『恋味うどん エピソード0』

(成人映画館での公開タイトル:『桃肌女将のねばり味』)
2007年 日本 監督:竹洞哲也 脚本:当方ボーカル(小松公典) 出演:沢井真帆、松浦祐也、吉岡睦雄、倖田李梨、青山えりな、岡田智宏、なかみつせいじ

 2日前、上野オークラ劇場にて鑑賞。
 この作品、いちおう楽しく観たものの、細部に矛盾が多く、それらがどうしても気になりました。しかも、「ただの矛盾ではなく実は大きな意味がある」と受け取ることも可能なので、最終的にはその方向で考えて、自分なりの大胆な(?)解釈に行き着きました。
 といっても、べつに難しい映画ではないんですヨ。私が細部にこだわりすぎているだけです、多分。まあ、このブログをずっと読んでくださっている方ならお分かりのとおり、私は映画を観て違和感を持った場合、小姑の小言のように細かいことをネチネチあげつらう癖があり、今回もズバリそれなんですね。

 さてこの映画、原題からも分かるように、『恋味うどん』(2006)の過去パートというか。主人公・一義の、青年時代をメインにした作品です。

※以下の文章では、作品の終盤に触れています。

 若き日の一義(松浦祐也)は、うどん職人としての修行のため全国を放浪していた。ある村で、理想のうどんに出会った彼。さっそく、そのうどんを作った信介(吉岡睦雄)に弟子入りする。
 信介は、若女将の秀子(沢井真帆)が切り盛りする、民宿兼うどん屋の料理人。信介と秀子は思春期の頃から仲が良く、かつては村の誰もが、2人は結婚すると思っていた。だが秀子の父の死がキッカケで、2人の仲はギクシャクしはじめ、その状態が今も続いていた。
 事情を知った一義は、彼らのために一肌脱ぎ、ついに信介と秀子は、互いの気持ちを確かめるように肌を重ねるのだった。

 とまあ、以上のような内容が、この映画のメイン部分。現在の一義(なかみつせいじ)が、娘の幸(青山えりな)に若き日の思い出を語って聞かせる‥という形で描かれます。つまりこのメイン部分は、「一義が語った思い出話を映像化したもの」というわけ。
 しかしですね‥‥そのわりには、「一義がその場に居合わせてないシーン」が、けっこうあるんですよ。

 例えば、信介と秀子が厨房で2人きりになり、気まずさに耐えられなくなった信介が、そそくさと買い出しに行くシーン。あるいは、自室でひとりで寝ている秀子が、しだいに自慰行為に耽っていくシーン。さらにクライマックスの、一義が去った後の民宿で信介と秀子がセックスするシーン、などなど。
 つまり、「一義が実際に見ていない(はずの)出来事」が、次々に描かれるわけです。
 
 といっても、これらを理詰めで説明するのは可能。例えばそういうシーンについて、「一義の妄想だ」とか「一義があとで秀子たちから聞いた話だ」とか、いくつかの理由は成り立ちます。 
 だから、少しでいいから、幸が一義にツッコむ描写を入れてほしかったですね。「お父さん、その場にいなかったのに、なんで分かるの?」てな感じで。それに対して一義が、「デへへ~、実はここは俺の妄想なんだよ」とか何とか答える。そうすれば、とりあえず辻褄は合います。

 でも、こうして考えているうちに‥‥私、作品全体に対するやや大胆な解釈を思いつきました。それは、一義のこの思い出話はほとんどがホラ話である、という解釈。
 
 そもそも。作品の序盤で、現在の一義のところに、信介と秀子から「自分たちの子供が結婚することになった」という手紙が届くので、信介と秀子が若いうちに結婚したのは(おそらく)本当なわけですが、極端な話、それ以外は本当かどうか分からないわけで。
 例えば、実は2人にはギクシャクしていた時期などなく、ずっと仲が良くてそのまま結婚しただけなのに、一義が自分のおかげで結婚できたように話を作っている‥‥とか。まあ他にもいろんなパターンが考えられますが、とにかく、かなりの部分がホラである可能性はわりと高い。

 というのも、一義の思い出話には、先に述べたような矛盾点だけでなく、別の意味での矛盾点もあって、なんか全体的に嘘っぽいんですよ。
 その「別の意味での矛盾点」とは、一義と秀子が風呂場で関係を持ってしまうシーン。このとき秀子はかなり積極的で、つまり彼女の方から誘ったと。これ、ちょっと理解しづらい。
 や、秀子が信介のことで悩んでヤケになったとか、信介に対するあてつけでやったとか、いろんな見方は出来ますよ。しかしそれにしても、途中までならともかく最後までやってしまうというのは、どうにも不可解。つまりこのシーンも、一義の妄想(ホラ話)に見えなくもない。

 さらに、(現在の一義を演じる)なかみつせいじ氏の演技も、「一義=ホラ吹き」な感じを強めているというか。不思議なことに、なかみつ氏、前作(『恋味うどん』)と同じ役なのに、なぜか演じ方が違うんですよ。前作では、常に真面目で頑固一徹な雰囲気を醸し出していたのに、今回は、妙に軽くてお茶目。
 つまり前作での一義のキャラなら、ホラ話など一切しない感じなのですが、今回のキャラだと、いくらでもしそうな感じ。それゆえ(今回の)幸は、父の思い出話のほとんどがホラだと思っていて、だからこそツッコミ入れずに笑顔で聞いてあげている、と。

 あ~、こういう風に解釈すると、かなり別の映画になるなあ。でも私としては、これはこれで、けっこうイイ話だと思うんですけど。
 ただまあ、作り手の方たちからは、「へんな解釈するな!」と怒られるかもしれませんね。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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