『無垢の祈り』

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2015年  監督・脚本:亀井亨  出演:福田美姫、BBゴロー、下村愛、サコイ、綾乃テン、奈良聡美、YOSHIHIRO、幸将司、高井理江、シゲル、三木くるみ、河嶋遙伽、平山夢明

■渋谷アップリンクにて上映延長中、宮崎シネマ館にて11月14~18日再上映
■シネマスコーレ(名古屋)にて2017年1月上映予定、松本CINEMAセレクトにて2017年2月上映予定、京都みなみ会館にて2017年上映予定
公式サイト→http://innocentprayer.s2.weblife.me/


先週、渋谷アップリンクにて鑑賞。
この映画について、原作者で出演もしている平山夢明が、初号試写を観てこう言ったそうだ。
「もう少し手加減しないと、観て死ぬ人が出るなと思った」。

なるほど、主人公の10歳の少女・フミ(福田美姫)は、学校ではいじめられ、通学路では小児性愛者に狙われ、家では義父(BBゴロー)と実母(下村愛)に虐待されている。
暗く辛いストーリーだ。
しかも、フミが会いたいと願うのは連続殺人犯で、その彼のグロテスクな犯行シーンもある。
また、直接的な描写ではないが、義父による性的虐待のシーンもある。
観て強い衝撃を受ける人がいても、まったく不思議ではない。

しかし私の場合、ある程度内容を知ったうえで観に行ったせいか、それほど凄い衝撃‥というのは無かった。
(ただラストで、タイトルの「無垢の祈り」の本当の意味が分かったときは、衝撃というよりも、ひどく悲しくて泣きそうになった。)

さらに言えば、この映画、たしかに観て辛くなる要素は多いものの、意外に(?)観やすくするための工夫もされていると思う。

例えば、先に述べた「学校でのいじめ」は、直接的には描かれない。
(もし、学校で同級生に嫌なことをされている描写などがあったら、この映画全体がもっと息苦しいものになっていたはず。)
そして、フミがひとりで自転車を走らせるシーンが多く、これが何だか開放的というか、観ていて少しホッとする。

また、フミは川崎あたりに住んでいるという設定らしく、川崎の工業地帯がたびたび映し出されるのだが、その夜景がとても幻想的で美しい。
児童虐待など現実的な内容の映画なのに、この夜景カットのおかげで、ダーク・ファンタジーのような雰囲気も生まれている。

ダーク・ファンタジーといえば、先述した「性的虐待の直接的でない描写」、これもやや幻想的か。
ただこの描写は、非常に辛い体験をした人が陥る、ある特殊な心理状態のメタファーとも受け取れるので、安易に「幻想的」などと言ってはいけないのかもしれない。

そう、やっぱり重い映画であることは確かだ。
性的虐待や暴力だけでなく、精神的な虐待も描かれていて、こちらはかなりリアルに表現されている。
例えば、義父がフミに延々と奇妙な説教をするシーン。
おかしな理屈で偉そうに喋りつづけるわけだが、こういう、相手をやたら支配したがる、支配欲の異様に強い人のイヤ~な感じが、よく出ていた。

というわけで、いろいろと見応えのある映画だった。
しかし、ひとつだけ気になったことがある。
主演の福田美姫ちゃんは撮影当時9歳だったそうだが、わずか9歳の少女に、芝居とはいえこういう状況を経験させていいのか? ということ。
どうか美姫ちゃんが今後生きていくうえで、この映画にまつわる思い出が、何かの糧になりますように。

最後に、イラストについて。
劇中のフミは前髪が長く常に顔が隠れ気味で、つまり、美姫ちゃんの顔がよく分からず‥。
場面写真を参考にしつつも、かなり自分のイメージで描いてしまった。
たぶん、似てない‥。


   ◆◆◆◆◆ 追記(11月17日) ◆◆◆◆◆

(最初に記事をアップした時、本当は他にも書きたいことがあったのですが、内容が主観的・個人的すぎると思い、やめました。でも日が経つにつれ、やっぱり書きたくなったので、書いておきます。)

『無垢の祈り』を観た時、さほど強い衝撃を受けなかったのは、先日書いたような理由によるものだが、実はもうひとつ、非常に主観的な理由があった。
それは、「安らぎを感じたから」。
私はこの映画に対して、奇妙な安らぎのようなものを感じたのだ。
特にラスト。
「ひどく悲しくて泣きそうになった」のは事実だが、それと同時に、なぜか安らぎのようなものも感じた。

