『仮面の宿命~美しき裸天使』

原題:『モンスターは何処にいる』
2009年 監督・脚本:山﨑邦紀 出演:牧村耕次、小笠原黎、久保田泰也、神夜、佐々木恭輔(共輔)

 数日前、『浜野佐知映画祭』の上映作品として、オーディトリウム渋谷にて鑑賞。前にも書いたように、この映画祭では浜野氏のプロデュース作品ということで、山﨑邦紀監督の薔薇族(ゲイ)映画が2本上映されました。そのうちの1本。
 もう1本の『メモリーズ』も観たかったのですが、残念ながらその日には行けず。

 さて山﨑監督と薔薇族映画というと、ひとつ思い出すことがありまして。それは、1994年に発行された『銀星倶楽部19 桃色映画天国1980-1994』というムック本に載っていた、山﨑監督の文章。
 いちおう「自作の薔薇族映画の現場リポート」ということになっていたものの、現場の様子だけでなく、彼のこのジャンルに対する思いも詳しく綴られていて。発行当時、かなり興味深く読んだ記憶があります。
 
 ちなみに薔薇族映画は、ピンク映画の中の1ジャンルのようになっていて、ピンクの監督によって作られる場合が多く。つまり、たいていのピンク監督は、(男女の営みを描く)ピンクと、(男性同士の営みを描く)薔薇と、両方を手掛けているわけで。山﨑監督も、そう。
 そして彼は、さきほど紹介した文章の中で、「ピンクより薔薇の方が、作っていて面白い」という意味のことを、理由も含め、かなり長く書いていました。

 で、『仮面の宿命~美しき裸天使』。この映画も、きっと監督は、面白がりながら作ったのでしょう。いろいろ凝ってるし。
 
 たとえば、装飾(小道具)。主人公の大学教授(牧村耕次)の部屋が、ちょっとした博物館か美術館みたいになってます。めずらしい絵画や置きものが、ズラリ。
 監督のブログの撮影現場レポートによると、絵画は監督の知り合いの妖怪画家(?)の方が描いたもので、置きもの類はスタッフが人から借りたりして集めたとのこと。これらのものが飾られていることによって、教授の部屋が(そして彼自身も)独特の妖気を放っています。

 あと凝っているといえば、台詞。教授は哲学の研究者ということもあり、講義のシーンでも私生活のシーンでも、哲学的な、そして凝った言い回しの台詞が多い。
 また彼の台詞には、西洋哲学だけでなく、東洋哲学(というか仏教哲学)的な要素も含まれていて、個人的に興味深かったです(諸事情により最近、仏教哲学を少し勉強しているので)。
 さらに教授の発言に影響される形で、他の登場人物もなかなか面白いことを言っていて。できればこの映画、もう1回観て、台詞を細部まで確認したい。

 しかし私にとって、この映画で最も印象的だったのは、実は、佐々木恭輔氏の役柄と演技だったりします。佐々木氏は、もともとの顔立ちが濃い(キツい)せいか、気性の激しい役や欲望ムキ出しな役を振られることもあるのですが、今回は、実に穏やかで淡々とした男性を好演。

 この男性も教授もゲイで、若い頃にひとりの美少年(神夜)を取り合った仲、という設定。しかし「取り合った」といっても、教授の方が圧倒的に優勢で、あっさりと美少年を奪って行ったらしく。その後、美少年は若くして亡くなり、残された2人の男は、特に仲がいいわけではないが、ある種の同志のような関係を築いている、と。
 そして佐々木氏演じる男性は、老いた教授を気遣って、一升瓶片手に教授宅を訪れたりするわけです。で、さほど歓迎されない、でも拒否もされない。そんな状況で、静かに笑顔を見せるんですよ。この柔らかな笑顔が、いいんだなあ~。

