『忘却の河』

成人映画館での公開題:『白昼の人妻 犯られる巨乳』
2011年 日本 監督:竹洞哲也 脚本:小松公典 出演:櫻井ゆうこ、かすみ果穂、園部貴一、岩谷健司、毘舎利敬、酒井あずさ、倖田李梨、岡田智宏、サーモン鮭山
(全国の成人映画館で順次上映中)

 2週間ほど前に、上野オークラ劇場にて鑑賞。
 この『忘却の河』の元ネタは、香港ノワール、特にジョニー・トー監督の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』であると、関係者の方々が公言しています。たしかに、『忘却の河』のストーリーにおける、「家族を殺された主人公が復讐を決意」「復讐者(主人公)は記憶喪失」という2大要素は、『冷たい雨~』と同じ。
 
 ただピンク映画の場合、基本的に、女性が主人公であることが(会社側から)求められるので、主人公の性別は、「男性→女性」に変更されています。つまり、記憶喪失の復讐ヒロイン。そして、演じる櫻井さんは巨乳。エロ・ノワールですなあ。
 あ、今、思いつきで書いたんですけど、「エロ・ノワール」というジャンルはあるんでしょうか? もし無いなら勝手に作ります。なんか語感が気に入ったし。
 
 さて私が、この映画の中でヒロイン以上にエロ・ノワール的だと思うのは、かすみ果穂演じる蘭です。蘭は、エロでビッチな敵キャラ。殺し屋で、SMの女王様。かすみさんは可憐な役も似合いますが、それとは正反対のこういう役でも、きちんとこなしています。
 あと、やはり敵キャラのヤクザとその手下(毘舎利敬&岩谷健司)。ふたりはホモ関係で、急にフッとキスしたり卑猥な会話を交わしたり、これまたイイ感じのエロ・ノワール。毘舎利さんも岩谷さんも、相変わらず達者だし。

 ただ作品全体としては、やや中途半端というか、ノワールになりきれてないというか‥‥。ギャグが多すぎると思うんですよ。ノワールなのかコミカル作品なのか、よく分からない。
 おそらく作り手側としては、わざとギャグを多めに入れて、「ちょっとコミカルなノワール」を狙ったのだと思いますが、作品を観た限りでは、「照れている」ように見えるんですよね。ノワールを作ることに対して、照れている。潔くない印象を受けます。

 特に気になったのは、クールな殺し屋・龍一(園部貴一)のお腹が肝心な時にグ~ッと鳴ってしまう、というギャグ。これ、要るかなあ? なんか昔のコントみたいで、あまり面白くないし‥‥。
 そもそも園部さんは、この劇画的なキャラがすごく似合って様になっているのだから、妙にいじらないでほしいです。彼は本当に、いい顔をしている。美形云々ではなく、劇画的な虚構を実写で表現する力を持った顔立ち・顔つき、という意味で。

 ところで、倖田李梨演じる女医(役名)。以前チラッと書いたように、カート・ラッセルを連想しました。ジョン・カーペンター作品におけるカート・ラッセル。そう、スネークですね。
 黒い眼帯と、「いきなり自分の呼び方を指定する」ところが、そっくり。女医は「女医って呼んで!」と言い、スネークは「コール・ミー・スネーク!」と言いますから。さらに、倖田さんのけっこう筋肉質な体つきも、カート・ラッセルを彷彿とさせます。
 
 余談ですが、私にとってのスネークとは、おもに『エスケープ・フロム・L.A.』での彼。なぜなら『エスケープ~』は、作品自体が非常に印象的だから。というか、めちゃめちゃ心に残っているシーンがあるんですよ。「よくこんなこと思いつくな~」と、感心しながら呆れて笑ったシーンが。
 どのシーンかは、ご想像にお任せします。

『囚われの淫獣』

(上記のタイトルは公開題。原題は特に無い模様。)
2011年 日本 監督・脚本:友松直之 出演:柚本紗希、倖田李梨、若林美保、藤田浩、津田篤、如春
○全国の成人映画館で順次上映中

 1ヶ月半ほど前に、上野オークラ劇場にて鑑賞。その直後に忙しくなったりして、しばらくブログから離れていたので、書くのが遅くなってしまいました。
 つまり観てからかなり日が経っているわけですが、では現時点で、この作品のどこがいちばん印象に残っているかというと、終盤の、津田さん演じるタナカくんの選択(運命?)だったりします。これについては、あとで述べます。

 まずこの作品のストーリーは、「ピンク映画の観客たちが劇場に閉じ込められ、しだいに彼らの欲望が露わになっていき‥‥」というもの。ジャンルとしては、メタ映画(映画の中で映画を語る)の側面が大いにあり、作品の中で、「ピンク映画とは」「成人映画館とは」といったことがバンバン語られます。
 