主人公フミは、義父だけでなく実母にも(おそらく)絶望し、フミの悲痛な「祈り」と「叫び」で映画は終わる。
それを観ていて、悲しいと同時に、「ああ、絶望してもいいんだ」と思った。
この「絶望してもいい」という感覚が、私にとっては、ある種の安らぎなのかもしれない。

私自身は、フミのような過酷な環境で育ったわけではない。
現実にフミのような人はたくさんいて、その人たちに比べれば、はるかに恵まれた環境だったと思う。
しかし、どうしても受け入れがたいことがあり、10歳かそこらで、父親と良好な関係を築くことを諦めた。
絶望というほど激しいものではなかったが、それに近い気持ちも少しはあったかもしれない。

そういえば、今ふと気づいたのだが。
昔から、子どもを主人公にした作品で、私が惹かれるものは、たいてい「10歳かそこらの子どもが親と決別する(せざるをえない)」という内容だ。
例えば萩尾望都の『訪問者』とか、ダルデンヌ兄弟の『イゴールの約束』とか。
そして今回、『無垢の祈り』が加わった。

『無垢の祈り』の場合、「親と決別」という内容ではないのかもしれない。
客観的に見れば、違うのかもしれない。
しかし私の勝手な解釈では、あれは、「実母と決別する話」だ。
原作小説よりも映画のほうが、さらにその色が濃くなっていると思う。


それと、もうひとつ。
私は先日、「わずか9歳の子どもに、芝居とはいえこういう経験をさせていいのか?」と書いた。
この思いは、今も変わらない。
そして、この思いは、一般的なモラルや倫理とは関係ない。個人的なものだ。

私の場合、さほど大したことでもないのに、10歳頃のその経験が、成人後の自分に微妙に悪影響を与えていて、未だに完全には克服できてない。
だから、いくら芝居であっても、9歳で強烈な経験をしてしまうとどうなるのだろう‥‥と、ちょっと心配になってしまうのだ。

もちろん、監督はじめスタッフ・キャストの皆さんが、撮影時には充分配慮をされただろうし、その後もケアをされているはずなので、余計な心配だとは思う。
というか、余計な心配であってほしい。

結局、この映画にはとても惹かれるけれど、同時に少し疑問も感じる。
かなり矛盾した話だが、これが私の正直な感想だ。

『バット・オンリー・ラヴ』と『夢の女 ユメノヒト』

『バット・オンリー・ラヴ』
2015年  監督・脚本:佐野和宏  出演:佐野和宏、円城ひとみ、酒井あずさ、蜷川みほ、芹澤りな、柄本佑、飯島洋一 ほか

現在、上映中  公式サイト→http://www.but-only-love.com/

『夢の女 ユメノヒト』
2015年  監督:坂本礼  脚本:中野太  出演:佐野和宏、伊藤清美、和田華子、西山真来、小林節彦、川瀬陽太、吉岡睦雄、櫻井拓也、伊藤猛 ほか

現在、上映中  公式サイト→http://www.interfilm.co.jp/yumenohito/


今回、イラストはナシです。
以前、佐野和宏さん(今より少し若い頃の)を描いて載せたことがあるので

さて、佐野さんが18年ぶりに監督業に復帰し自ら主演も務め、さらに坂本礼監督の新作にも主演している‥というのは前々から聞いていたのですが、その2本が今、上映中。
先日、観てきました。

まずは、監督&主演の『バット・オンリー・ラヴ』。
ガンで声を失くした男。
過去には複数の愛人がいたりもしたが、病気をしてからは、まるで生まれ変わったかのように、妻と仲良く穏やかに暮らしている。
ところがある日、娘が自分の実の子ではないと知り‥‥。

つぎに、坂本礼監督の『夢の女 ユメノヒト』。
福島で生まれ育ち、10代で地元の精神病院に入院した男。
震災と原発事故で避難中、とっくに病気が治っていることが分かり、約40年ぶりに外の世界へ。
さらにガンで声を失った彼は、(遠い昔にお金を払ってした)初体験の相手に会いたくて、東京に向かう‥‥。

つまり、この2本の映画での佐野さんの役柄は、(ご本人の現状である)ガンで声を失ったということ以外は、きわめて対照的なのです。
『バット‥』の男は、結婚していて子どもがいて、元愛人がいて、酒と煙草が大好きで。
『夢の‥』の男は、女性にほとんど縁が無く、家庭を持ったこともなく、酒も煙草もやらない(やれない)。

