のパンフレットについて。
谷垣健治さんと江戸木純さんと飯星景子さんによるコラム、くれい響さんによる川井憲次さん(劇伴担当)へのインタビューなど、香港アクションやドニーさんに縁の深い方たちが参加されていて、読みごたえがあります。

映画のパンフって時々、「なんでこの人が書いてんの?」と思うような、作品にあまり関係ない人が文章を寄せていて、読んでみるとたいてい、ぼんやりした抽象的な感想文だったりするのですが、今回のパンフは上記のメンバーですから、具体的で面白い記事ばかり。
このブログ記事を書く際にも、参考にさせていただきました。

『哭声/コクソン』

       祈祷師ジョンミンRR

2016年  韓国  監督・脚本:ナ・ホンジン  出演:クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村 隼、チョン・ウヒ、キム・ファニ ほか
各地で上映中  公式サイト→http://kokuson.com/


少し前に観たので細部はやや記憶が薄れているものの、作品自体の印象はまだまだ鮮烈。
というのも、ちょっと変わった映画でして。
何より、構成が変わってると思います。

基本的には、田舎での連続殺人事件と、それを捜査する警官(クァク・ドウォン)の話で、その警官の日常・家族・心情といったものも詳しく描かれるので、彼が主人公ではあるのですが。
クライマックスのガーッと盛り上がるところでは、謎の日本人(國村 隼)と祈祷師(ファン・ジョンミン)がメインになって、警官は脇に追いやられてしまいます。
ちなみに、その日本人と祈祷師に関しては、背景や心情は描かれません。
まさに謎の2人。

つまり、いちおう警官の視点で話が進むものの、大事なところで謎の2人が大活躍(?)するという、不思議な構成。
結局この映画って、警官の視点で観ないほうがいいと思います。
特定の誰かの視点でなく、全体を俯瞰するような気持ちで、しかも、ある村の話でなく世の中とか世界を見渡すくらいのつもりで観たほうが、いろいろ感じるものがあるんじゃないかと。

ナ・ホンジン監督は前作の『哀しき獣』も面白かったのですが、今回は作風が変化していて、また別の面白さがありました。

役者さんではやはり、國村さんとファン・ジョンミンが特に強烈でしたねー。
國村さんがこの摩訶不思議な役で、青龍賞(韓国の有名な映画賞)の助演賞のみならず人気スター賞まで獲ったというのは、國村さん自身も凄いし、韓国の観客の皆さんも凄い。

そしてファン・ジョンミン、いや~やっぱりイイなあ、この人。
祈祷シーンが2回あるんですが、両方とも踊りが素晴らしく、しかも激しい。
彼はもともとミュージカルもやっていて、西洋的ないわゆるダンスが得意なので、今回のような非常に東洋的な衣装や小道具を使っていても、踊り自体は西洋のダンス寄りで、それがまた独特の味わいになってる。

ジョンミン氏に関しては、以前、『新しき世界』でのサルっぽい顔を描いたことがあるのですが、今回は民族衣装のダンス姿、次は洋服で全身像(あくまで予定)…といった具合に、いろんな姿を描いていきたいです。
なお上のイラストは、2回目の祈祷シーンです(1回目とは衣装がかなり違う)。
左手に持っているのは鈴です、棒の先に鈴がいっぱいついているもの。
ブドウではありません…。

『人魚姫』

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2016年  中国・香港  監督・脚本:チャウ・シンチー  出演:ダン・チャオ、リン・ユン、キティ・チャン、ショウ・ルオ ほか
現在、各地で上映中  公式サイト→http://www.ningyohime-movie.com/


20年ほど前に『0061 北京より愛をこめて!?』(94)を観て、主演&共同監督のチャウ・シンチーにすっかり魅了された私。
以後、ずっとシンチーを追いかけています。

彼はその後もしばらく「主演&誰かとの共同監督」というスタイルを続けていましたが、やがて「主演&単独での監督」になり。
またしばらくそれを続けたのち、『西遊記~はじまりのはじまり~』(13)では監督業に専念。
今回の『人魚姫』でも出演はせず、監督に専念しています。

