「作り手やファンによる過剰な賛美」を減らすには。

 以前からリンクを張ったりして紹介している、友松直之監督と城定秀夫監督の現代ピンク映画論(http://ameblo.jp/n-tomomatu/entry-10583682719.htmlhttp://ameblo.jp/pegpegjojo/entry-10584827895.html)。今更ですが、これについて自分が思うことを記しておきます。なお、書いているうちに過去記事とダブる内容も出てきたのですが、それはまあいいや、ってことで。

 まず、お2人が共通して主張されていることを、私なりに要約すると。「今のピンク映画なんて大したもんじゃないのに、作り手もファンもピンクを賛美しすぎ」。
 さらに城定監督はご自身の体験談として、一部のピンク関係者に見られる、ある傾向について述べています。彼は2004年頃に、ピンクからVシネ(OV)に活動の場を移したわけですが、その後彼は、一部のピンク関係者からこんなことを言われたのだとか。
 「Vシネなんて撮ってないでピンク撮れよ」「ビデオ撮りのくせにエラそうにするなよ。俺達はフィルムで撮ってるんだぜ」「ピンクは映画だけどVシネは映画じゃないよ」。そして城定監督は、こう続けています。【簡単に言うとピンクはエラいけどVシネはエラくないと言われたわけですが、彼らのこの優越感はどこからくるのでしょう?】

 私が思うに、これは優越感であると同時に、「劣等感の裏返し」でもあるんじゃないかと。そもそもピンク映画は昔も今も、ごく一部の人に評価されたり愛好されたりしているだけで、一般的には全く評価も愛好もされていません。むしろ、蔑まれたり無視されたりしています。「Vシネなんて‥」と言った人は、他のジャンルの関係者から「ピンク映画なんて‥」と言われ、そのことを気にしているのかもしれません。
 つまり。本人たちは無自覚なのかもしれませんが、実はピンク関係者の一部には劣等感を抱いている人たちがいて、彼らは必死でVシネを「ピンクよりも下のジャンル」と決めつけ、その「下のジャンル」を蔑むことで、自分の劣等感を薄めようとしているのではないでしょうか。
 もちろんそれは、くだらない行為です。私は彼らを擁護する気はありません。ただ、彼らのそういう行為には、少しはそれなりの背景があるような気が。

 さきほど、「(ピンク映画は一般的には)蔑まれたり無視されたりしている」と書きましたが、現在、この「蔑み・無視」には2種類あると私は思っています。
 ひとつめは、昔からある古典的なもの。つまり、いわゆる「良識的な」人やメディアが、ピンクに対して否定的だったり、全く興味が無かったりすること。ただ、こういう傾向は大昔からずーっと続いているわけだし、そもそも「良識的な」人たちがエロ系のジャンルを排除するのは、ある意味当然のことなので、これはまあ仕方ないです。
 私がやや問題だと思うのは、最近の傾向として、昔ならピンクを取り上げていたタイプのメディアが、ピンクを排除するようになったこと。例えばかつては、『トゥナイト2』などの深夜テレビ番組がピンク特集を組んだり、『ぴあ』などの情報誌がピンクの新作紹介を載せたり、というようなことが普通にあったのですが、最近はすっかり無くなってしまいました。以前詳しく書いたように、エロネタOK・マニアックな映画談議OKのラジオ番組『ウィークエンド・シャッフル』でさえ、ピンクを取り上げようとしないし。

 で、こういう傾向は、おそらくここ10年くらいで強まっています。そしてそれと同時に、冒頭に書いた「作り手もファンもピンクを賛美しすぎ」な傾向も、強まっている。つまり、外の世界がピンクをより排除するにつれて、内側の人たちの結束が(良くも悪くも)固くなっている。
 この結束には、もちろんネットの普及も関係しているものの、私はどうもその「外側の無視」も、かなり関係しているような気がするんですよ。世間やメディアがピンクを無視したり、どーでもいいような扱いをすればするほど、内側の人たちは盛り上がって、「ピンク映画は素晴らしいんだゾ!」と過剰に主張するようになる。

 私のこのブログについて考えてみても、まあ個々の作品に対しては過剰に賛美しているつもりはありませんが、ピンクというジャンルについては、やや大げさに褒めてしまっているような気もします。
 なぜそうなるのかというと、ファン以外の人々がピンクに馴染みが無さすぎるというか、いろいろと誤解している人も多いので、つい「認識を改めてほしい!」みたいな気持ちで、肩に力を入れて書いてしまうんですよね。これは私だけでなく、他にもそういう方はけっこういるのでは。

