『キャラバン野郎 7』

(成人館での公開タイトルは『飯場で感じる女の性』)
2000年 日本 監督・出演:荒木太郎 脚本:内藤忠司 出演:林由美香、鈴木あや、久須美欽一、小林節彦、丘尚輝、時任歩

 先週、イメージフォーラムのピンク特集にて鑑賞。荒木太郎監督の作品を観るのは、これが初めて。(池島監督の時と同じ言い訳をまた書きますが)荒木監督作品は一般館でほとんど上映されず、ソフトもあまり出回っていないため、♀にとっては観る機会が少ないのです。
 
 この『キャラバン野郎』シリーズは、荒木氏の監督・主演による連作。主人公の真二(荒木氏)も彼の元恋人・花枝(林由美香)も、それぞれにさすらいの旅を続けている‥‥というのがシリーズ全体を貫く基本設定のようです。で、当然ながら私は今回、真二というキャラクターを初めてスクリーンで観たわけですが、まず思ったことは、「東海林太郎みたい」。

 少し解説しておくと、東海林(しょうじ)太郎というのは昭和初期から中期にかけて活躍した歌手で、黒縁メガネをかけ直立不動で歌う姿が有名。といっても、もちろん私はリアルタイムで彼の活躍に接した世代ではなく、子供の頃に身内の年配者たちが、メガネをかけた姿勢のいい男性を見かけるたびに「東海林太郎みたいやな」と言っていて、それが刷り込まれているのです。
 この映画の真二はメガネをかけているうえ奇妙に姿勢が良く、例えば疲労と空腹で倒れるときも、直立姿勢のまま前方にまっすぐバタンキュー。おまけに演じている荒木氏の名前が「太郎」。こうなると、どうしても東海林太郎を連想してしまうわけで。
 
 しかもこの映画自体、設定はおそらく現代のはずなのに、昭和初期から中期ごろを思わせる要素が多いのです。まず真二は今時なぜか白黒ショーの巡業をしているし、そのショーの際には『天然の美』(チンドン屋さんの定番曲)を流しているし。
 さらに花枝の使う言葉が妙に古いというか。例えば彼女は、飯場の男たちとヤリまくるレイカ(鈴木あや)に向かって、「ここは女郎屋じゃないのよ!」と言ったりします。

※以下の文章では、作品の結末に軽く触れています。

 さて前の段落で「設定はおそらく現代のはず」と書きましたが、これはひとえにレイカのキャラクターからの推測。
 彼女、最初は真二の白黒ショーの相手役を務めていたものの、ちゃっかり金を持ち逃げし、でも一応反省して謝罪しようと、真二が居そうな場所(花枝が飯盛り女として働いている飯場)にやってきます。しかし既に真二は旅立ったあと。するとレイカ、男たちに交じって工事現場で肉体労働を始めるのですが、しだいに別の意味での肉体労働にいそしむようになり。そんな彼女の口癖は、「ってゆうか~」と「レイカ的には~」。
 そう、彼女、かなりギャルっぽい。しかし後半のあるシーンで、意外な面が明らかになります。どうやらセックスに関して辛い過去があるらしく、「男なんてみんなヤルことしか考えてない!」「あたし1度もセックスでイッたこと無い!」と号泣。ちょっとしんみり(でも結局はまた嬉しそうに男に向かっていくのであった)。
 
 意外といえば、花枝にも少々意外な面が。彼女、基本的にはしっかり者かつ働き者。「この職場では禁欲する」と公言し、セクハラしてくる男たちを軽くいなしながら、テキパキと仕事をこなします。しかしレイカの誘惑には負けてしまい、レズ行為にどっぷりハマることに(でも結局はレイカと別れるのであった)。
  
 アッケラカンとしたギャルにも少しだけ暗い部分があり、それでもやっぱりアッケラカンとしている。しっかりした姉さんキャラにも少しだけ脆い(いい加減な?)部分があり、それでもやっぱりしっかりしている。この人物造形の微妙さ、なかなか秀逸だと思います。ずっと同じ性質であり続けるのでもなく、途中から別人のように変わるのでもなく、かすかに揺れ動いているような描き方が、人物に奥行きを与えているというか。

 不思議なレトロ趣味も面白かったし、人物造形にも好感が持てたので、荒木監督&内藤忠司(脚本)コンビによる他の作品も、機会があればぜひ観てみたいです。ちなみに、これはかなり知られた話ですが、内藤氏はかつて大林宣彦監督のもとで助監督をしていた方で、『さびしんぼう』などの脚本にも参加しています。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

最新記事
カテゴリー
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

ブログ内検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
RSSフィード
リンク