で、この『西遊記』と『人魚姫』の両方、つまりシンチーが監督に専念した2作品にメインの役で出演しているのが、ショウ・ルオ。
おそらくシンチーは、ショウ・ルオを高く評価していて、喜劇俳優として大きく育てたいと思っているのでしょう。

ショウ・ルオもその期待に応えて、そ~と~頑張っています。
彼はもともとアイドルとして人気があったらしく(なるほど顔立ちはキュートなイケメン)、歌やダンス、俳優業など多方面で活躍、今では「アーティスト」と呼ばれるような存在。
そんな彼が、『西遊記』では「空虚王子」という珍妙な役を演じ、今回の『人魚姫』では、また違った珍妙さを持つ「タコ兄」を、熱演・怪演しています。

『人魚姫』は、「悪徳実業家による環境破壊で行き場を失った人魚族が、その実業家の暗殺を企て‥」というストーリーで、ショウ・ルオ演じるタコ兄は、人魚族のリーダー。
人魚なのになぜか下半身がタコで、上半身は貝殻で作った飾り(?)を着用、頭は金髪の編み込みヘア。

この外見だけでもかなり強烈なのに、派手なギャグをいろいろとかましてくれて(特に鉄板焼きのシーン)、実になんというか激しい役です。
ショウ・ルオ、『西遊記』では青白い二枚目だったのに、今回は体をムキムキに鍛えてワイルドな兄貴になりきり、顔面の筋肉も鍛えたのか、ものすご~く顔を歪ませたりします。
でもイラストに描いたように、驚いて目を丸くした時は急にアイドル風な可愛い顔になったりして、まあ忙しい。

なんかショウ・ルオのことばっかり書いてますが、他の役者さんも皆いいですよ~。
悪徳実業家役のダン・チャオは、気持ち悪いダンスが最高。
人魚姫役の新人女優リン・ユン、かわいい(若い頃のスー・チーにちょっと似てるかも)。
警官役のリー・ションチンは近年のシンチー映画によく出ている人で、すごく特徴のある顔をしていて、それだけでも面白いのですが、今回はイラストを使ったギャグが炸裂!
あと、ツイ・ハーク監督が脇役でちょっと出演していて、相変わらずカッコいい。

さて肝心の作品自体は。
風刺的な内容もありつつ、ファンタジーやラブストーリーの要素もあり、そしてやはりシンチーなので、基本的にはコテコテのコメディ。
コントのような場面が多いのですが、決して「コントの羅列」にはならず、ちゃんと「映画」になっています。
ギャグを大事にしつつも、全体を貫くストーリーや人物の感情の流れも大事にしている。
シンチーの映画は昔からそうですが、今回改めて、そのことを強く感じました。

ところでこの映画、主題歌もすごくいいです(特に「ウッ! ハッ!」という掛け声が)。
日本版の予告編にはこの主題歌が使われてないので、こちらのMVをどうぞ→
https://www.youtube.com/watch?v=0Qrd9z0J2gM

『無垢の祈り』

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2015年  監督・脚本:亀井亨  出演:福田美姫、BBゴロー、下村愛、サコイ、綾乃テン、奈良聡美、YOSHIHIRO、幸将司、高井理江、シゲル、三木くるみ、河嶋遙伽、平山夢明

■渋谷アップリンクにて上映延長中、宮崎シネマ館にて11月14~18日再上映
■シネマスコーレ(名古屋)にて2017年1月上映予定、松本CINEMAセレクトにて2017年2月上映予定、京都みなみ会館にて2017年上映予定
公式サイト→http://innocentprayer.s2.weblife.me/


先週、渋谷アップリンクにて鑑賞。
この映画について、原作者で出演もしている平山夢明が、初号試写を観てこう言ったそうだ。
「もう少し手加減しないと、観て死ぬ人が出るなと思った」。

