『アラビアのロレンス』完全版

1962年(オリジナル版) 1989年(完全版) イギリス 監督:デヴィッド・リーン 脚本:ロバート・ボルト 出演:ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、アレック・ギネス
上映中  劇場公式サイト→http://www.cinemabox.com/schedule/times/index.shtml

 このブログとしては珍しく、外国映画の記事が続いています。しかも今回は、世界的に有名なあの『アラビアのロレンス』。実は劇場で観た経験が無く、いつか大きめのスクリーンできちんと鑑賞したいと思っていたところ、テアトルタイムズスクエアで完全版のニュープリントバージョンが上映されることになり、観に行きました。
 
 第1次世界大戦中、イギリス人でありながらアラブ民族の自由と独立のために戦い、「砂漠の英雄」と謳われた実在の人物、T・E・ロレンス。彼のアラビア体験記『知恵の七柱』を、空前絶後の壮大なスケールで映画化した‥‥というのがこの作品の一般的な紹介の仕方。たしかにそういう作品ではあるのですが。

※以下の文章では終盤の展開に触れています。ネタばれOKの方はお読みください。

 私にとってこの映画は、何よりもまず「強烈な挫折の物語」です。とにかく終盤におけるロレンスの挫折と凋落ぶりが、非常に印象的。一時は神のように崇拝され英雄として君臨していた男が、結局は利用され裏切られ、自らの脆さや残虐さを知った末に、あっけなく死んでいくのですから。
 しかもこの「あっけなく死んでいく」という部分が映画の冒頭で描かれ、それに続く葬儀のシーンでは、彼を称える人だけでなく批判する人も登場。さらにこのシーンで、「私は彼と握手したことがある」と誇らしげに語る人物が出てくるのですが、終盤で、実はその人物は、挫折し落胆しきった状態のロレンスと握手していた‥ということが明かされます。
 この構成から察するに、作り手側はT・E・ロレンスの光よりも影の部分に興味を持っていたのでしょう。いや、まあ、私の主観もかなり入っているのかもしれませんが。ついでにもうひとつ、私が感じたことを書いておきます。

 この映画におけるロレンスのキャラクターは、知的で飄々としていてちょっと変わり者で、意志が強く行動力もある、というもの。普通こういうキャラクターは、映画やドラマなどの中で、救世主的な役割を果たす場合が多いですよね。知恵と勇気で危機的状況を改革するとか、無気力な者たちを刺激して活性化させるとか、悩める人々に前向きに生きるヒントを授けるとか。概して、物語をハッピーエンドに導くキーパーソンであることが多いです。
 しかし『アラビアのロレンス』では、そういうキャラクターが途中まではまさに救世主のごとく活躍するものの、結局は無残にも挫折して、あっけない最期を迎えます。事実に基づいた映画ということもあり、観ていて「この世に救世主など居ない」「並外れた力を持つ個人など居ない」と言われているような気持ちになりました。

 上映時間は227分、相当長いですが途中休憩も入りますし、興味のある方はこの機会にぜひご覧ください。おススメします。私はいわゆる「映画賞を総ナメ」的な大作・名作の類にはあまり惹かれない人間ですが、そんな私でもこれはやはり偉大な映画だと思うので。また、今回のような大きめのスクリーンで観ると、まるで自分が砂漠に居るような不思議な感覚も味わえますよ。

 次の記事ではガラリと変わって、某邦画(というかOV)について書きます。
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サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
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