この対照的な2人の男を、佐野さんは、表情と身体表現だけで見事に演じています。さすがです。
と褒めたものの、実は、『バット‥』のほうの芝居(というかご自身に対する演出)には、少し疑問を感じます。

主人公の、傷つき方。
彼は、傷ついた時や思いつめた時、声にならない声で叫んだり、延々と走り続けたり、わりと「絵になる」ことをするんですよね‥‥。

「人前では虚勢を張って、絵になることをする」のなら分かりますが、ひとりの時でも、なんだかいつも、ある程度の「カッコよさ」を保ってしまっている。
ひとりの時ぐらい、もっと無様に、みっともない感じで泣いたりしてほしい。
でないと、この主人公の辛さが今ひとつ伝わってこない。と、私は思います。

実はこのことは、昔からちょっと気になっていました。

私の佐野作品との出会いは20年ほど前で、まず、彼の監督作品のほとんどを占める「監督し出演もしている映画」を何本か観たのですが、惹かれながらも同時に、苦手意識も持ってしまいまして。
さっき書いたような、カッコつけてるというか、やや自意識過剰な感じに、どうしても違和感があって。
だからその後、監督作品はほとんど観てないです。

それに対して、出演作(ご自身で監督してないもの)は、ピンク映画を中心に、一般映画や学生の卒業制作映画など、いろいろ観てきました。
他の監督の映画に出ている時の佐野さんは、自意識みたいなものが全く感じられず、役柄の人物に没入しきっているように見えて、そういうところが本当に素晴らしいと思うのです。

今回の『夢の‥』でも、おどおどした冴えない初老の男性に完全になりきっていて、それゆえに、その冴えない男性が、とても愛おしい存在として輝いています。

ちなみにこの映画では、相手役の伊藤清美さんも素晴らしいので、2人が揃っているシーンは、すなわち名シーン。
特にクライマックスの、伊藤さんが佐野さんに延々と語りかけるラブシーン。
この長台詞の内容もすごく良くて(脚本は中野太氏)、観ていてウーッと泣いてしまいました。
あと、あのカラオケのシーンも、たまらん。

というわけで。
この文章を書いていて、自分が佐野さんの出演作ばかり追いかけ監督作をあまり観てない‥という事実に、改めて気づきました。
普段は全然、意識してなくて。

意識してないからこそ、先日、映画館のロビーで佐野さんをお見かけした時、長年のファンです~みたいなことを言って、握手していただいたのですが。
今考えると、私のような人間が握手していただくなんて、失礼なことをしてしまいました‥‥反省しております‥‥。

『ディアーディアー』

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2015年  監督:菊地 健雄  脚本:杉原 憲明  出演:中村 ゆり、斉藤 陽一郎、桐生 コウジ、山本 剛史、松本 若菜、柳 憂怜、政岡 泰志、佐藤 誓、染谷 将太 ほか
各地で上映中  公式サイト→http://www.deardeer-movie.com/index.html


数日前に新文芸坐にて鑑賞。
タイトルの『ディアーディアー』は、英語で書くと「Dear DEER」。「親愛なる鹿」。

子供の頃、幻の鹿「リョウモウシカ」を発見して一躍時の人となったものの、やがて目撃は虚偽とされ、「うそつき」のレッテルを貼られた三兄妹。
それから二十数年後。
長男の富士夫(桐生コウジ)は家業を継いだものの莫大な借金を背負い、次男の義夫(斉藤陽一郎)は精神を病んで病院暮らし、末娘の顕子(中村ゆり)は駆け落ちの果てに酒びたりの生活。
父の危篤をキッカケに、三兄妹は久しぶりに再会するのだが‥‥。

劇中で、義夫の精神疾患は「シカ事件」が原因、ということになっている。
が、三兄妹の父親はかなり暴力的な人(子供を殴る)だった‥とも語られるので、義夫の病気も顕子のアルコール依存も、まず父親に原因があったと思われる。
たぶん、そのあたりの(父の)事情も含めての「シカ」なんですね。