なるほど、主人公の10歳の少女・フミ(福田美姫)は、学校ではいじめられ、通学路では小児性愛者に狙われ、家では義父(BBゴロー)と実母(下村愛)に虐待されている。
暗く辛いストーリーだ。
しかも、フミが会いたいと願うのは連続殺人犯で、その彼のグロテスクな犯行シーンもある。
また、直接的な描写ではないが、義父による性的虐待のシーンもある。
観て強い衝撃を受ける人がいても、まったく不思議ではない。

しかし私の場合、ある程度内容を知ったうえで観に行ったせいか、それほど凄い衝撃‥というのは無かった。
(ただラストで、タイトルの「無垢の祈り」の本当の意味が分かったときは、衝撃というよりも、ひどく悲しくて泣きそうになった。)

さらに言えば、この映画、たしかに観て辛くなる要素は多いものの、意外に(?)観やすくするための工夫もされていると思う。

例えば、先に述べた「学校でのいじめ」は、直接的には描かれない。
(もし、学校で同級生に嫌なことをされている描写などがあったら、この映画全体がもっと息苦しいものになっていたはず。)
そして、フミがひとりで自転車を走らせるシーンが多く、これが何だか開放的というか、観ていて少しホッとする。

また、フミは川崎あたりに住んでいるという設定らしく、川崎の工業地帯がたびたび映し出されるのだが、その夜景がとても幻想的で美しい。
児童虐待など現実的な内容の映画なのに、この夜景カットのおかげで、ダーク・ファンタジーのような雰囲気も生まれている。

ダーク・ファンタジーといえば、先述した「性的虐待の直接的でない描写」、これもやや幻想的か。
ただこの描写は、非常に辛い体験をした人が陥る、ある特殊な心理状態のメタファーとも受け取れるので、安易に「幻想的」などと言ってはいけないのかもしれない。

そう、やっぱり重い映画であることは確かだ。
性的虐待や暴力だけでなく、精神的な虐待も描かれていて、こちらはかなりリアルに表現されている。
例えば、義父がフミに延々と奇妙な説教をするシーン。
おかしな理屈で偉そうに喋りつづけるわけだが、こういう、相手をやたら支配したがる、支配欲の異様に強い人のイヤ~な感じが、よく出ていた。

というわけで、いろいろと見応えのある映画だった。
しかし、ひとつだけ気になったことがある。
主演の福田美姫ちゃんは撮影当時9歳だったそうだが、わずか9歳の少女に、芝居とはいえこういう状況を経験させていいのか? ということ。
どうか美姫ちゃんが今後生きていくうえで、この映画にまつわる思い出が、何かの糧になりますように。

最後に、イラストについて。
劇中のフミは前髪が長く常に顔が隠れ気味で、つまり、美姫ちゃんの顔がよく分からず‥。
場面写真を参考にしつつも、かなり自分のイメージで描いてしまった。
たぶん、似てない‥。


   ◆◆◆◆◆ 追記(11月17日) ◆◆◆◆◆

(最初に記事をアップした時、本当は他にも書きたいことがあったのですが、内容が主観的・個人的すぎると思い、やめました。でも日が経つにつれ、やっぱり書きたくなったので、書いておきます。)

『無垢の祈り』を観た時、さほど強い衝撃を受けなかったのは、先日書いたような理由によるものだが、実はもうひとつ、非常に主観的な理由があった。
それは、「安らぎを感じたから」。
私はこの映画に対して、奇妙な安らぎのようなものを感じたのだ。
特にラスト。
「ひどく悲しくて泣きそうになった」のは事実だが、それと同時に、なぜか安らぎのようなものも感じた。

主人公フミは、義父だけでなく実母にも(おそらく)絶望し、フミの悲痛な「祈り」と「叫び」で映画は終わる。
それを観ていて、悲しいと同時に、「ああ、絶望してもいいんだ」と思った。
この「絶望してもいい」という感覚が、私にとっては、ある種の安らぎなのかもしれない。

私自身は、フミのような過酷な環境で育ったわけではない。
現実にフミのような人はたくさんいて、その人たちに比べれば、はるかに恵まれた環境だったと思う。
しかし、どうしても受け入れがたいことがあり、10歳かそこらで、父親と良好な関係を築くことを諦めた。
絶望というほど激しいものではなかったが、それに近い気持ちも少しはあったかもしれない。

