『どつかれてアンダルシア(仮)』

1999年 スペイン 監督・脚本:アレックス・デ・ラ・イグレシア 脚本:ホルヘ・ゲリカエチェバリア 出演:サンティアゴ・セグラ、エル・グラン・ワイオミング

 アメリカ映画の次はヨーロッパ映画です。ヨーロッパ映画というと、私は若い頃、フランスやイタリアの芸術っぽい映画を気張って観ていたのですが、最近はこういうコテコテな作品の方が好きですねー。『どつかれてアンダルシア(仮)』。ちなみに(仮)も正式な邦題の一部です。
 
 ズバリ、「どつき漫才」を題材にした映画。作品自体はフィクションですが、こんな映画が作られるということは、スペインにも実際にその種の漫才があるのでしょうか。
 まあそれは置いといて、どんな「どつき」なのかというと、ビンタ。頬をパーンと引っぱたくわけです。で、このビンタされる方の顔の皮膚が、なんというかブニュブニュッとしていて独特なんです。しかもほぼ無表情。これがウケて国民的大スターになる2人組を描いたブラック・コメディです。
 
 1973年のスペイン。田舎でくすぶっていた2人の男が芸能界で職を得ようと都会へ行き、「ブルーノ&ニノ」という漫才コンビを結成。たまたま舞台でブルーノがニノの頬をビンタしたのが大ウケし、やがてスターに。しかし富と名声を得るにつれ、彼らの仲はどんどん険悪になり‥‥。
  
 日本でも漫才コンビが売れてくると、必ずと言っていいほど「実は仲が悪いらしい」という噂が立ちます。まあ、「いかにも名コンビって感じの2人が、実はすっごい仲が悪かったりしたら面白いよな~」という視聴者のひそかな願望なのかもしれません。その願望に充分すぎるほど応えるのが「ニノ&ブルーノ」なのです。
 
 ここで「ん?」と気づいた方がいるかもしれませんが、ストーリー紹介の段落では「ブルーノ&ニノ」だったのが、今度は「ニノ&ブルーノ」になっています。これ、書き間違えたわけではありません。ニノは自分の名前が後ろに来ているのが気に入らず、ある賭けをしてブルーノに勝ち、途中でコンビ名を変えさせるのです。
 名前の順番でモメる‥‥いかにも芸能人同士のトラブルって感じですね。しかし、こんなのはまだ可愛い方で、2人のいがみ合いは想像を絶する域にまでエスカレートしていくのです。
 
 例えば彼らはお金ができると、隣り合った同じ家を買って住みます。つまり、造りも外観も同じ2軒の豪邸が並んでいて、そこで暮らしているわけです。こう書くと仲が良いみたいですが、実際に映像で見ると異様です。「おそろい」ではなく「張り合っている」のですね。
 そして彼らは互いに監視し合い、嫌がらせをし合います。特にニノは、大勢の女性を雇って連日連夜ホームパーティーで盛り上がっているように演出し、ブルーノに見せつけるという「そこまでせんでも」と言いたくなるようなことをします。対するブルーノの方は非常に執念深く、長い年月が経ってからニノを罠にはめて刑務所送りにしたりします。
 
 とにかく、ひとつひとつのエピソードがどれも濃くてコテコテ。いがみ合いの描写に限らず、序盤の芸能人になる前の部分で、女性に縁のないニノが自家製の貧相なダッチワイフ(らしきもの)を愛用しているなど、あらゆるエピソードが極端です。
 また、2人の仲が険悪になってきたあたりで、そのイメージとして、彼らの背中にウジ虫がわいている気色悪い映像が登場するなど、ビジュアル面でも過剰なほどのコテコテ感が見受けられます。
 
 そして終盤、2人の争いが武器を持ち出すまでにヒートアップすると、さすがに暗いムードが漂ってくるのですが、悲劇的な結末を迎えると思いきやラストカットには笑えるオチが! この、「黒い笑い→黒すぎて笑えない→でもまた笑える」という構成もなかなか面白いです。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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