補足です

 前回の『アバター』記事の補足です。
 まず、いつもブログを読んでくれている友人から、質問が来まして。「『アバター』の3D映像、ちゃんと飛び出して見えた?」‥‥そういえば、そのへんについて書いてなかったなあ、と。
 で、実際のところどうだったかというと、あまり「飛び出して見える」という感じではなかったです。なんというか、「手前に飛び出して見える」ことよりも、「奥行きがあるように見える」ことに重点を置いて作られたようで。
 だから例えば、こっちに向かって何かがビューンと飛んでくるように見えたので思わずよけた、なんてことは無かったです。まあ、最近の3Dは洗練されてきたというか、立体的であることを過剰に強調するような段階は過ぎたのでしょう。

 もうひとつ、『イノセンス』のオープニング映像について。これは、押井監督の演出に言及した際に、そのひとつの例として紹介しリンクを張ったわけですが。あとで、「そういやオープニングって監督とは別の人が演出してる場合もあるよな」と、ちょっと不安になりまして。
 そこで『イノセンス』のクレジットを調べてみたところ、オープニングの制作スタッフの中でも、タイトル部分のスタッフには「CGIディレクター」という肩書きの方がいるものの、映像自体のスタッフには、「ディレクター」や「演出」にあたる方はいませんでした。つまり、「オープニングの演出も押井監督」という解釈で、いいんじゃないかと。
 ちなみにYouTubeには、アヴァンタイトルとオープニングが一緒にアップされているものもあるので、今回はそちらにリンクしておきます

『アバター』

2009年 アメリカ 監督・脚本:ジェームズ・キャメロン 出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガーニー・ウィーバー、スティーブン・ラング、ミシェル・ロドリゲス
全国各地で上映中  公式サイト→http://movies.foxjapan.com/avatar/

 今月の初め頃に、3D版(IMAXではない)を鑑賞。正直言って、作品自体はあまり「頭にこびりつく」という感じではなかったので、最初は記事にしないつもりだったのですが、どうやら「この映画を観て考えさせられたこと」の方は、少々こびりついているようなので、それについて書いておきます。

 結局、3Dなどの最新技術がどうこうという以前に、基本的な演出技術は大事だな、と。キャメロン監督はやはり、見せ方が巧いです。特に戦闘シーン。
 いつの頃からか、戦闘シーンやアクション・シーンで、やたらカチャカチャカチャカチャ小刻みにカットを切りかえて(何が映っているのかよく見えない)、それでスリルや迫力を演出したつもりになっている映画が増えましたけど、『アバター』はそういうのとは対照的。人や戦闘機などの位置関係、距離感、誰がどう攻撃している(されている)のか、などをきちんと見せたうえで、スリルや迫力も充分に醸し出しています。
 そういう基本的なことが出来ているからこそ、3Dも効いてくるわけで。

 この作品のヒットによって、今後いろんな「SFものの3D映画」が作られるんでしょうけど、戦闘シーンでカチャカチャ式の演出しかできないような監督の3D映画は、観たくないなあ。目や頭が痛くなるだけで、面白くないと思う。

 あ、設定やストーリーに触れてないですね。少し書いておきましょう。簡単に言うと‥‥地球人に似た“ナヴィ”が住む惑星パンドラには貴重な鉱物資源があり、その資源を得るため地球人がナヴィを支配しようとするがうまくいかず、やがて戦いになり‥‥というもの。
 ちなみに、既にいろいろな方が指摘している通り、いくつかの要素には、押井守からの影響が感じられます。例えば、地球人が自分たちとナヴィのDNAを合成してアバター(分身)を作り、そのアバターに意識を転送して操作するあたりや、ナヴィと動植物のネットワークに関する設定は、押井監督の『攻殻機動隊』や『イノセンス』を連想させます。
 まあキャメロン監督は昔から、押井作品が好きだと公言していたので、今回それがストレートに作品に出た感じですね。

 余談ですが‥‥押井作品というと、その独特なテーマや台詞について語られることが多く、たしかにそこも重要なんですけど、実際にはキャメロン作品と同じく、戦闘シーンやアクション・シーンの演出が優れている、と私は常々思っています。や、その手のシーンに限らず、全体的に構図や動きの見せ方が巧い(『イノセンス』のオープニング映像なんてホントに素晴らしいし)。
 やはり映画監督というのは、最新技術に詳しいとかテーマの選び方がどうとかいう以前に、まず基本的な演出力を持っていることが大事ですよね。当たり前ですけど。

※追記‥‥この文章、ちょっと説明不足なので補足記事を書きました。こちらもどうぞ。

『若葉学園 チェリーボーイズ』

2009年 日本 監督:城定秀夫 脚本:小松公典、城定秀夫 出演:次原かな、榊原順、吉川けんじ、松浦祐也、大友さゆり、吉岡睦雄、森羅万象、金原亭世之介
DVD(セルとレンタルの両方)あり

 昨年の初め頃にも城定監督のOVについて書き、今年も同じく。といっても、狙ったわけではありません。たまたま、「年末に城定OVを観る→よかった!→年始に書く」というパターンが、2年続きました。

 童貞高校生で眼鏡男子の守(榊原順)は、海辺で可愛い女子(次原かな)のパンチラを目撃し、彼女にひと目ぼれ。数日後、守のクラスに転校生が。名前は八神明日香。あの海辺の女子だ! やったぜ!
 とまあ非常にベタな展開の学園青春モノ。しかしですね。基本的な部分はたしかにベタなんですが、細部に色々と工夫が凝らされていて、このジャンルの作品としてはかなり見応えがありました。