そういえば、今ふと気づいたのだが。
昔から、子どもを主人公にした作品で、私が惹かれるものは、たいてい「10歳かそこらの子どもが親と決別する(せざるをえない)」という内容だ。
例えば萩尾望都の『訪問者』とか、ダルデンヌ兄弟の『イゴールの約束』とか。
そして今回、『無垢の祈り』が加わった。

『無垢の祈り』の場合、「親と決別」という内容ではないのかもしれない。
客観的に見れば、違うのかもしれない。
しかし私の勝手な解釈では、あれは、「実母と決別する話」だ。
原作小説よりも映画のほうが、さらにその色が濃くなっていると思う。


それと、もうひとつ。
私は先日、「わずか9歳の子どもに、芝居とはいえこういう経験をさせていいのか?」と書いた。
この思いは、今も変わらない。
そして、この思いは、一般的なモラルや倫理とは関係ない。個人的なものだ。

私の場合、さほど大したことでもないのに、10歳頃のその経験が、成人後の自分に微妙に悪影響を与えていて、未だに完全には克服できてない。
だから、いくら芝居であっても、9歳で強烈な経験をしてしまうとどうなるのだろう‥‥と、ちょっと心配になってしまうのだ。

もちろん、監督はじめスタッフ・キャストの皆さんが、撮影時には充分配慮をされただろうし、その後もケアをされているはずなので、余計な心配だとは思う。
というか、余計な心配であってほしい。

結局、この映画にはとても惹かれるけれど、同時に少し疑問も感じる。
かなり矛盾した話だが、これが私の正直な感想だ。

『舐める女』

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2016年  監督:城定秀夫  脚本:長濱亮祐・城定秀夫  出演:七海なな、青山真希、富沢恵、木下桂一、沢村純、麻木貴仁、森羅万象 ほか

※この映画のR18版『汗ばむ美乳妻 夫に背いた昼下がり』が、9月16日から1週間、シネロマン池袋で上映されます。
詳細はこちら(クリックするとセクシー画像も出てきます、ご注意を)。
http://cineroman.blog92.fc2.com/blog-entry-597.html


先月テアトル新宿で観た『舐める女』(R15)がとても面白かったのですが、1回しか上映されず、観逃した方も多いのでは‥と思っていたところ、R18版がシネロマンで上映されることに。
で、それに合わせて記事をアップすることにしました。


カオル(七海なな)は男性の汗の匂いで興奮する、匂いフェチの主婦。
特に夫の輝彦(木下桂一)の匂いが大好きなのだが、彼は極度の潔癖症で、超キレイ好きなので、ほとんど石鹸の匂いしかしない。
とにかく何でも清潔にして、規則正しい生活をする輝彦。

そんな彼との生活でストレスがたまったカオルは、近所のグラウンドなどで、汗をかいた男たちの衣類をこっそり盗んできて、自慰行為に耽っていた。

ある日、カオルが汚れた床をティッシュで拭いてトイレに流していると、トイレの水が逆流しはじめる。
慌てて修理業者を呼ぶと、やってきたのは、汗っかきの青年・浅野(沢村純)。
カオルは思わず、彼の汗ふきタオルをバスルームに持ち込み、自慰行為に及ぶ。
その姿を見てしまう、浅野。
2人は深い仲になり、頻繁に会うようになった。

一方、輝彦は取引先の西岡(森羅万象)の接待として、上司(麻木貴仁)に連れられSMクラブへ。
最初は嫌がっていた輝彦だが、女王様・美香(青山真希)の調教を受けるうち、だんだん快感を覚え、美香のもとへ通い詰めるようになるのだが‥‥。


というわけで、あらすじを書きましたが。
このあらすじだけだと、「ちょっと暗くてインモラルなエロ映画」をイメージする方が、いるかもしれません。

でも実際は、「明るくコミカルなエロ映画」です。
ヒロインの匂いへの執着や夫の潔癖症っぷりが、あくまでも明るく描かれているし、いろいろと細かいギャグも仕込んであって、笑えます。
ちなみに私が特に好きなギャグは、「お茶と牛乳」です(観れば分かります)。