だから三兄妹は、死にゆく父と、「シカ事件」と、両方に改めて向き合うことになる。

この映画、まず冒頭にアニメで「シカ事件」の説明があり、その後は実写で、三兄妹の再会→父の見舞い‥と進んでいくのだが、この序盤での桐生コウジが本当に素晴らしい。
弟や妹や町の人たちなど、常に全方位に気を遣い、常に穏やかに微笑み、でも心の底に鬱屈を溜めこんでいて、いつか爆発しそうな感じ。
そういう富士夫の感じを、実にうまく表現している。

「あ、このお兄さん、いつか爆発する‥‥爆発する‥‥」って、観てていきなり緊張しましたもん。
つまり序盤でもう、ググッと入り込んだわけです。

この映画のプロデューサーでもある桐生氏、彼の存在はとても大きいと思います。
といっても、もちろん、彼の仕事だけが突出している‥という意味ではなく。
脚本、演出、他の役者さんたちの芝居など、色んな要素がかみ合って、序盤からラストまで、ずっと入り込んだまま観ることができました。

脚本といえば、こういう、わりと地味な内容をオリジナル脚本として面白く書くのって、多分すごく難しいことだと推測するのですが、まだ30代の杉原憲明氏、うまいですね。

そして監督の菊地健雄氏も30代、しかもこれがデビュー作。
といっても、これまで色んな監督のもとで助監督を務めていたせいか、あまり新人らしくなく、早くも熟練の境地というか、すでに「過不足ない」という感じ。

彼の、「過不足ある」作品も観てみたいです。
一観客の勝手な願望としては。

『GONIN サーガ』

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2015年  監督・脚本:石井隆  出演:東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、柄本佑、安藤政信、根津甚八、鶴見辰吾、佐藤浩市、竹中直人 ほか
現在、全国各地で上映中(公式サイト→http://gonin-saga.jp/


約20年前の『GONIN』の続編。前作で殺された男たちの遺族が、復讐に燃える話。

序盤は、前作の内容や人間関係の説明が多く、どうもあまりピリッとしない。
が、本筋の復讐譚が始まってからは、異様な緊迫感・緊迫感・緊迫感‥‥ラストまで。
しかも、時々ウッと泣きそうになったり呆然としたり、(いい意味で)観ていて疲れました。

まあ、石井隆監督の映画はだいたい観ていて疲れるのですが、今回は序盤がちょっと緩かった分、その後の緊迫感をより強く感じたのか、いつも以上に疲れたというか。
自分の何かを吸い取られたような気がします(これは褒め言葉です)。

ところでツイッターに、「更なる続編にはアンソニー・ウォン演じる香港マフィアも登場させて」みたいなことを書いたわけですが、この発想はどこから来たのかというと、つまり、ジョニー・トーです。

観ていて、ちょっとジョニー・トーのノワール諸作を連想したのです。
(雑誌にそういうことを書いているライターさんもいたので、同じように考えている人はけっこういると思います。)

もちろんトー作品よりもこの映画のほうが女性が前面に出ているし、その他いろいろ違うところもあるのですが、それでも何か通じるものを感じるんですよね。
激しいガン・アクションに情(あるいは情念)が宿っているあたり、かなあ。
そのうち、どこかの名画座で「石井隆&ジョニー・トー特集」やってほしい‥‥。

最後になりましたが、今回のイラストは森澤慶一(柄本佑)。
『GONINサーガ』の登場人物の中で、いちばん怖い人(だと私は思う。)
いちばん静かで動きも叫びも少ないのに、ものすごい執念を抱えているし、妙に大胆。
そういう人なので、意図的に、やや怖い感じに描きました。

『さらば愛しき大地』

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1982年  監督・脚本:柳町光男  出演:根津甚八、秋吉久美子、矢吹二朗、山口美也子、奥村公延、佐々木すみ江、蟹江敬三 ほか
※9月2日にDVDが再発売される予定→http://www.dig-mov.com/


この映画のDVD、廃版になっていたのが、9月のはじめに再発売されるとのこと。
そして根津甚八さん。すでに引退されていますが、9月末公開の『GONIN サーガ』でスクリーンに復帰。1作限りの復帰だそうですが、やはり嬉しい。

というわけで、『さらば愛しき大地』。

茨城の田舎町に住み、ダンプの運転手として働く幸雄。
ある日、彼の2人の息子が、沼で溺死してしまう。
もともと粗暴だった幸雄はさらに荒れ、両親や妻のいる家を捨て、別の女性と暮らしはじめる。
新しい家庭での幸福を夢見る幸雄だったが、不況による仕事の減少など悩みは尽きず、覚醒剤を常用するようになり‥‥。