 結論としては、やはりもう少しメディアにピンクを取り上げてもらうべきなんじゃないかと。せめて、サブカルも性的話題もOKな雑誌や番組くらいには。そうやって、過剰な排除が減っていけば、過剰な賛美も減っていく‥‥というのが私の考えです。
 では、そのためにどうすればいいのか。これはもう、作り手や送り手の方たちがメディアに直接働きかけるのが、いちばんでしょう(単なるファンが色々言っても、相手にされない場合が多いし)。
 例えば先述の『ウィークエンド・シャッフル』には、監督・脚本家・スクリプトドクターの三宅隆太氏が既に何度も登場し、今週末(4日)にもまた出演されるのですが、この方、そもそもご自分で番組にメールを出したのがキッカケで、出演するようになったのだとか。彼はピンクの人ではないものの、いわゆる「一般的に有名な映画人」ではないわけで、そういう方が自力で頻繁にメディアに出るようになったという事実は、注目すべきことだと思います。
 やはり作り手自身の働きかけというのは、有効ですよ。

※追記(9月24日)‥‥この記事、一部訂正したくなりました。詳しくは、こちらをどうぞ。

タフガイなおかつクールガイ

 ふたつ前の記事の最後で触れた、友松組OPピンクの撮影。先週、ある程度は予定通りに行われました。なぜ「ある程度」なのかというと、当初予定されていた作品が制作中止(延期?)となり、急きょ別の作品を撮影することになったからです。
 具体的に言うと、撮影の日程・場所・スタッフの顔ぶれは予定通り、しかし主演女優を含む何人かのキャストは変更。そして作品の内容は全くの別物に。脚本は、以前から城定秀夫氏が友松監督に預けていた未映像化脚本を、今回の制作条件に合うよう、友松監督が不眠不休の30時間で書きなおしたもの。
 このような形で、直前にキャストのみならず内容までガラリと変えて撮影に突入するのは、ピンク映画業界でも珍しいケースだそうです。では、いちおう分かる範囲で作品データを。

成人館での公開タイトル‥‥『絶対痴女 奥出し調教』(これ実は当初予定されていた作品の公開タイトル。でもこのまま使われる可能性大。)
監督:友松直之 脚本:友松直之、城定秀夫 出演:あいかわ優衣(ピンク映画初出演)、亜紗美、若林美保、津田篤、藤田浩、如春

 さて私はエキストラとして撮影の一部に参加させていただいたので、作品の内容を中途半端に知ってはいます。が、現時点でいろいろ書くのは多分あまりよろしくないので、撮影の様子について少しだけ。
 まず、私が参加したのは主に舞台公演のシーンなのですが、そこでは劇中劇などの長ゼリフが多く、俳優さんたちが苦労してらっしゃいました。ピンクの場合アフレコとはいえ、もちろん口はちゃんと動いてないといけないし、そもそも撮影時にもセリフを言うので、今回のように撮影直前に脚本を渡されて長ゼリフが多いと、やはり大変なようです。といっても皆さん、最終的にはきちんとこなしてらっしゃいました。
 そしてなんとこの舞台公演のシーンは、驚愕の(?)ストーリー展開によって、途中から、ピンクとしては大規模なアクション&パニック・シーンへと発展! ここは長回しで動きも多く、俳優さんたちにも我々エキストラにも多少の危険はあったものの、皆で体を張ってがんばり、無事に成功。
 なお今回、上記の作品データに名前の出ている俳優さん全員の撮影中の姿を、ナマで拝見することができました。皆さんそれぞれ魅力的でしたが、特に亜紗美さんのパワフルさと津田さんのノンビリぶりが好対照で、面白かったです。

 それにしても、この混乱し緊迫した制作状況の中、新人女優主演で長ゼリフや長回しの撮影をも敢行し、しかも常に穏やかに指揮されていた友松監督は、タフガイなおかつクールガイ、と言えるでしょう。実は私、昔から彼に対して「やや情動的な人」というイメージを持っていたので、ちょっと意外でした。やはり勝手なイメージや思い込みは、いけませんね。
 何はともあれ、今回は貴重な経験をさせていただきました。関係者の皆さんにお礼を申し上げます。

実はこの後に、例の友松・城定ピンク論(?)に対する自分の考えなどを書いていたんですが、妙にダラダラ長くなってきたので、ひとまずここで区切って、単独の記事としてアップしました。あとの部分は次回、アップする予定。たぶん近日中に。
※追記‥‥アップしました。こちらです。