しかもこの映画、「道徳的」とまでは言いませんが、最終的にはけっこう「いい話」になります。
いわゆるインモラルな映画、ではありません。

で、そういう感じを表現したくて、上のイラストを描いてみました。
この映画の場合、いつもの私の絵のタッチでは違和感があるな~と思い、ウームと考えていたら、パッとこういう絵が浮かんだのです。

最後に。
舞台挨拶での監督の発言によると、この映画、真冬の非常に寒い時期に、2日半で撮影したそうなのですが。
全くそういう風には見えません。
画面の中は完全に真夏で、猛暑で、誰もが自然に汗をかいている感じです。
作品自体の面白さはもちろんのこと、低予算・短期間の撮影でもきちんと季節感まで演出している、その点にも敬服します。

あと、もうひとつだけ。上映館について。
今回、成人映画館での上映なので、「観たいけど行きづらい」という方もいると思います。特に女性は。
私自身(中年の女です)、たまに成人館に行っていて、特に酷い目に合ったことは無いものの、色々あって作品に集中できない時もあるので、無理にオススメするつもりはありません。

ただ今回のシネロマン池袋の場合、「夫婦・カップル割引」というのがあって、男女ペアで同時入場すれば、年齢に関係なく2人で2000円になります。
この割引を使って、男女2人とか4人とかで行くと、ある程度は行きやすいかもしれませんね。

マンシク(と、イクチュン)

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前の記事に書いたような経緯で、しばらくは女優さんのイラストを描こうと思っていたのですが。
少し前に、某かわいい女優さんを描いてみたら、どうもうまくいかないというか、ちょっと怖い感じになってしまったので、やっぱりオッサンを描くことにしました。

そのうちまた女優さんにチャレンジするかもしれませんが、その時は、かわいい人ではなく、「怪しげな美女」とか、そっち系の人を選ぶつもりです。

で、まあ、今回は、チョン・マンシク。
この人、前からちょっと描いてみたかったのです。
劇画チックで、くっきりハッキリした豪快な顔。
(ちなみに今回のイラストは、役を演じている時の顔ではなく、比較的最近の、記者会見での顔。)

この顔を初めて見たのは、たぶん、『息もできない』(製作・監督・脚本・編集・主演=ヤン・イクチュン)。
マンシクは、主人公の兄貴分というか、主人公が働いているヤクザ事務所(?)の所長みたいな役を演じていました。
以前読んだマンシクのインタビュー記事によると、この映画がキッカケで、色んな監督からオファーが来るようになったのだとか。
イクチュンに足を向けて寝られないねー。

その後はもう大活躍、主役や準主役はまだあまり無いものの、それ以外での出演はやたらと多い。
私が観た映画でも、『生き残るための3つの取引』、『哀しき獣』、『ベテラン』、『インサイダーズ 内部者たち』などなど。
しかも、今挙げた作品群と『息もできない』、ぜんぶ面白い。
作品に恵まれている‥というか、本人の仕事の選び方がいいのかもしれませんね。

『息も‥』を観た当時の自分の感想を読み返してみると、エラソーに批判していますが、これは多分、かなり気に入ったからこそ、あえて文句を付けたんじゃないかと‥‥。今となっては、いい印象が残っている映画です。)

そして、今後のマンシクの出演作で期待しているのは、『隻眼の虎』と『阿修羅』。
『隻眼‥』は、例のチェ・ミンシクと大杉漣が共演した大虎映画(日本版の予告編はこちら)。
『阿修羅』は、まだ韓国でも公開されてないし、日本で上映されるかどうかも分からないのですが、この記事を読んだかぎりでは、面白そうだなーと(記事に載ってるポスターもいい)。

ところで、ヤン・イクチュンって、その後、監督はしてないですよね。
また映画撮ってほしいなあ。
そしてその時は再び、マンシクをキャスティングしてほしい。

余談ですが、イクチュンが主演の日本映画、今まさに東京とその近郊で撮影中(10月まで)。
どうやら大勢のエキストラが必要らしく、大募集しているようなので、興味のある方は参加してみては?