今から33年前の映画なのですが、古い感じはしません。
もちろん、登場人物たちの歌う歌や服装・髪型などは古いのですが、芯の部分は、今に通じる要素が多いのではないかと。

実際、(これは既に色んな方が指摘しているとは思いますが)、この映画と、比較的最近に作られた『サウダーヂ』(2011)は、共鳴し合っているような気がします。

東京に近い地方の田舎町、肉体労働者たち、不況による仕事の減少、家族との不和‥‥。
共通点が色々あります。他にも、町の酒場で東南アジアから来た女性たちが働いていることなど。
そして、主人公が最後に取った行動も。

ただし、主人公が刃物を向ける相手が、かなり違う。
この違いが時代の違いなのかな、と思ったり。

『さらば愛しき大地』と『サウダーヂ』、どこかで一緒に上映してください。(これまた既に実現しているのかもしれませんが)。

『乃梨子の場合』

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2014年  監督:坂本礼  脚本:尾上史高  出演:西山真来、吉岡睦雄、和田光沙、伊藤清美、川瀬陽太 ほか
公式サイト→http://www.interfilm.co.jp/noriko/
◆東京のポレポレ東中野にて上映中(4月24日まで)、名古屋のシネマスコーレにて上映予定(4月28日~5月1日)
【追加:大阪の第七藝術劇場での上映も決定(6月6日~12日)。今後も上映館が増える可能性あり】


諸事情により2回、観に行きました。
2回目の上映後には佐野和宏さんらを招いてのトークイベントがあり、せっかくの機会だから昔から好きな佐野さんに何か一言‥‥と思いつつ結局、何も言えず帰ってきてしまい、激しく後悔しております。

まあ、それはそれとして‥‥『乃梨子の場合』。
監督の坂本礼さんといえば、彼のピンク映画を何本か観たことがあるのですが、その中で最も印象深いのが、『18才 下着の中のうずき』。
少女たちの話でありながら、川瀬陽太さん演じる青年がとても繊細に描かれていて、むしろ青年の方が作品の軸になっていたような。

そしてこの『乃梨子の場合』も、女の話でありながら、彼女をとりまく2人の男が、グイッと前に出てきている感じ。

もちろん、基本的には「女の話」として、ちゃんと成立しています。
その部分は、先日ツイッターに書いたとおり。

【『乃梨子の場合』観た。経済的な理由で売春(援助交際)を始める主婦・乃梨子。スーパーのパートだけでは、やっていけなくなったのだ。そのスーパーではいつも店の宣伝ソング(?)が流れている。空虚でシシンプルで覚えやすい歌。そんな歌が生活の一部になっている女の話。胸につーんと来た。】

そして、「2人の男」。まず乃梨子の夫。
なんというか‥‥半分あの世に行っているかのような、不思議で不気味な男。
この男を、川瀬陽太さんが、「いかにも」の不気味な表情など一切見せず、穏やかに優しげに演じています。さすがです。

さらに、乃梨子の援助交際の相手、戸高。
自分に全く好意を持っていない人妻に、入れあげる男。
彼の無邪気さ、一途さ、愚かさ、哀しさを、吉岡睦雄さんが見事に表現しています。

本当に吉岡さん、素晴らしい。
彼の出演作は昔からいろいろ観ていて、いい役者さんだとは思っていましたが、今回改めて、彼の実力と魅力を突き付けられた感じです。

というわけで今回のイラストは、吉岡さんを描いてみました。
いろんな表情を持っている方ですが、彼の艶っぽい部分を描いたつもりです。

『実録外伝 大阪電撃作戦』

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1976年  監督:中島貞夫  脚本:高田宏治  出演:松方弘樹、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、小林旭、丹波哲郎、成田三樹夫、織本順吉、室田日出男、川谷拓三、石橋蓮司、小松方正、伊吹吾郎、成瀬正、郷鍈治、曽根晴美、志賀勝、名和宏、三上寛、中原早苗、片桐夕子 ほか

しばらく前に、新文芸坐の「中島貞夫映画祭」にて鑑賞。
いわゆる東映実録路線の1本で、実在の抗争事件(明友会事件)を題材に、大組織に牙をむく狂犬のようなチンピラたちを描いています。

