『坊さんが屁こいた』

1993年 日本 監督・脚本:瀬々敬久 出演:佐野和宏、下元史朗、小川真美

 前回の記事で瀬々敬久監督に少し触れたところ、ちょうど先日、瀬々作品の中で未見だった映画を観る機会がありました。『坊さんが屁こいた』という作品です。封切り時のタイトルは『好色エロ坊主/未亡人 初七日の悶え』。ピンク映画です。
 
 ちなみに主演の佐野和宏氏は私の好きな俳優さんで、共演の下元史朗氏も魅力的な名優。となると、観た後はきっとこの2人の姿が心に焼きついているんだろうな~と思っていたのですが、その予想は外れてしまいました。名優たちを喰ってしまったのは、浅草の風景です。
 瀬々監督の映画において風景が重要な位置を占めることは、前回の記事でチラリと触れたとおり。しかしこの作品では「重要な位置を占める」どころではなく、「風景が主役」と言ってもいいほど鮮烈でした。映画の内容として、「再開発」や「立ち退き」が題材になっていることも関係しているのでしょう。
 
 昔ながらの風情を残す街、浅草。しかしここにも再開発の波は押し寄せていました。古い住宅や店舗は次々と壊され、更地になっていきます。そしてこの再開発の裏に潜む陰謀をめぐって、美しき未亡人が苦境に陥ったとき、彼女を救うためエロ坊主が立ち上がります。

 さきほど「風景が主役」と書きましたが、この映画には、浅草のさまざまな風景が詰まっています。浅草寺・花やしき・フランス座などの名所から、小さな建物が軒を連ねる路地まで。また、主人公がお坊さんなので墓地なども登場します。
 しかも、それら制作当時(93年)に撮影されたカラー映像の合間に、大昔のモノクロの記録映像や写真が頻繁に挿入されています。例えば、戦前に「ハイカラ」な街として栄えた頃の浅草。そして、関東大震災で壊滅状態になった頃の浅草。ひとつの街の歴史と変遷が、鮮やかに浮かび上がってきます。
 人間が街を造る→震災による崩壊→復興へ→戦争による破壊→懸命な復興→再開発としての破壊。人間によって産み出された街という生き物が、人間と自然に翻弄され続ける。そんな感慨を強く抱きました。 

 ところでこの映画のオープニング・クレジットには「協力」として、花やしきなどいくつかの施設名や団体名が並んでいます。普通、成人映画は内容が内容だけに、許可が下りずゲリラ撮影になる場合が多いのですが、浅草の皆さんは許可してくださったということなのでしょうか。
 特に気になったのは、花やしきの観覧車の中でホームレスのおっさんと家出娘がセックスするシーン。これ、花やしき側は内容を知った上でOKしてくれたんでしょうか。もしそうだとしたら、寛大だなあ~。こういうシーンがあってこそ、独特の情緒(?)が漂ってくるのです。
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サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
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