『若葉学園 チェリーボーイズ』

2009年 日本 監督:城定秀夫 脚本:小松公典、城定秀夫 出演:次原かな、榊原順、吉川けんじ、松浦祐也、大友さゆり、吉岡睦雄、森羅万象、金原亭世之介
DVD(セルとレンタルの両方)あり

 昨年の初め頃にも城定監督のOVについて書き、今年も同じく。といっても、狙ったわけではありません。たまたま、「年末に城定OVを観る→よかった!→年始に書く」というパターンが、2年続きました。

 童貞高校生で眼鏡男子の守(榊原順)は、海辺で可愛い女子(次原かな)のパンチラを目撃し、彼女にひと目ぼれ。数日後、守のクラスに転校生が。名前は八神明日香。あの海辺の女子だ! やったぜ!
 とまあ非常にベタな展開の学園青春モノ。しかしですね。基本的な部分はたしかにベタなんですが、細部に色々と工夫が凝らされていて、このジャンルの作品としてはかなり見応えがありました。

 まず冒頭の、守と明日香が出会うシーン。さきほど彼らの外見について、単に「眼鏡男子」「可愛い女子」と書きましたが、実はこの2人、ちょっと変わった格好で登場するのです。それは、着物と猫耳。
 守は大の落語好きという設定で、このシーンでは、学校の制服の上に着物を羽織って落語の練習をしています。そして明日香は大のコスプレ好き。猫耳&ミニドレスで猫ちゃんになりきっています。つまり海辺に、着物を羽織った少年と猫耳を付けた少女。絵的になかなか面白いです。
 しかも守が練習している演目は、古典落語の「猫の皿」。噺の題材とコスプレのキャラが重なっていて、その点でも面白いです。また、「猫の皿」と明日香の猫耳コスプレ姿は作品の終盤まで何度か登場するのですが、これは、一貫して描かれる明日香の猫っぽい性格(気が強く、守の思い通りにはならない)とも微妙に重なっていて、この構成も上手い。

 撮り方も上手いというか凝っていて、例えば、明日香と照美(大友さゆり)、祐也(吉川けんじ)と隆明(松浦祐也)の2組が、それぞれ海辺で語り合うシーン。
 照美は明日香たちのクラスメイトで、コスプレをするとそのコスチュームの人格になってしまうという特異体質の持ち主。そのせいで大好きなコスプレにも臆病になっていて、友達もいなかったのですが、明日香から「(その体質は)すごい才能」と褒められ、2人は仲良くなります。
 いっぽう祐也と隆明は、守の悪友。彼らは3人とも童貞なわけですが、落語好きの守とは違い、祐也と隆明は常にセックスのことばかり考えていて、この時も、俺たち早く童貞脱出しようぜ! てな調子で改めて意気投合。

 で、注目すべきは、このシーンの構図。まず画面の手前の方で、明日香と照美が砂の上に座ったまま語り合っていて、会話が終わりかけた頃、奥の方に小さく祐也と隆明の歩く姿が写ります。ここまでがワンカット。そしてカットが変わり、今度は手前で祐也と隆明が語り合い、奥の方に小さく明日香と照美の歩く姿が写ります。こちらもワンカット。
 先ほども書いたように、祐也と隆明の会話はひたすら童貞云々という内容なのですが、そのとき奥に小さく写っている女子たちは、明日香が照美のスカートに付いた砂を払ってあげたりと、非常に爽やかな雰囲気。また、2組の会話の両方ともに「自分に正直になろう」という言葉が出てくるのですが、言葉は同じでも、当然、意味というかニュアンスはやや違うわけで。
 このように、映像と台詞の両面で2組をうまく対比させながら同時に描いているので、観ているこちらとしては、「あれも友情、これも友情」とでも呟きたくなるような、ある種しみじみした気持ちになりました。その意味で、とても印象深いシーン。
 
 とにかくこの作品、全体的に工夫と丁寧さがあり、感心しました。OVの少ない予算と時間の枠内でここまでやるのは、難しいことなんじゃないでしょうか。

 ではオマケとして、『ラーメン必見伝』の時と同じく吉岡睦雄について書いておきます。今回、改めて気付いたことがあるので。
 彼、声が独特ですね。成人男性としては、非常に甲高い。もちろん今回はコミカルな先生の役なので、わざと極端に高い変な声を出しているのでしょうが、考えてみると、シリアスな役の時もけっこう声が高かったような‥‥。なんというか、喉や腹ではなく、額から出ているような素っ頓狂な声。いずれにせよ吉岡氏、面白い役者さんです。
 
 ちなみに主演の榊原順くんに関しても、ちょっと気付いたことが。彼、劇中ではずっと眼鏡をかけているものの、メイキングでは眼鏡ナシの素顔を見せていて、この素顔がですね、岡田智宏に似てるんですよ。いつか2人で兄弟の役を演ってほしい‥‥って、前にも岡田氏について似たようなことを書いたなあ

 最後に。この作品のギャグ、全体的にかなり私好みです。特に、隆明の恋にまつわるギャグでは2回、爆笑しました(このあたりは小松さんのアイデアじゃないかと推測してるんですが、どうなんでしょう?)。詳しくは書きませんので、興味のある方はぜひ作品をご覧になってください。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
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