『たぶん』

(成人映画館での公開タイトルは『いとこ白書 うずく淫乱熱』)
2009年 日本 監督:竹洞哲也 脚本:小松公典、山口大輔 出演:赤西涼、かすみ果穂、倖田李梨、吉岡睦雄、岡田智宏、久保田泰也、サーモン鮭山、なかみつせいじ

 4日前に、ポレポレ東中野での特集上映「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE vol.7」にて鑑賞。
 以前、雑誌やネットでこの作品について、「青春映画」「さわやかな作品」と書かれているのを何度か目にし、そういうイメージを持っていたのですが、実際に観てみると、かなり違った印象を受けました。なんというか、「一見、青春を描いているようで、実は“青春の後”を描いている映画」。そして、「一見さわやかなようで、実は底の方に悲しいものが流れている映画」。

 しかし、それは単なる私の思い過ごしなのかもしれません。というのも、劇中のいくつかの台詞が、かつて自分の身近な人が発した印象的な言葉とソックリだったりして、観ている最中に、やや動揺しながら実人生のあれこれに思いを馳せてしまったので、作品を正確に把握していないというか、自分に引きつけて脳内変換している可能性があるのです。
 だから本当は、もう一度観てから書きたい。でもしばらくその機会は無さそうなので、いちおう記録として、現時点で考えたことを書いておきます。
 またそういうわけで、以下に記した台詞なども、細かい部分が正確でないかもしれません。ご了承ください。

 仲の良いイトコ同士で、二十歳前後のさくら(赤西涼)ともみじ(かすみ果穂)。彼女たちが、恋やセックスに悩み、揺れる。短く要約すると、そういうストーリー。もちろん主人公は、その2人の女の子です。
 しかし私の心に強く残ったのは、前半にしか登場しない昌美(倖田李梨)。「さくらの高校時代の恩師で、良き相談相手」という設定なのですが、とにかくこの30代と思しき昌美さんの台詞、いちいちグッときました。

 例えば彼女が、こんな風なことを言います。「大人になったら何でもテキパキ決断できるようになると思っていたのに、大人になるにつれて、決断できないことが増えてしまった」。
 これ、私がトシくってから常に痛感していることでもあり、数年前に私の故郷の友人が、非常にしみじみした口調で語った言葉でもあります。ちょっとビックリしました。
 
 それと、こちらは身近な誰かが言ったとかではなく、映画の台詞として、とてもいいな~と思ったもの。辞職&結婚を後悔し迷っているらしい昌美と、さくらとの会話。
 さくら「離婚すれば?」 
 昌美「する理由が無い」 
 さくら「理由を探せば?」 
 昌美「見つける自信が無い」
 この場合は「離婚」ですけど、逆に「結婚」でも、あるいは「転職」でも「上京」でも、いろいろ応用可能というか。とにかく、もう若くはない人間が何かに踏み出したいけど踏み出せない、そんな臆病でもあり慎重でもあるようなグジャグジャした気持ちを、短い言葉で的確に表現した、味わい深い台詞だと思います。

 そしてこの昌美という人物、前半にはけっこう登場するものの、(さきほど述べたように)後半には登場しません。彼女の迷いがその後どうなったのかも、描かれません。まあ、あくまでも若い子たちがメインなわけで、昌美の描き方に特別な意味など無いのかもしれませんが、それでも私は、勝手に意味付けしてみました。
 つまり最終的に、昌美がさくらに乗り移った。というか、さくらが昌美になったんじゃないかと。

※以下の文章では、作品の結末に少し触れています。

 序盤から中盤にかけて、若いさくらは昌美の言動にあまり納得できず、「たぶん」という言葉に象徴される、大人たちのハッキリ言いきらない感じやグジャグジャした感じに、違和感を抱いています。
 しかし終盤での、少し歳をとったさくらは、「たぶん」的なものを身につけ始めている(ように見える)。そしてそういう点で、「さくらが昌美になった」。

 これは私の妄想ですが‥‥きっと、そんなさくらに接した若い子は、かつてさくらが大人に抱いたような違和感を抱き、それでもやがて歳をとって、自分自身が「たぶん」的なものを身につけてしまい、そしてさらに若い子が‥‥と、同じことが永遠に繰り返されていくのでしょう。
 この映画、富士山麓の小さな町が舞台になっていて、全編(終盤も)現地で撮影されているので、よけいにそういう、「狭い場所で延々と同じことが繰り返されていきそうな感」が強い。

 ラストの、さくらともみじが仲良く自転車で駆け抜けていく姿と、そこに流れる楽しげな主題歌。これは、「さわやかで前向きなラストシーン」なのかもしれません。
 しかし私には、「過ぎてしまえば二度と戻らない“非・たぶん”な頃への鎮魂歌」のように思えてきて、一瞬、胸が詰まりました。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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