『熟れすぎた乳房 人妻』

1973年 監督:曽根中生 脚本:桂千穂 出演:宮下順子、白川和子、相川圭子、長弘、影山英俊、小見山玉樹、永井鷹男、堺美紀子

 前の記事で紹介した特集上映「ソネ・ラビリンス」。結局、『熟れすぎた乳房 人妻』と『赤い暴行』しか行けなかったのですが、両方とも面白かったし、それぞれのトークショーも観ることができたので、かなり満足しています。
 では、まず『熟れすぎた~』について。

 三姉妹の二女であるヒロイン(宮下順子)は、性的に奔放な姉(白川和子)と妹(相川圭子)に説教するような貞淑な人妻だが、やがて彼女に変化が‥‥という、大筋としてはありがちな内容。しかし細かい描写や台詞・エピソードなどが凝っていて面白く、作品自体は、ありがちではないものに仕上がっています。

 例えばこの台詞。夫ではない若い男(影山英俊)を実家に連れてきた二女に対し、母(堺美紀子)が言う。「好きな男とやりたいことをやらないと、後悔するわよ。ま、やっても後悔するけどね」。
 前半だけなら凡庸ですが、後半が効いています。やってもやらなくても後悔する、正解は無い、自分で考えて決めなさい‥‥ということでしょうか。
 母はチラッとしか登場しないのですが、このセリフだけで、彼女の性格や娘たちとの関係など、いろいろなことが分かります。

 そしてその直後、母は気を利かして外出するのですが、その場面で唐突に、『○○○○』(タイトルはひらがな4文字、有名な歌謡曲)が大音量で流れます。ビックリ。「えっ、なんでこの曲?」というような選曲なのです。
 しかし、母自身もその曲を口ずさんでいるのを聴いていると、なんとなくこの選曲の意図が分かるような気も。というか、「お母さん、もしかして昔○○○○と何かあったの?!」って思ったりして。や、考えすぎかもしれませんが。

 あと印象に残っているのは‥‥靴べら。玄関で夫(長弘)が靴をはく際にヒロインが靴べらを渡す、という描写が、たしか2回あるのですが、渡し方や受け取り方に、夫婦のその時の心情が表れているのです。
 これを観てすぐに連想したのが、城定秀夫監督のピンク映画『人妻セカンドバージン 私を襲って下さい』(2013)。似た描写が出てきます。というよりも、『熟れすぎた~』の靴べら描写をバージョンアップ(?)した感じ。内容的に、増幅・発展させたものになっています。
 
 まあ単なる偶然なのかもしれませんが、城定監督は学生時代に、ピンクのみならずロマンポルノも熱心に観てらっしゃったようなので、おそらくこの『熟れすぎた~』の影響なのではないかと。夫の人物造形なども、ちょっと似ているし。

 なお、『人妻セカンドバージン~』は『人妻』というタイトルで、『熟れすぎた~』は同タイトルで、それぞれDVD化されています。興味のある方は、観比べてみてください。
 (いやまあ本音を言えば、この2本、どこかの劇場で一緒に上映すればいいのに‥と夢想してるんですけどね。)

 最後にキャストについて。どの俳優さんも良かったんですが、特に面白かったのは、影山英俊さん。前にお会いしたことがあるのでつい注目してしまった‥というのもあるけど、それだけじゃない。
 長身の美青年なのに性格がマヌケっぽくて未だ童貞、というやや複雑なキャラを、コミカルにうまく演じてらっしゃいます。おみごと!

(いろんな意味で)ソネ・ラビリンス

 以前このブログに、「影山英俊さん、曽根中生監督を語る。」という記事を書きました。知人のHさんと一緒に影山氏にお会いした際、影山氏が曽根監督について非常に熱っぽく語ってくださったので、その内容などをまとめたものです。
 時期的にはちょうど、長らく行方不明だった曽根監督が湯布院映画祭にゲストとして登場する‥と発表された頃のことです。

 あれから約2年。曽根監督は当初、雑誌のインタビューで、「もう映画のことは全く自分のなかにはありません」と仰っていたので、湯布院を区切りに映画とは縁を切るのかと思いきや。その後も、映画関係のイベントに何度も参加してらっしゃいます。
 なぜだろう、なにか心境の変化とか、あったのかなあ? まあ、そのあたりのことは、この秋に出版されるらしい評伝本と自伝本を読めば、分かるのかもしれません。

この「評伝と自伝が出版される」という情報は、おもにこちらからいただきました→http://cinema5.gr.jp/index/sone-yawa.jpg(大分のミニシアター「シネマ5」の公式サイトより。シネマ5では10月11日に、曽根監督がビリー・ワイルダーについて語るトークショーがあるそうですよ!)