 この語られる内容というのが、ピンク映画ファンに対して批判的というか、手厳しいというか。特に、女性のピンク映画ファンに対しては、手厳しいのを超えて「ヒドい」までいっているかも。
 例えば、「ピンク映画館に女が来るのは、男性専用車両に女が乗り込むのと同じ。痴漢されてもレイプされても文句は言えない」とか。しかもこれ、セリフとして発せられるだけではなく実際に、ピンク映画館に来ている女性がレイプされるシーンもあります(夢か現実か分からない、という設定ではありますが)。

 こうなると、「女性のピンク映画ファン」である私は、キーッと怒るべきなのかもしれません。しかし残念ながら(?)、腹は立たないんですよね。苦笑はしますけど。
 この映画に限らず、友松監督はブログなどで、女性のピンク映画ファンや女性全体に対して、かなり辛辣なことを繰り返し述べているのですが、私は彼のそういう主張に対し、共感はしないものの、反感も持ってないのです。
 
 なんというか‥‥どんなに辛辣なことが主張されていても、それは主張である以上に、問題提議としてこちらに迫って来るんですよ。「俺はこう思う!」ではなく、「皆はどうなんだ?」と、揺さぶりをかけてくる感じ。
 今回も、先に述べたようなセリフやシーンがあって、それを観た私がどう思ったかというと‥‥「それでも私はやっぱりピンク映画館に行く」。実際、この作品を観た後も、また上野オークラに行ったし。まあ結局のところ、自分がどうしたいかということを、しっかりと再確認させてもらったわけです。
 
 ところで最初に書いたように、私がこの映画でいちばん印象に残ったのは、終盤でのタナカくん。

※以下の文章では、作品の結末に触れています。
 
 タナカくんは、スクリーンに映る幻の女に恋をしたあげく、現実を捨て、スクリーンの中の世界へ行ってしまいます。彼にとって、現実も、現実の女も、耐え難いものだった。だから幻想の世界へ行く。
 この「現実より幻想を選ぶ」ということも、友松監督の作品で、繰り返し描かれている要素です。そして監督はその要素を、特に悲しいこととして描くわけでもなく、ことさらに美化するわけでもない。まるで当然のことのように描いています。

 私が、友松監督のある面に苦笑しつつも、彼の作品や言動に注目しているのは、このあたりに原因があるのかもしれません。つまり、この件については、かなり共感しているのです。私の中には、「現実より幻想を選ぶ」ということに対して、「それもアリだろう」という思いがある。
 現時点で、自分自身がそういう選択をしたいわけではないのですが、だからといって、そういう選択をする人を否定したくないし、否定できない。悲惨なことだとも思わない。
 
 今回の作品では、自分の中にあるこういう傾向も、再確認させてもらいました。

ゾンビとラッセル

 前の記事をアップした時点では、その後すぐに映画関係の記事を再開するつもりだったのですが。引き続き色々あって、またしても、しばらく更新できませんでした。
 さて今度こそ、映画記事を再開しますよ~(たぶん)。まずは、途中まで書けている『囚われの淫獣』(友松直之監督)の記事を完成させ‥‥って、この作品を観てから、もう1ヶ月以上たってるよ! ふぇ~~。細部の記憶も薄れているし、今更どうなん? という気もしますが、なるべくアップしたいと思います。

 で、私がタラタラしているうちに、友松監督は新作3本(!)の制作に突入したようで。タイトルは、『恋死体(ラブゾンビ)!! 君はゾンビに恋してる』『ヴァンパイアピアノレッスン~少女にナニが起こったか』『レイプゾンビ』。どれも、グフフなタイトルですね。中身も面白そうですよ。しかもこの3本すべて、エキストラを募集しています。
 すでに『恋死体』の撮影は終了とのことですが、まだ『ヴァンパイア~』と『レイプゾンビ』がありますよ! 興味のある方は、こちらをどうぞ→http://ameblo.jp/n-tomomatu/entry-10938897971.html

 ちなみに『レイプゾンビ』は、いろんな意味でキャスティングが豪華です。ピンク映画の人気俳優さんが多数出演するうえに、内田春菊さんやアリスセイラーさんも登場。
 「なぜ春菊さんが?!」と思う方もいるかもしれませんが、彼女、友松監督の師匠なのです。監督は昔、春菊さんの作画アシスタントだったので。
 アリスセイラ―さんは(わりとカルトな方なのでちょっと紹介しておくと)、関西インディーズ・シーンで長年にわたって活躍している女性ミュージシャン。昔からよく友松作品の主題歌を担当されています。今回は、主題歌と出演の両方で参加されるとのこと。
  
 さて友松組の話題が長くなりましたが、竹洞組の話題も。先日、『忘却の河』を観ました。いずれ、こちらについての記事もアップしたいです。で、作品自体の評価や感想はその記事内に書くとして、とりあえず、小ネタをひとつ。

 倖田李梨さんが、カート・ラッセルみたいだった(見た目もセリフも)。

 これがどういう意味なのかも、記事内で説明します。まあ、分かる人にはすぐ分かると思いますが。
プロフィール

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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