とにかくキャストが豪華で、オープニング・クレジットに並ぶ名前を見ただけで、もうお腹いっぱいになりそうな感じ。
そしてファースト・シーンで、いきなり大勢の男優が登場して暴れ回り、これでもか、これでもかと東映的な「イイ顔」が映し出され、その状態が延々と続きます。
そんな映画。

で、さきほど「暴れ回り」と書きましたが、厳密に言うと、全員が暴れているわけではありません。
周りがドタバタしている中、常に冷静でニヒルな男もいます。それは、成田三樹夫。
そんなわけで、今回は成田氏を描いてみました。
(てゆうか、前から一度描いてみたかったという、それだけなんですけどね。)

今回、成田氏の顔を改めて観察して気づいたんですが、彼、もともとの顔立ちは、わりと端整な二枚目なんですね。
その端整な顔の、特に目元や口元をグイッと歪ませると、あの独特な髪形も相まって、「アクの強い個性派」に見える。
またこの映画での彼は、目の上に青黒いアイシャドーを塗っています(たぶん)。

これは成田氏に限ったことではなく、ヤクザ役をよく演じている俳優さんたちは、表情・髪型・メイクなどで、「クセのある怖い顔」を作り上げている場合が多いんじゃないかと。

もちろん中には、もともと怖い顔の方もいるのでしょうが、たいていの方は、表情筋を鍛えて顔を歪ませたり、眉毛をいじったり、何かを塗ったり、奇抜な髪形を研究したり‥‥。
努力と工夫が大事ですよね、なにごとも。

『劇場版 レイプゾンビ LUST OF THE DEAD 新たなる絶望』 

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2014年  監督・脚本・出演:友松直之  出演:めぐり、ももは、中沢健、貴山侑哉、あいかわ優衣、亜紗美、あん、希咲あや、若林美保 ほか
公式サイト→http://lust-of-the-dead.wix.com/official
8月9日~15日、池袋シネマロサにて1週間限定レイトショー

第1作目にエキストラで参加させていただいた『レイプゾンビ』シリーズが今回、完結ということで、初日に劇場で観てきました。これで全作品、制覇。

エログロ、アクション、派手なCGや特殊メイク(造型)、そして友松監督お得意の「うんちく」や「極端な主張」。
これらすべてがギュウギュウに詰まったまま、あっちこっち飛び回っているようなこのシリーズ、一体どうやって、どこに着地するのかと思いきや。

なんと‥‥大林監督の、あの映画の世界に到達しておりました。
とにかく最終的なタイムリープのシーンが、あの映画のパクリ‥‥いやパロディ‥‥いや「オマージュを捧げている」って言うんですか? まあ、そんな感じです。

そこから始まる「高校の放課後」のシーンは、学生役の俳優さんたちの平均年齢が高めなこともあって、ビジュアル的には学園コントみたいなんですけど、内容的にはけっこうシリアス。
監督の高校時代の実体験も織り交ぜつつ、このシリーズの根源的な部分に迫っております。

今回、主演女優・めぐりの熱演と巨乳も印象深かったし、もちろんエログロはじめ色んな要素が盛りだくさんでしたが、結局いちばん心に残ったのは、「友松監督の分身」ともいえる役を演じた中沢健の、学生服姿。
というわけで今回は、中沢氏のイラストを描きました~。

友松監督の外見をご存じない方のために書いておくと、分身といっても、監督と中沢氏は、外見的には全然、似ていません。なお監督は、今回の作品に出演していますよ(アキバ帝国のシーン、上半身裸で演説‥というか吠えている人)。

『赤×ピンク』

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2014年  監督:坂本浩一  脚本:港岳彦  出演:芳賀優里亜、多田あさみ、水崎綾女、小池里奈、山口祥行、品川祐、榊英雄 ほか
公式サイト→http://aka-pink.jp/

1週間ほど前にDVDにて鑑賞。
桜庭一樹の同名小説を映画化したもので、非合法の格闘イベント“ガールズブラッド”で戦う女性たちの姿を描いたアクション×エロティック・ムービー。

監督の坂本浩一氏は倉田アクションクラブ出身、アメリカでスタントマンやアクション監督を経験し、日本では『仮面ライダー』シリーズなど特撮ヒーローものの監督を数多く手がけている方。
この『赤×ピンク』のアクション演出もさすがに上手くて、単に迫力があるだけでなく、「アクションを通じた芝居」というか、例えば試合中の女性たちの感情の流れなど、細かく表現されています。