『忘れじの面影』

            CCF_000001.png

1948年  アメリカ  監督:マックス・オフュルス  脚本:ハワード・コッチ  出演:ジョーン・フォンテーン、ルイ・ジュールダン、マディ・クリスチャンス、マルセル・ジュルネ


先日、知人の男性から、このブログのイラストについて、「なぜかオヤジが多いですね、若くて可愛い女優も見てみたい」というようなご意見をいただきました。

私は映画を観る場合は、古今東西の色んな作品を観たいと思うほうなのですが。
イラストを描く場合は、「東洋人の、ややコワモテの(クセのある)男優を描きたい」という気持ちが強く、ついそういう人を多めに選んでしまうのです(まあ基本的に、ジョニー・トーのノワールものとかが好きな人間なので‥‥。)

といっても、それ以外の人を描きたくないわけではないし、たしかにこのブログのイラストはちょっと偏り過ぎなので、このへんで女優さんを登場させよう~と考え始めました。
さらに最近の気分として、アメリカの古い映画を観たいと思っていたところ、シネマヴェーラでピッタリの特集が!

「ジョージ・キューカーとハリウッド女性映画の時代」。
で、観てきました、『忘れじの面影』と『旅愁』。
両方ともジョーン・フォンテーンが主演ですが、この方、昔のハリウッド女優としては、容姿がちょっと地味というか。
美人ではあるものの、やや控えめ・あっさりめな顔立ちで、ゴージャスさやセクシーさは、あまり無い。

でも、その持ち味が活かされています。特に『忘れじの面影』では。

この映画で彼女が演じているヒロインは、少女のころ知り合った男性に恋をし、ずっと思い続け、のちに彼と再会し、彼には忘れられていたけれど、2人で楽しく夜を過ごし結ばれて、でも捨てられて、また再会するものの、また忘れられていて‥‥という、やたら彼に忘れられるヒロイン。

そう、彼女の、「美しいけどちょっと地味で、強い印象が無い」という持ち味が、このやや極端なストーリーに説得力を持たせている‥ような気がします。

さらに「彼」役のルイ・ジュールダンは、いかにも押しの強そうな濃いめの二枚目で、「彼女にとっての、忘れられない男」という役柄に、とても合っています。

ところで、さきほどこの映画のストーリーを説明した時、ちょっとコミカルな感じで書いてしまいましたが、この映画自体は、あくまでも「哀しいメロドラマ」でして。
実際には、「彼との間にできた子供が幼いうちに死んでしまう」など、悲劇的な要素もいろいろ入っています。

ただ、あの「やたら彼に忘れられる」という部分は、そこだけ取り出すと、やはりちょっと極端というか、強引というか、一歩間違うとコミカルになりそうな感じ。

でも、そういう極端な要素をあえて投入するからこそ、「哀しいメロドラマ」がググッと盛り上がるわけだし‥‥。
例えばメロドラマで「やたらと、すれ違いが何度も続いて、なかなか会えない」という展開のものがありますが、これなども、「ちょっと極端(強引)だけど、あえてやりました!」ということなんでしょうね。

『バット・オンリー・ラヴ』と『夢の女 ユメノヒト』

『バット・オンリー・ラヴ』
2015年  監督・脚本:佐野和宏  出演:佐野和宏、円城ひとみ、酒井あずさ、蜷川みほ、芹澤りな、柄本佑、飯島洋一 ほか

現在、上映中  公式サイト→http://www.but-only-love.com/

『夢の女 ユメノヒト』
2015年  監督:坂本礼  脚本:中野太  出演:佐野和宏、伊藤清美、和田華子、西山真来、小林節彦、川瀬陽太、吉岡睦雄、櫻井拓也、伊藤猛 ほか

