『東京ギャング対香港ギャング』

1964年 日本 監督・脚本:石井輝男 脚本:村尾昭 出演:鶴田浩二、高倉健、丹波哲郎、内田良平、安部徹、待田京介、八名信夫、高見理紗、三田佳子

 先週、新文芸坐の健さん特集にて『ならず者』と2本立てで鑑賞。『ならず者』と同じく、香港とマカオで海外ロケを行ったギャング映画。
 
 とにかく上映プリントの変色っぷりが凄かったです。カラー映画のプリントが古くなると赤茶色っぽくなる場合がある、ということは知っていたし、実際にそうなっている作品を観たこともありますが、今回は「赤茶色っぽい」どころではなく「あまりにも赤茶色」。まるでモノクロ映像の黒やグレーの部分が全て赤茶色になったような、と言えば分かっていただけるでしょうか。
 そんなわけで、さすがに観づらかったし、特に細かい部分はよく見えなかったので、作品内容については、あまり書かないでおきます。
 
 ちなみに『ならず者』は、これと同じ年に同じ会社(東映)で製作された作品ですが、多少音声が途切れていたものの、映像はわりと良好でした。この違いは何なのかなあ。上映回数の違いか、保管方法の違いか。はたまた『ならず者』の方だけ、あとでニュープリントが作られたのか。(私にはこのあたりの専門知識が無いため、詳しいことは分かりません。ご了承ください。)

 ところでこの『東京ギャング~』と『ならず者』は、ロケ地や封切時期や製作会社のみならず、監督・出演者などあらゆる面でやたらと共通点が多いので、もしかしたら2本同時に撮影したのかも、と思っていたのですが。調べてみると、そうではありませんでした。
 
 石井監督のインタビュー本『石井輝男映画魂』(ワイズ出版)によると、製作順は『東京ギャング~』の方が先で、まず『東京ギャング~』を低予算で作ったところ、ある程度ヒットしたので、次に予算を増やして『ならず者』を作ることになったそうです。だから『東京ギャング~』の時は撮影期間が短かったり、海外のロケ地で隠し撮りをする羽目になったり(正式に撮影を申請するとお金がかかる)、とにかく色々と大変で、それに比べると『ならず者』は楽だったとか。
 そういえば同じ香港ロケと言っても、『東京ギャング~』ではスラム街が延々と映っていたのに対し、『ならず者』ではそういう地域とともに観光地的な場所もかなり映っていたような。これってやはり、「無許可の隠し撮り」と「正式に申請した上での撮影」の違いなのでしょうか。

 それと『東京ギャング~』は、序盤は健さんが主演(鶴田浩二は全く出てこない)、中盤以降は鶴田浩二が主演(健さんは全く出てこない)、という奇妙な構成になっているので、もしかしたらスケジュールの都合か何かで2人が一緒に参加できなかったのかも、と推測したわけですが。またしてもハズレでした。
 
 先述の『石井輝男映画魂』によると、特にその種の事情は無かった模様。そして石井監督は、脚本を色々書き直しているうちにああいう構成になってしまった‥‥というようなことを仰っています。ただこの発言自体は、ちょっと遠慮がちなのでは。
 というのも、この本を読んだ誰もが感じると思うのですが、石井監督は鶴田氏のことをやや嫌っていたようなのです。で、健さんのことは非常に気に入っていた。そしてこの映画のオープニング・クレジットでは、鶴田氏の名前が最初に単独で出てくる。つまり、会社側はあくまでも「鶴田浩二の主演映画」として企画したのに、石井監督はやはり健さんをメインで撮りたくて、その妥協点を探るうちに(?)ああいう構成になったんじゃないでしょうか。もちろん私の勝手な推測ですけど。
 
 そういえば映画の中で、鶴田氏扮する男がヤクの禁断症状でのたうち回る場面と、ケバいお姉ちゃんがエロいダンスをしている場面とが、なぜか執拗にカットバックされていました。この2人の登場人物は何の接点も無いので、恐らくイメージ描写(?)なのでしょう。いかにも石井監督らしい奇抜な演出。とはいえ、男がヤク中であることがその場面で唐突に明かされたり、のたうち回る姿が実に情けない感じで映っていたり、なんというか、監督の鶴田氏に対する悪意が滲み出ているような気も‥‥。
 
 というわけで今回は、変色により画面が観づらかったため、作品の内容よりも裏側について、色々と書き連ねてみました。たまにはこういう文章もいいんじゃないの? と寛大な心で許していただければ、ありがたいです。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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