『映画の奈落 北陸代理戦争事件』

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2014年  著者:伊藤彰彦  発行:国書刊行会
発行元によるこの本の紹介→http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336058102/

映画『北陸代理戦争』(1977年、監督:深作欣二、脚本:高田宏治)が封切られた1ヶ月半後、主人公のモデルである川内組組長・川内弘が、映画と同じシチュエーションで銃撃され、死亡。
この事実を軸に、関係者への取材や脚本の分析によって、『北陸代理戦争』という1本の映画を徹底的に研究した本が、この『映画の奈落 北陸代理戦争事件』です。

映画制作当時、高田宏治は、先輩の笠原和夫(『仁義なき戦い』などの脚本家)を越えようと意気込み、いっぽう川内弘は、自分の親分である菅谷政雄を飛び越して、極道社会を駆け上がろうとしていた最中。
高田氏は、主人公が親分に宣戦布告するような内容の脚本を書き、川内氏もそれにOKを出し。

ある意味、似た者同士の2人が出会って映画が生まれ、事件が起き、川内氏は殺され、映画も全くヒットせず。
2人はともに奈落に落ちてしまった‥‥というわけです。

そして高田氏はその後、『鬼龍院花子の生涯』や『極道の妻たち』シリーズなどのヒット作を生んで数々の賞に輝き、奈落から這い上がった‥はずだったのですが、のちに再び極道がらみの出来事で、奈落に落ちることになります。

この高田氏の激動の人生に加え、周囲の映画人たちや、川内氏をはじめとする極道社会の人々のドラマチックな人間模様が詳細に描かれていて、それだけでもかなり読みごたえがあるのですが、この本にはさらに、「脚本分析」という大きな要素があります。

著者の伊藤彰彦氏はもともと脚本家なので、「映画の作り手」の目線で、『北陸代理戦争』の脚本を精緻に分析しているのです。
高田氏が、川内氏らに取材して得た材料から、どのようにフィクションを紡いでいったのか。
高田氏が、深作監督とのバトルを通じて、どのように脚本を書き変えていったのか。(第1稿と決定稿の比較も、細かくなされています。)

このように盛り沢山な内容の『映画の奈落』。面白いし、かなり珍しいタイプの映画本だと思います。オススメです。

‥‥しかしこれだけでは、何だか抽象的すぎるので。
私がこの本を読んで、妙に心に残った部分を、具体的にいくつかメモしておきます。

◆高田氏が川内氏を取材している時、川内氏がなぜか唐突に、日大芸術学部がどうのこうの‥‥と言う。川内氏、「東映が自分の映画を作ってくれる!」と思って、かなり気分が高揚していたのかなあ。高揚してる時って、人はつい脈絡の無い、意味不明なことを言ったりするから。

◆川内氏が殺された後、彼の子分たち(山岸とYとM)が、深夜の映画館で『北陸代理戦争』を観る。観た直後にM氏が語った意外な感想、可笑しくてちょっと哀しい。

◆その「子分たち」は、報復として菅谷政雄を殺すよう上から命令されていたが、それを実行する前に、まず山岸氏とY氏が銃刀法違反で逮捕される。山岸氏が著者に語った、この逮捕の「真相」は、かなり驚くべきもの。こういうことって、現実にあるんだなあ‥‥。

以上、「具体的にメモ」と言いつつ、肝心なところは伏せておきました。気になる人は、本を読んでください!

そして最後に。今回のイラスト、やや不自然なほどに「目」を強調してみました。
描きながら考えていたことは‥‥「奈落の淵を覗き込む目って、どんな目なんかなあ」。


※追記(6月15日)‥‥うっかり書き忘れていましたが。この本だけでなく、映画(『北陸代理戦争』)のほうも、とても面白いです。ストーリーは陰惨なのに、コミカルな場面も多く、観ていて何度も笑ってしまう、不思議な映画。
プロフィール

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。

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