『ザ・シネマハスラー』

2010年 発行:白夜書房
編著:TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』

発行元による本の紹介→http://www.byakuya-shobo.co.jp/page.php?id=1463&gname=shoseki
番組の公式ブログ→http://www.tbsradio.jp/utamaru/index.html
 
 以前オススメしたラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』の映画評コーナー、「ザ・シネマハスラー」の書籍版。
 このコーナーは、スタッフが選んだ「今週のサイの目映画」6本の中から、宇多丸氏がサイコロを振って観る作品を決め、翌週に彼がひとりで約30分間の映画評トークをする‥‥というもの。基本的に、扱うのは公開中の新作。また「サイの目映画」のうち1本は、リスナーからのリクエストが反映されます。

 ここでかなり重要なのは、「サイの目映画」を選ぶのがスタッフ(とリスナー)だということ。つまり、宇多丸氏本人が「観たい・語りたい映画」ではなく、スタッフとリスナーが宇多丸氏に「見せたい・語らせたい映画」が選ばれるわけで。
 当然、本人が嫌いそうな作品や興味なさそうな作品もしっかり入っているし、サイコロ振りの結果、そういう作品に決まることもあります。そして翌週、予想どおり批判トークが炸裂する場合もあれば、意外に絶賛トークが響きわたる場合もあり。
 本人の意向で作品を選ぶと、あまりこういう展開にはならないので、まずこのシステム自体が面白いと思います。

 では肝心の映画評そのものは、どうかというと。特に、「本人が好きそうな作品を予想どおり絶賛する」という展開の場合、少々つまらないものになる可能性もあるわけですが、そんな場合でも、なかなか聴きごたえ(読みごたえ)があります。やはりシステム云々という以前に、宇多丸氏の分析の仕方が面白いからでしょう。

 例えば、ジョニー・トー監督のノワール・アクション『エグザイル/絆』評(P260~265)。この作品は、街中のシーンでも通行人を映さない、つまりわざと主要登場人物しか映さないことによって、やや現実離れした抽象的な世界を創りあげているのですが、そのことについて、宇多丸氏はこのように言って(書いて)います。

【‥‥こういう抽象化された、純化された美学、これが徹底された作品って、カルト的な熱狂を生みやすいんですよ。全然タイプは違うけど、例えば大林宣彦監督の尾道三部作。あの中で『時をかける少女』だけが、商店街とか「普通の街並み」を意図的にまったく映さないようにしてるんです。そういう抽象化された世界を舞台にしているからこそ、『時をかける少女』のカルト度は高くなってるんですよ。その意味でこれは、マカオを舞台にした、ジョニー・トーの『時をかける少女』です。って、分かりづれーよ!】

 『エグザイル』と大林版『時かけ』。この全くイメージが異なる2つの作品をあえて並べ、ムリヤリな屁理屈ではなく真っ当な論理で結びつけていくあたり、なかなか鋭いです。
 また、「ジョニー・トーの『時をかける少女』です」の部分だけは、さすがにややムリヤリだということで、自らツッコミを入れているのもイイ。このあたりはギャグっぽいですが、ギャグでもそうでなくても、自分で自分を客観視しているからこそ、こういうツッコミができるわけで。

 ちなみにこの本、ラジオ番組でのトークをそのまま文字に起こしたわけではなく、文章として読みやすいよう手を加えてあります。また、映画評についての後日談コメントやインタビューなど、書籍版だけの新企画も満載。番組のリスナーも、そうでない人も、両方楽しめる内容になっています。

 と、ここまで褒め続けてきましたが、最後にちょっと批判的なことを。
 
 この本の前書き(P2~3)に、【無差別映画評論コーナー「ザ・シネマハスラー」】と書いてあります。まあ、そもそも番組内で宇多丸氏がよくそう言っているし、公式ブログの「放送後記」にも、ほぼ毎回そう書いてあるわけですが。
 そしてこの「無差別映画評論」とは、「あらゆるジャンルの映画を評論している」という意味ですよね。しかし私が思うに、シネマハスラーは「無差別」ではないんじゃないかと。
 
 たしかに、ハリウッド超大作から日本の超低予算作品まで、幅広いジャンルの新作映画が評論の対象になっています。が、あるジャンルの作品は最初から除外されています。それは、ピンク映画。
 もちろん番組としては、コーナーの性質上(各作品に対するリスナーの感想を毎回募っている)、成人向けの作品は取り上げにくいのでしょう。また、局の意向も関係しているのかもしれません。しかしそれなら、例えば書籍版だけの企画としてピンク映画を取り上げるとか、色んなやり方があるのでは?
 私がこのブログで書いているように、ピンク映画にも実に多様な作品があるわけだし、日本映画の中のひとつのジャンルとして、たまには目を向けてほしいものです。

 でもまあ、これは私の勝手な推測ですが‥‥そもそも宇多丸氏もスタッフ諸氏も、ピンク映画について、あまりご存じないような‥‥。
 というのも、この本の「宇多丸インタビュー」(P344~)の冒頭近くで、宇多丸氏が上野オークラ劇場のことを、「ポルノ映画館」と言っているんですよね。
 ある程度ピンク映画について知っている人なら、上野オークラのことを「ポルノ映画館」とは言わないし、書かないでしょう。あの劇場で上映されているのは、あくまでも「ピンク映画」というジャンルの作品なので。