『川の字』

(成人映画館での公開タイトルは『潮吹き花嫁の性白書』)
2010年 日本 監督:竹洞哲也 脚本:小松公典、山口大輔 出演:かすみ果穂、倖田李梨、毘舎利敬、岩谷健司、久保田泰也、LUNA、佐藤玄樹
8月27日、上野オークラ&横浜光音座2にて公開

※公開前の作品なので、ネタバレにはかなり気を付けて書いたのですが、ある意味、少しはバレてしまっています。ご了承ください。

 10日ほど前に、新・上野オークラの女性限定イベントにて鑑賞。仲の良い両親のもとで育った若い女性が、恋人との関係に悩みながらも、やがて‥‥というような内容。一応。
 
 この作品、チラシなどでよく「温かい映画」と紹介されていて、確かにそういう面もあるのですが、私にとってはかなり「厳しい映画」です。厳しいことを言っている映画。そういえば以前、同じ竹洞監督の『たぶん』についても、ちょっと似たようなことを書いたなあ
 つまり『たぶん』も『川の字』も、チョコレートでコーティングしたゴ―ヤみたいなんですよ。や、そんな食べ物は無いんでしょうけど、要するに、外側は甘いのに中身は苦い、ということ。そしてこの『川の字』のほうが、より苦味が強い。

 まず、ヒロインの置かれた状況が、実は過酷。彼女はかつて何者かにレイプされたのですが、それだけでなく、他にも非常に辛い経験をしていて。「こんなに色んなことを背負っていると、人によっては精神に異常をきたすのでは?」と思うほど。
 さらに、もうひとりのある登場人物も、とても辛い経験をしています。ちなみにこれらの「辛い経験」は、作品の終盤で明かされる要素なので、ここには書けません。

 そう、この映画では、複数の登場人物のかなり重要な部分が、終盤まで伏せてあるのです(匂わせるような描写はありますが)。そして、いわゆる「意外な事実」として明かされ、観客としては「え、そうだったのか」と思うわけで。
 さて、ここで「え、そうだったのか」と思うのは、もちろん作劇として意図的に伏せられていたからなのですが、それだけでなく、その人物たちがけっこう明るい、ということも関係あると思います。とにかく、いかにも「悲しみを背負ってます!」とか「辛さに耐えてます!」とか、そういう感じがほとんど無いんですよ。例えばヒロインの場合、レイプによる精神的後遺症は多少あるものの、彼女が抱えていることの全体的な重さの割には、背筋が伸びているというか。

 この「背筋が伸びている」感じが、個人的には印象深いです。最初に書いた「厳しい」というのも、このこと。人に対して厳しい、というか。「辛くても、どうにかしなけりゃ、どうにもならないんだよ」と映画が言っているような。
 まあ、もしかしたら、その人物たちが明るかったり背筋が伸びていたりするのも、「意外な事実」をより意外に見せるための作劇なのかもしれませんが‥‥って、多分そんなことは無い。それだけではない。作り手の人生観の表れ、という側面もやはりあると思います。

 では、作り手の1人である脚本家・小松氏によるこの映画の誕生秘話を、どうぞ→http://blog.goo.ne.jp/konde-koman/e/3a2f3f2e4d76434dcc0f31333d9f8420

不忍池のほとりで

 予告どおり、日曜日は新・上野オークラの女性限定イベントに行ってきました。目黒シネマのピンク・レイトショー初日に関しては、実態と公式ブログ記事に隔たりがある、と文句を付けましたけど、今回、上野オークラ公式ブログ記事に、文句を付ける気は全くありません。書いてあるとおり、本当に盛況だったので。トークショー時の挙手によると、「ピンク映画を初めて観た」というお客さんも実際に多かったです。
 さて、この盛況を今後につなげるには‥‥ということで、関係者の方々が作戦を練ってらっしゃることと思いますが、私も、15年ほど前からピンク映画を観ている女性客として、いくつかの提案などを。

 まず今回のイベントで、ちょっと気になったことがありまして。それは、上映後のトークショーのゲスト。結局、最初から最後まで3人の女優さんだけで。まあ、「女性向けのイベントだからゲストも女性のみ」ということだったのかもしれませんが。
 でもせっかく、加藤義一監督や脚本家の小松公典氏、さらに何人かの男優さんも関係者として来館されていたのだから、彼らにも登壇してもらうべきだったのでは? というか、次回からは検討してください。特に監督の登壇について。
 なぜそこにこだわるかというと、これは私の推測なんですが‥‥ピンク初心者の方たちは、「ピンク映画の監督」という人種(?)に対して、やや偏ったイメージを持っているんじゃないかと。なにしろ、私自身がそうだったので。