 さて、その評伝本『曽根中生 過激にして愛嬌あり』(ワイズ出版)の刊行を記念して、特集上映が開催されます。題して、「ソネ・ラビリンス 曽根中生 過激にして愛嬌あり」。
 場所はオーディトリウム渋谷、期間は10月5日(土)~11日(金)。上映作品は、曽根氏が監督したロマンポルノの中から、レア作を含む11本。
 詳しくは、こちらをどうぞ→http://www.wides-web.com/tirashi/sone_2.pdf

 私が特に観たいと思っているのは、まず『赤い暴行』。大昔に観たという某人から、強くオススメされたので。
 次に、『熟れすぎた乳房 人妻』。例の記事にも書いたように、影山氏にお会いした際、Hさんがこの映画のDVDパッケージにサインをお願いしていたので。ちなみにこの映画、DVD化はされているものの、劇場で上映されるのは久しぶりだそうです。
 他にも、相米さんが脚本に参加した『女高生100人 (秘)モーテル白書』とか、いろいろ。

 すでに観ている作品も、もう1回観たいなあ。例えば、『天使のはらわた 赤い教室』。20代の時に観たきりなので、中年になった今だと、また違う感想が湧いてくるかも。
 そういえばこの映画、村木役が蟹江敬三。『あまちゃん』でヒロインの祖父を演じていた彼の、若き日の代表作ですよ~。
 そして脚本はもちろん、石井隆(曽根氏と共同)。石井氏も最近、監督として壇蜜の主演映画を撮ったりしていて、ある意味、時の人。

影山英俊さん、曽根中生監督を語る。

 前々回の記事「ゾンビ現場・その2」に書いたような経緯で、今月の4日、知人のHさんとともに、影山英俊さんにお会いすることができました。影山さんからは色々なお話を伺ったのですが、その中で私にとって最も興味深かったのは、曽根中生監督についてのお話です。

 ところで曽根中生監督といえば、長い間(20年くらい?)「行方不明」「生死不明」と言われていたのが、突如として、今月24日から開催される湯布院映画祭にゲストとして登場することが判明。おもにロマンポルノ好きの間で、話題になっています。
 曽根監督は一般映画も撮られていますが、やはりロマンポルノの印象が強いんですよね。私自身、曽根監督と聞くと、まず『天使のはらわた 赤い教室』、『わたしのSEX白書 絶頂度』、『新宿乱れ街 いくまで待って』など、ロマンポルノの鮮烈な作品群が、パッと頭に浮かびます。

 そして影山英俊さんは、今挙げた3本全てに出演してらっしゃる方。他にも『熟れすぎた乳房 人妻』、『不良少女 野良猫の性春』などで、曽根監督とは何度も一緒にお仕事されています。 
 私は未見なのですが、『熟れすぎた乳房 人妻』はとてもいい作品だそうで、今回Hさんは、この作品のDVDパッケージにサインをいただいていました。
 
 そんなわけで、私たちから影山さんへの最初の質問は、当然これでした。「今月下旬に、曽根中生監督が久々に公の場に出てこられるのは、ご存知ですか?」。影山さんの反応は‥‥「え!! 生きてたの?!」
 いやもう本当に、ビックリ&嬉しい! という表情で、しかも大きな声で、そう仰ったのですヨ。すかさずHさんが湯布院映画祭のパンフレットを取り出し、曽根監督の来場について書かれた部分をお見せすると、「今回、九州には行けないけど、近いうちにぜひお会いしたいなあ‥‥あなたたちは、これ行くの?」。2人とも無理だけれど、Hさんのお友達が行けそうだと告げると、「その方から曽根さんに、影山が会いたがっている、と伝えてほしい」。

 とにかく影山さんは、曽根監督を非常に敬愛してらっしゃるご様子で、「いろんな監督と組んだけれど、あの人は特別な存在だ」、「演出も作品も、他の監督と全然違う」、「また映画を撮ってほしい」と、しきりに仰っていました。
 なかでも、曽根監督の俳優に対する演出方法は、影山さんの心に強く残っているらしく。その特徴についても、熱っぽく語ってくださいました。それは、「俳優に具体的な演技指導をせず、“もう1回”“もう1回”と何度もやらせる」。つまり、「(どう演じるべきかを)俳優が自分で見つけるまで、待っている」。
 