そしてさきほど「アクション×エロティック」と書いたように、この映画では、女性同士の恋愛やセックスなど、性的な要素もかなり大きな位置を占めています。
主演級の女優さんたちは、激しいアクションに挑戦しただけでなく、ヌードやそれに近い姿も披露。努力と覚悟が感じられます。

というわけで、あくまでも女優メインの映画なのですが、個人的には男優陣も印象深いなあ。
イヤ~な役をイヤ~な感じに演じた榊英雄も秀逸だったし、あとはやっぱり山口祥行。
実は私、この方が昔からちょっと気になってまして。

例えば石井隆監督の諸作品とか、竹内力主演の『カオルちゃん』シリーズとか、色んな作品で彼を見かけるたびに、「愛嬌があるし、芝居も上手いし、運動神経もいいよな~」と感心。

この映画では、ガールズブラッドのオーナー役として、ちょっと胡散臭いけど実は‥‥という男を好演しています。
特に、ガールズブラッドを潰そうとしている乱丸(榊英雄)の豪邸に出向き、試合を持ちかけるシーン。

オーナーはすでに乱丸の弱みを握っていて、わざわざ試合で決着をつける必要は無いため、乱丸が訊きます。「なぜ試合にこだわるんだ?」
そのときの、オーナーの答えがすごくイイ。
ここのセリフのやりとり、好きです。山口祥行の表情も。

今回イラストに描いたのは、まさにそのときの表情。

『最近、蝶々は…』

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2014年  監督・脚本:友松直之  原作・出演:内田春菊  出演:後藤理沙、徳元裕矢、黒木歩、川又シュウキ、希咲あや、あん、金子弘幸、若林美保、朝霧涼 ほか
5/10(土)~23(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷にてレイトロードショー

公式サイト→http://chouchou-movie.com/
監督による解説など→http://blog.livedoor.jp/n_tomomatu/archives/38318184.html

 昨年秋の『出逢いが足りない私たち』に引き続き、友松監督から宣伝レビューを依頼され、サンプルDVDにて鑑賞。
 前回と同様に、宣伝だからといって褒めなければいけないわけではなく、何でも自由に‥‥とのことなので、ゆるい感想を書いておきます。

 この映画、カタカナを並べて表現すると。エログロでスプラッターでダーク・ファンタジー。ホラーと言ってもいいのですが、個人的な感触としてはダーク・ファンタジーかな、と。
 
 そして、とにかく中盤がグロい。ゴリゴリの人体破壊描写がしばらく続きますよ。血がドバ~、内臓ニュルニュル~。
 おそらく低予算なのに、特殊造型&メイクがなかなか良くできているので、かなりの迫力。というか、気持ち悪いです(わはは!)

 しかしそれは中盤だけで、あとは謎めいていたり、幻想的だったり、エロティックだったり。

 ヒロイン・留可はいつも、眠っている間にどうやら複数の男とセックスしていて、でもまったくその記憶が無い。どういうことなのか?
 ネタばれはしませんが、これはまあ「蝶々」のしわざなんですね。蝶々ってナニ? と気になった人は、ぜひ観に行ってください。

 そしてこの留可と蝶々を演じるのは、後藤理沙。
 実は私、彼女の映画デビュー作『ガラスの脳』(1999)を、封切時に観てまして。あのとき彼女はまだ10代なかば。ポカリスエットのCMにも出てたなあ。当時の彼女の可愛い姿、けっこう憶えてるんですよ。

 だから、この『最近、蝶々は…』の彼女を観て、「大人になったなあ」と。しかもこういう役柄なので、メイクも濃いめだし、怖い表情もするし、(当たり前ですが)昔とはずいぶん違う。

 でも。ときどき、ふっと少女の頃の面影が見える瞬間があるんですよ。たとえば、上のイラストに描いたシーン。
 ここでの彼女は(役柄として)けっこう邪悪なのですが、その邪悪さの中に、妙な可愛らしさもチラッと見えたりして。
 まあ、「邪悪だけど可愛い」というのは、結局「ものすごく邪悪で怖い」ということなのかもしれません。

 とにかく、その複雑な表情が魅力的だったので、イラストを描いてみたのですが‥‥あまりうまくいかなかった‥‥。「ちょっとだけ可愛い(少女っぽい)」というのが、すごく難しくて‥‥。
 でもまあ、この映画やヒロインの妖しい感じが少しは出せたような気もするので‥‥お許しください!
プロフィール

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。

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