 私が初めてピンクのイベントに参加したのは、やはり15年ほど前の、ピンク四天王特集。上映後のトークショーにナマ四天王が登場したわけですが、このとき、ちょっとビックリしたんですよ。
 それまで私はピンクの監督に対して、「ゴツゴツした岩みたいな人」「ちょっと怖そうな人」などのイメージを持っていて、まあ瀬々敬久氏と佐藤寿保氏はややそういう感じだったんですけど、佐野和宏氏は俳優兼業だけあって独特の色気が漂っていたし、それに何といってもサトウ トシキ氏。細くて静かで涼しげで、自分がイメージしていた「ピンク映画の監督さん」とは、あまりにも違っていて驚きました。
 ちなみに「ゴツゴツした岩みたいな~」というのは、ピンク出身の大物、W監督やT監督などから来たイメージだったのかも。あるいは、何の根拠もない勝手なイメージ。そしてこれは、「ピンク映画というジャンルに対する勝手なイメージ」でもあったわけで。

 とにかく私の場合、作品に接したうえで監督のトークショーなども観ているうちに、実感したんですよ。「ひとことでピンクといっても、色んなタイプの作品があるし、色んなタイプの作り手がいる」ということを。すると、以前はやや遠い存在だった「ピンク映画」というジャンルに、親しみと興味が湧いてきて。以来、少しずつではありますが、ずっとピンクを見続けています。
 まあそういうわけで、監督が登壇するのもけっこう重要なことだと私は思いますよ。特に今回の、加藤監督のような方は。というのも、イベント終了後にちょっとだけお話しさせていただいたんですが、彼、非常にこう、ホニャ~っとした柔らかい雰囲気で。京都弁だし。写真で見るよりも、ずっと親しみやすい感じの方でした。壇上で少しでもトークすれば、いいアピールになったんじゃないかなあ。

 さて何だか長くなってしまいましたが、もうひとつ。それは、もし今後もこういう上映会をやるのなら、不定期ではなくぜひ定期的に開催するべき‥‥ということ。不定期にやるのと定期的にやるのでは、情報の広がり方が全然違うはず。
 不定期開催だと、その都度がんばって宣伝しなければいけませんが、定期開催で、例えば「毎月第1日曜」とか決まっていれば、「分かりやすい・覚えやすい・伝わりやすい」と三拍子そろっているので、マニア以外の人にもクチコミで広がる可能性が高い。
 まあ毎月というのはちょっと大変ですが、でも新・上野オークラは、メインの大きなスクリーンのほかに小さめのスクリーンが2つあるので、小さい方で頻繁に上映会を開くというのも、無理ではないような気がします。

 何だか「初心者の惹きつけ方」みたいなことを、ダラダラと書いてきましたが。私は別に、「たくさんの人にピンクを好きになってもらいたい」とは思っていません。好きになるかどうかは、それぞれの自由だし。「どうしても受け入れられない」という人も、けっこういるだろうし。
 たださっき書いたような、偏ったイメージや先入観は、できれば取っ払ってもらいたい。そしてその上で、興味を持った人はずっと観つづければいいし、そうでない人は、やめればいいし。

 ところで少し前に、ピンクに関する友松監督の意見城定監督の意見について書きたい‥などと表明しましたが、まだ全然書けてません。そしてそうこうするうちに、今月18日、友松組OPピンクのエキストラとして撮影に参加できることになり。
 や、私としては最初は、エキストラ募集の告知を見て「面白そうだな」と思っていただけなんです。当日の予定もハッキリしないし、参加できるかどうか分からないし。すると知らないうちに友人が「2名」で申し込んでいて、「行こう」と。もちろん興味は非常にあるので、よほどの用事が入らない限りは行くつもりです。そしてそのあと、いろいろ書けたらいいな、と。でも何だか、撮影場所の確保が大変なことになっているようで‥‥。

※追記(8月14日)‥‥友松組、撮影場所の件は解決したそうですが、他に色々なトラブルが発生してしまい、企画そのものが危うくなっているようです。詳細や最新情報が気になる方は、友松監督のブログをお読みください。
※追記(8月25日)‥‥結局エキストラを体験して記事に書きました。詳しくはこちらをどうぞ
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

最新記事
カテゴリー
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

ブログ内検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
RSSフィード
リンク