 まず冒頭の、守と明日香が出会うシーン。さきほど彼らの外見について、単に「眼鏡男子」「可愛い女子」と書きましたが、実はこの2人、ちょっと変わった格好で登場するのです。それは、着物と猫耳。
 守は大の落語好きという設定で、このシーンでは、学校の制服の上に着物を羽織って落語の練習をしています。そして明日香は大のコスプレ好き。猫耳&ミニドレスで猫ちゃんになりきっています。つまり海辺に、着物を羽織った少年と猫耳を付けた少女。絵的になかなか面白いです。
 しかも守が練習している演目は、古典落語の「猫の皿」。噺の題材とコスプレのキャラが重なっていて、その点でも面白いです。また、「猫の皿」と明日香の猫耳コスプレ姿は作品の終盤まで何度か登場するのですが、これは、一貫して描かれる明日香の猫っぽい性格(気が強く、守の思い通りにはならない)とも微妙に重なっていて、この構成も上手い。

 撮り方も上手いというか凝っていて、例えば、明日香と照美(大友さゆり)、祐也(吉川けんじ)と隆明(松浦祐也)の2組が、それぞれ海辺で語り合うシーン。
 照美は明日香たちのクラスメイトで、コスプレをするとそのコスチュームの人格になってしまうという特異体質の持ち主。そのせいで大好きなコスプレにも臆病になっていて、友達もいなかったのですが、明日香から「(その体質は)すごい才能」と褒められ、2人は仲良くなります。
 いっぽう祐也と隆明は、守の悪友。彼らは3人とも童貞なわけですが、落語好きの守とは違い、祐也と隆明は常にセックスのことばかり考えていて、この時も、俺たち早く童貞脱出しようぜ! てな調子で改めて意気投合。

 で、注目すべきは、このシーンの構図。まず画面の手前の方で、明日香と照美が砂の上に座ったまま語り合っていて、会話が終わりかけた頃、奥の方に小さく祐也と隆明の歩く姿が写ります。ここまでがワンカット。そしてカットが変わり、今度は手前で祐也と隆明が語り合い、奥の方に小さく明日香と照美の歩く姿が写ります。こちらもワンカット。
 先ほども書いたように、祐也と隆明の会話はひたすら童貞云々という内容なのですが、そのとき奥に小さく写っている女子たちは、明日香が照美のスカートに付いた砂を払ってあげたりと、非常に爽やかな雰囲気。また、2組の会話の両方ともに「自分に正直になろう」という言葉が出てくるのですが、言葉は同じでも、当然、意味というかニュアンスはやや違うわけで。
 このように、映像と台詞の両面で2組をうまく対比させながら同時に描いているので、観ているこちらとしては、「あれも友情、これも友情」とでも呟きたくなるような、ある種しみじみした気持ちになりました。その意味で、とても印象深いシーン。
 
 とにかくこの作品、全体的に工夫と丁寧さがあり、感心しました。OVの少ない予算と時間の枠内でここまでやるのは、難しいことなんじゃないでしょうか。

 ではオマケとして、『ラーメン必見伝』の時と同じく吉岡睦雄について書いておきます。今回、改めて気付いたことがあるので。
 彼、声が独特ですね。成人男性としては、非常に甲高い。もちろん今回はコミカルな先生の役なので、わざと極端に高い変な声を出しているのでしょうが、考えてみると、シリアスな役の時もけっこう声が高かったような‥‥。なんというか、喉や腹ではなく、額から出ているような素っ頓狂な声。いずれにせよ吉岡氏、面白い役者さんです。
 
 ちなみに主演の榊原順くんに関しても、ちょっと気付いたことが。彼、劇中ではずっと眼鏡をかけているものの、メイキングでは眼鏡ナシの素顔を見せていて、この素顔がですね、岡田智宏に似てるんですよ。いつか2人で兄弟の役を演ってほしい‥‥って、前にも岡田氏について似たようなことを書いたなあ

 最後に。この作品のギャグ、全体的にかなり私好みです。特に、隆明の恋にまつわるギャグでは2回、爆笑しました(このあたりは小松さんのアイデアじゃないかと推測してるんですが、どうなんでしょう?)。詳しくは書きませんので、興味のある方はぜひ作品をご覧になってください。

年賀状もどき

 どうも。あけまして、おめでとうございます。
 
 さて昨年は、「○○について書くかも」と予告したのに結局書かず、というパターンが多かったのですが、これはアトピー性皮膚炎のせい(ということにしておきましょう)。実際、自分史上もっともステロイド軟膏を塗りまくり、抗アレルギー剤を飲み続けた年だったので。今年はもう少し健康になりたいものです。
 ちなみに私、子供時代や若い頃は、この病気とは無縁でした。なぜか30代半ばで急に発症し、その後ずっと引きずっています。こんな風に、途中で体質が変わる場合もあるのだとか。といっても私の場合、アトピー性皮膚炎とは別のアレルギーが幼少期からあるので、それが関係しているのかもしれませんが。

 まあその話は置いといて、今年も懲りずに不確かな更新予告を。次は多分、城定監督の某OV(脚本は城定氏と小松さん)について書きます。年末、友人に薦められて観たところ、楽しいひと時を過ごせたので。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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