現在、上映中  公式サイト→http://www.interfilm.co.jp/yumenohito/


今回、イラストはナシです。
以前、佐野和宏さん(今より少し若い頃の)を描いて載せたことがあるので

さて、佐野さんが18年ぶりに監督業に復帰し自ら主演も務め、さらに坂本礼監督の新作にも主演している‥というのは前々から聞いていたのですが、その2本が今、上映中。
先日、観てきました。

まずは、監督&主演の『バット・オンリー・ラヴ』。
ガンで声を失くした男。
過去には複数の愛人がいたりもしたが、病気をしてからは、まるで生まれ変わったかのように、妻と仲良く穏やかに暮らしている。
ところがある日、娘が自分の実の子ではないと知り‥‥。

つぎに、坂本礼監督の『夢の女 ユメノヒト』。
福島で生まれ育ち、10代で地元の精神病院に入院した男。
震災と原発事故で避難中、とっくに病気が治っていることが分かり、約40年ぶりに外の世界へ。
さらにガンで声を失った彼は、(遠い昔にお金を払ってした)初体験の相手に会いたくて、東京に向かう‥‥。

つまり、この2本の映画での佐野さんの役柄は、(ご本人の現状である)ガンで声を失ったということ以外は、きわめて対照的なのです。
『バット‥』の男は、結婚していて子どもがいて、元愛人がいて、酒と煙草が大好きで。
『夢の‥』の男は、女性にほとんど縁が無く、家庭を持ったこともなく、酒も煙草もやらない(やれない)。

この対照的な2人の男を、佐野さんは、表情と身体表現だけで見事に演じています。さすがです。
と褒めたものの、実は、『バット‥』のほうの芝居(というかご自身に対する演出)には、少し疑問を感じます。

主人公の、傷つき方。
彼は、傷ついた時や思いつめた時、声にならない声で叫んだり、延々と走り続けたり、わりと「絵になる」ことをするんですよね‥‥。

「人前では虚勢を張って、絵になることをする」のなら分かりますが、ひとりの時でも、なんだかいつも、ある程度の「カッコよさ」を保ってしまっている。
ひとりの時ぐらい、もっと無様に、みっともない感じで泣いたりしてほしい。
でないと、この主人公の辛さが今ひとつ伝わってこない。と、私は思います。

実はこのことは、昔からちょっと気になっていました。

私の佐野作品との出会いは20年ほど前で、まず、彼の監督作品のほとんどを占める「監督し出演もしている映画」を何本か観たのですが、惹かれながらも同時に、苦手意識も持ってしまいまして。
さっき書いたような、カッコつけてるというか、やや自意識過剰な感じに、どうしても違和感があって。
だからその後、監督作品はほとんど観てないです。

それに対して、出演作(ご自身で監督してないもの)は、ピンク映画を中心に、一般映画や学生の卒業制作映画など、いろいろ観てきました。
他の監督の映画に出ている時の佐野さんは、自意識みたいなものが全く感じられず、役柄の人物に没入しきっているように見えて、そういうところが本当に素晴らしいと思うのです。

今回の『夢の‥』でも、おどおどした冴えない初老の男性に完全になりきっていて、それゆえに、その冴えない男性が、とても愛おしい存在として輝いています。

ちなみにこの映画では、相手役の伊藤清美さんも素晴らしいので、2人が揃っているシーンは、すなわち名シーン。
特にクライマックスの、伊藤さんが佐野さんに延々と語りかけるラブシーン。
この長台詞の内容もすごく良くて(脚本は中野太氏)、観ていてウーッと泣いてしまいました。
あと、あのカラオケのシーンも、たまらん。

というわけで。
この文章を書いていて、自分が佐野さんの出演作ばかり追いかけ監督作をあまり観てない‥という事実に、改めて気づきました。
普段は全然、意識してなくて。

意識してないからこそ、先日、映画館のロビーで佐野さんをお見かけした時、長年のファンです~みたいなことを言って、握手していただいたのですが。
今考えると、私のような人間が握手していただくなんて、失礼なことをしてしまいました‥‥反省しております‥‥。
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サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
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