 さらに、実は教授は脳腫瘍で、死を意識しはじめてから、美少年の亡霊を見るようになっていて。その「教授と美少年(亡霊)の世界」に、彼(佐々木氏演じる男性)も加わり、幻想的な3Pシーンが展開されます。
 あの世とこの世が混じり合った3P。耽美でエロでファンタジック。このシーンだけでなく、この映画全体を、そう形容することもできるでしょう。

 ところで。先述のムック本を引っ張り出して、例の山﨑監督の文章を改めて読み直していると、こんな言葉が目に飛び込んできました。「金○ゴロゴロ」。
 ○の部分はあえて伏せましたが、これはつまり‥‥「男二人が上下に重なって抱き合い、パンツ一枚で股間をこすり合わせているのを、足側から狙ったカット」において、4個の金○がゴロゴロと揉み合っている様子のことだそうです。で、山﨑監督は、これに魅了されている、と。

 そういえばこの『仮面の宿命』にも、「金○ゴロゴロ」カットが登場します。例のムック本は1994年発行、この映画は2009年制作。山﨑監督、長年にわたって「金○ゴロゴロ」に魅了されていたんですね。今は、どうなんだろう‥‥。

お、面白い‥‥

 とり急ぎ、オススメのお知らせ。

 前の記事で、シネマヴェーラで上映の『東京ディープスロート夫人』について、「観たいけど、間に合うかどうか」と書きましたが、結局間に合って、『東京~』と『怪猫トルコ風呂』、両方とも観ることができました。
 で、『怪猫~』はわりと予想どおりの映画だったんですが、『東京ディープスロート夫人』は予想の10倍くらい面白かった!
 
 サイトの作品解説に「喉に性感帯を移植された女」とあるように、設定自体がまず面白いんですが、細かいセリフや演出そして演技も絶妙。特に、移植手術の打ち合わせ(?)をするシーンから絶妙具合が激しくなって、ラストまで大いに楽しめました。
 
 8月6日(火)にまた上映されるので、興味のある方は是非! 詳しくはシネマヴェーラのサイトをどうぞ。

今日から始まるアレコレ

今日から始まる作品や特集上映で、興味のあるもの。今パッと思いつくだけで(しかも邦画だけで)3つもある。その3つとオマケの1本について。

◆『あかぼし』‥‥8月3日から、K’s cinemaにて。公式サイトの「INTRODUCTION」に載っている吉野竜平監督の「製作意図」を読んで、この映画を観てみたい、と思った。

◆『妄執・異形の人々 傑作選』‥‥8月3日~30日、シネマヴェーラ渋谷にて。かの有名な『幻の湖』から「知る人ぞ知る」的な作品まで、いろいろ。とりあえず今日は渋谷方面で用事があるので、それが終わったら最終回(『怪猫トルコ風呂』)を観に行くつもり。その前の『東京ディープスロート夫人』も観たいけど、間に合うかどうか。

◆『浜野佐知 映画祭』‥‥8月3日~9日、オーディトリウム渋谷にて。浜野氏の監督作だけでなく、プロデュース作として、山﨑邦紀監督の薔薇族映画(ゲイ映画)も2本登場。そのうちの1本、『メモリーズ』は、映画祭紹介ページの下の方に載っているストーリー解説によると、なんとも摩訶不思議な内容らしい。面白そう。かつてm@stervision氏が山﨑監督を「ピンク映画界のデヴィッド・リンチ」と呼んでいたのを、ふと思い出した。

●『浜野佐知 映画祭』と同じく8月3日~9日にオーディトリウムで上映される、 『かしこい狗は、吠えずに笑う』。前回(6月末)上映の際に観て、かなり面白かったのでオススメ。ちなみに監督の渡部亮平氏は私と同じ愛媛出身、さらにもうひとつ共通点があって、ちょっと親近感を抱いているのだけど、そういう理由でオススメしているわけではな~いですよ。この映画の、「意外なのに納得できる展開」に感心したので。
プロフィール

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。

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