 このお話を聞いて、私はふと相米慎二監督を連想しました。相米作品に出演した俳優さんの多くが、同じようなことを仰っているからです。
 おそらく相米監督は、俳優に対する演出方法の面で、曽根監督からかなり影響を受けたのでしょう。ロマンポルノの助監督時代に、曽根組の現場を経験された方なので、その可能性は充分あります。 
 
 奇しくも来月の9日は相米監督の命日で、亡くなってからちょうど10年。秋にはフィルメックスで、全作品が上映される予定です。そしてそういう時期に、曽根監督が久方ぶりに、公の場に登場することになり。
 きっと単なる偶然なのでしょう。しかし私は、(以前チラッと書いたように)相米監督と少し面識があったせいか、やや感傷的な気持ちで、それらのことを勝手に結び付けたくなります。

 いずれにせよ、曽根監督がご健在だったことは、本当に喜ばしい限り。いろいろと難しいでしょうが、もし可能なら新作を撮っていただきたいです。そしてその際には、もちろん影山さんをキャスティングしてくださいっ。

『花弁のしずく』

1972年 日本 監督:田中登 脚本:久保田圭司 出演:中川梨絵、三田村玄、大泉隆二、雪丘恵介、葵三津子、白川和子、牧恵子、高橋明
 
 1週間ほど前に、シネロマン池袋にて鑑賞。
 この映画は日活ロマンポルノ初期の作品で、田中登監督のデビュー作です。長らくプリント(上映用フィルム)が存在せず、幻の作品になりかけていたところ、2007年に有志の方たちの寄付や活動によってニュープリントが作られ、名画座や成人館などで上映されるようになりました。(この件に関して、詳しいことはこちらのサイトをどうぞ→
「復活 花弁のしずく」http://www18.ocn.ne.jp/~kamiya/index.html

 さて私は今回、初めてこの映画を観たのですが、予想以上に面白かったです。あらすじ自体は、「不感症の人妻がそれを克服して性的に花開く」という、非常にありふれたものながら、それ以外の要素が(色んな意味で)充実していて、観ごたえがありました。

 まず衣装や美術などが、かなり豪華。ヒロインの人妻は華道の先生で、鎌倉のお屋敷に住んでいるという設定なのですが、これがきちんと美しく映像化されています。つまり画面には、綺麗な花や着物や鎌倉の風景などが、常に映っている。しかもただ映っているのではなく、ビシッと決まっていて、画面に風格があるというか。撮影・照明の技術が優れているのでしょう。
 役者さんもイイです。特に主演の中川梨絵。当時はまだ20代前半のはずですが、非常に堂々としていて、すでに迫力があります。

 しかし、この映画で最も充実しているのは、なんといっても終盤の展開ではないかと。たしかにあらすじとしては、「性的に花開く」という、それだけのことなのですが、花開く過程で明らかにされるヒロインのトラウマや、医師による(不感症の)実践的治療が、あまりにも印象的。

※以下の文章では、終盤の展開に触れています(ただし肝心なところは、伏せ字にしてあります)。

 まずヒロインのトラウマは三段構え(!)になっていて、それだけでも強烈なのに、二段目のトラウマを描写したシーンが、これまた強烈。少女の頃にレイプされ‥という内容なのですが、そのレイプ魔の人物造形には、ちょっと驚きました。
 このシーン、レイプ魔には全く台詞は無く、彼の外見や行為だけで不気味さや凶悪さが見事に表現されていて、さすが田中登監督! という感じなのですが、ただ少々やり過ぎな面もあり‥‥。そのため、怖く悲しいシーンでありながら微妙に笑えるという、なんだか不思議なことになっています。
 そして、どういう風に「やり過ぎ」なのかというと。レイプ魔が、○○○○を使うんですよ。観ていて思わず「えっ?!」と言いそうになりました。ちなみにこの○○○○は、同時上映の近未来SF作品『老人とラブドール 私が初潮になった時…』(友松直之監督)にも、重要な存在として登場。『花弁のしずく』と『老人とラブドール』、この全くタイプの異なる2本に意外な共通点があることが分かり、これもまた驚きでした。

 そうしてトラウマが解明されたあと、医師によるヒロインへの実践的(肉体的)治療が始まって、まあこれは未見の方でも何となく想像はつくと思いますが、やはりこのシーンでも細部に至るまでちょっと「やり過ぎ」なため、微妙に笑いの方向へ‥‥。