≪追記≫ 
 最後の部分、補足しておきます。
 ここで宇多丸氏が「ポルノ映画館」と言っているのは、おそらく「成人映画館」のことだと思うのですが、成人映画館にはいくつか種類があって、例えばロマンポルノとピンク映画の両方を上映しているところもあれば、ピンク映画だけを上映しているところもあります。上野オークラは後者なので、厳密に言うと「ピンク映画館」(大雑把に言った場合が「成人映画館」)。劇場公式ブログの記事の中にも、“ピンク映画館の老舗「上野オークラ劇場」”と書いてありますよ~。 
 さらに「ロマンポルノ」と「ピンク映画」の違いを簡単に説明すると‥‥ロマンポルノは大手映画会社の日活が製作、現在(2010年)では新作は作られていない。いっぽうピンク映画は複数の小さな映画会社が配給、現在でも新作が作られている。
 ちなみに上野オークラは、5月に開催される「第22回ピンク映画大賞(2009年度ベストテン)」の表彰式で、特別賞を授与されます。理由は、「イベント開催など精力的な劇場運営に対し」。

追記部分は、分かりやすくするためにアップ後も何度か書き直し、情報も追加しました。
6月に、この記事の後日談を書きました。こちらです。

≪追記(2014年)≫
 (この記事のことを、急にふと思い出したので書いておきます。)
 その後、上野オークラ劇場では、ピンク映画に加えてロマンポルノも上映されるようになりました。よって現在では、上野オークラは「成人映画館」です。
 それにしても、この記事をアップした頃は、いろいろと、こだわっていたんだなあ。

模様替え

 最近、歳のせいで小さい文字が読みにくくなってきました。印刷物でもパソコン上でも。ああ‥‥なんだか自分のブログも読みにくい‥‥というわけで、文字を少し大きくしました。あと、デザイン的には「暗めの地色+白抜き文字」というのをやってみたかったので、配色もかなり変えました。
 
 まずテンプレートを暗い色調のものに変えたうえで、さらにスタイルシートを少しずつ改造し、いろんな色や文字のパターンを試してみたのですが、その途中で何度か指定を間違えて、文字が異様にデカくなったり、ものすごく変な配色になったりしたこともありました。
 ちょうどその時にアクセスした方、いたかもしれませんね。さぞビックリなさったことでしょう。すいません。

 結果的には、前よりも少しは読みやすく、そして少しは落ち着いた雰囲気になったんじゃないかと。なお、私の家にはWindowsしか無いので、Macユーザーの友人にチェックしてもらいながら、どちらからでも読みやすくなるよう心がけてみました。
 またモバイル版(携帯版)に関しては、改造の仕方がよく分からなかったので、パソコン版と同じデザインにすることはできなかったのですが、ある程度配色が似ているテンプレートを選んで設定しておきました。

※追記‥‥その後、またデザインを変えました。わりとコロコロ変えています。

まあ一応。

 (ちょいとキッカケがありまして、これまで記事以外の部分に短く載せていた断り書きを、詳しく書き直して記事にしておきます。)

 このブログ、開始当初はコメント欄を設置していたのですが、そのうちイタズラだか宣伝だかのしつこい書き込みが来るようになり、ある程度の対処はしたものの効果が無かったので、コメント欄を廃止し、メールフォームを設置。それと同時に、アクセス解析を付けました。「どういう経路でアクセスされているのか、少しはチェックした方がいいかも」と思ったので。
 
 そして実際、少しはチェックしているのですが、これまでに何度か「‥‥‥」と思うような事態に出くわしました。例えば、どう見てもこのブログと関係なさそうなところから、勝手にリンクを張られていたり。また、これはチェックというよりたまたま見つけたのですが、このブログの記事の一部が、他所で勝手に使われていたり。
 どの場合も、さほど実害があるわけではなかったので気にはしていませんが、それでも改めて書いておきます。まず、内容的に無関係なところからはリンクさせないでください。それと、記事内容の無断転載・無断使用はご遠慮ください。まあ、こういう風に書いておいても、やりたい人はやるわけですが、いちおう意思表示ってことで。

 ちなみに、ちゃんと内容的に関係あるところからのリンクは歓迎ですし、さらに「おすすめ」という形であれば大歓迎です(はは‥)。既にそのような形でリンクしてくださっている方々には、感謝しています。なおリンクの際は、メールなどでご連絡いただければ嬉しいです。
 メールに関しては、その種の連絡以外、例えば記事の感想メールなども、もちろんOKですよ~。

 さて、こんな話題だけではナンなので、おまけ情報を。以前おすすめした宇多丸師匠の映画評トークが本になり、絶賛発売中です→http://www.byakuya-shobo.co.jp/page.php?id=1463&gname=shoseki
 今、読んでいるのですが、最初から順番にではなくバラバラにちょっとずつ読んでいるので、ちゃんとした紹介記事が書けるのはいつになるやら。

※追記‥‥後日、紹介記事を書きました。こちらです。

※追記(2014年)‥‥(自作イラストの掲載を始めたので、補足しておきます。)文章だけでなくイラストの方も、無断転載・無断使用はお断りします。
プロフィール

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。

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