 田中登監督といえば、ほぼ一貫してシリアスな作風で通した方ですし、この映画でも、ひとりの女性の再生を、あくまでもシリアスに描いたのだと思われますが、結果的には副産物(?)として、笑いの要素が生まれています。
 なぜ、こういうことになったのか。おそらくデビュー作ということで、肩に力が入り過ぎたんじゃないでしょうか。ありきたりでない作品を、観客の心に残る作品を‥‥と細部に凝っているうちに、やり過ぎてしまったんじゃないかと。
 そして衣装・撮影・演技など各パートのレベルが高いゆえ、その「やり過ぎ」さえもがゴージャスなものになったというか。ショボい映画での「やり過ぎ」は痛々しいだけですが、しっかり作られた映画での「やり過ぎ」は独特の観ごたえがあるのだなーと、改めて感じました。

 ちなみに主演の中川梨絵さんは、上映会で『花弁のしずく』ニュープリント版を鑑賞された際、大声で爆笑なさったあげく、「ツッコミどころは多いけど、これは面白い!」と仰ったそうです。詳しくは、「復活 花弁のしずく」に掲載されている、ヂョー氏による上映会レポートをどうぞ→http://www18.ocn.ne.jp/~kamiya/grisomu.htm

『実録阿部定』

1975年 日本 監督:田中登 脚本:いどあきお 出演:宮下順子、江角英明

 いちばん最初の記事の末尾に「『実録阿部定』については、また別の機会に。」と書いてからしばらく日が経ったので、そろそろこの映画に触れようと思います。
 さて、いろんな評論家やマニアの方たちが「名作」「傑作」と絶賛してらっしゃる作品ですし、何よりも私自身、田中登監督の『人妻集団暴行致死事件』で非常に心揺さぶられた経験があるので、期待して観たのですが‥‥どうもグッと来ませんでした。
 
 昭和11年、定は妻帯者である吉蔵と関係を持ち、旅館で愛欲の日々を過ごすうちに彼を殺害、その男根を切り取る。言うまでもなく、かの有名な阿部定事件の映画化です。
 そしてこの映画は定と吉蔵の世界を、対象に寄り添ってシリアスに描いています。2人が芸者の前で過剰にイチャイチャするシーンだけは、バカップル風でちょっとコミカルでしたが、他はおしなべて厳粛な感じ。
 私はこの描き方に違和感を持ちました。というのも、この題材の場合、対象を突き放して滑稽味すら漂わせながら描くのが相応しいのでは? と思うからです。

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『わたしのSEX白書 絶頂度』

1976年 日本 監督:曽根中生 脚本:白鳥あかね 出演:三井マリア、益富信孝、村国守平、芹明香

 これが初めての記事なので、自己紹介代わりに、私の年齢・性別などがほんのりと分かるような文章を書いておきます。
 
 先週、シネマヴェーラ渋谷にロマンポルノを観に行きました。『わたしのSEX白書 絶頂度』と『実録阿部定』の2本立て。『わたしのSEX白書‥』は、大病院の採血係として働くあけみが、ヤクザ風の男の紹介で娼婦のアルバイトを始め‥‥というストーリー。
 
 ヤクザ風の男はヤサグレた女性のヒモなのですが、彼女の部屋には何故か、白いドレス(ウェディングドレス?)を着たフランス人形が飾ってあります。いかにもヤクザな感じのヒモがいて、常に倦怠感を漂わせている女の部屋に、フランス人形。しかも白ドレス。彼女自身が買ってきたものなのか、ヒモが戯れにプレゼントしたものなのか‥‥。
 
 当時をご存じない若い方のために解説しますと、この映画が製作された1976年頃、たしかにフランス人形が流行っていたのですが、それらは大抵の場合、小学生くらいの女の子が居る家庭に飾られていたのです(私自身、当時小学生でしたが、殺風景な我が家にも黄色いドレスのフランス人形があり、家の中で妙に浮いていたのを憶えています)。
 そんなわけで、「ヒモつき女の部屋にある白ドレスのフランス人形」は、いろいろと想像を掻き立てるアイテムなのです。
 
 「想像を掻き立てる」という表現でお分かりの通り、この映画の中でフランス人形は、少し画面に映るだけです。それにまつわるエピソード等は出てきません。ちょっと叙情的だけど、感傷的ではない。映画自体もそんな印象です。ヒロイン・あけみの二重生活も、どこか乾いた感じで描写されています。曽根中生監督の持ち味なのでしょうか。例えば彼は『天使のはらわた 赤い教室』において、原作・脚本の石井隆氏の独特なセンチメンタリズムを、少し突き放して映像化していたような気がします。
 
 『実録阿部定』については、また別の機会に。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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