『囚われの淫獣』

(上記のタイトルは公開題。原題は特に無い模様。)
2011年 日本 監督・脚本:友松直之 出演:柚本紗希、倖田李梨、若林美保、藤田浩、津田篤、如春
○全国の成人映画館で順次上映中

 1ヶ月半ほど前に、上野オークラ劇場にて鑑賞。その直後に忙しくなったりして、しばらくブログから離れていたので、書くのが遅くなってしまいました。
 つまり観てからかなり日が経っているわけですが、では現時点で、この作品のどこがいちばん印象に残っているかというと、終盤の、津田さん演じるタナカくんの選択(運命?)だったりします。これについては、あとで述べます。

 まずこの作品のストーリーは、「ピンク映画の観客たちが劇場に閉じ込められ、しだいに彼らの欲望が露わになっていき‥‥」というもの。ジャンルとしては、メタ映画(映画の中で映画を語る)の側面が大いにあり、作品の中で、「ピンク映画とは」「成人映画館とは」といったことがバンバン語られます。
 
 この語られる内容というのが、ピンク映画ファンに対して批判的というか、手厳しいというか。特に、女性のピンク映画ファンに対しては、手厳しいのを超えて「ヒドい」までいっているかも。
 例えば、「ピンク映画館に女が来るのは、男性専用車両に女が乗り込むのと同じ。痴漢されてもレイプされても文句は言えない」とか。しかもこれ、セリフとして発せられるだけではなく実際に、ピンク映画館に来ている女性がレイプされるシーンもあります(夢か現実か分からない、という設定ではありますが)。

 こうなると、「女性のピンク映画ファン」である私は、キーッと怒るべきなのかもしれません。しかし残念ながら(?)、腹は立たないんですよね。苦笑はしますけど。
 この映画に限らず、友松監督はブログなどで、女性のピンク映画ファンや女性全体に対して、かなり辛辣なことを繰り返し述べているのですが、私は彼のそういう主張に対し、共感はしないものの、反感も持ってないのです。
 
 なんというか‥‥どんなに辛辣なことが主張されていても、それは主張である以上に、問題提議としてこちらに迫って来るんですよ。「俺はこう思う!」ではなく、「皆はどうなんだ?」と、揺さぶりをかけてくる感じ。
 今回も、先に述べたようなセリフやシーンがあって、それを観た私がどう思ったかというと‥‥「それでも私はやっぱりピンク映画館に行く」。実際、この作品を観た後も、また上野オークラに行ったし。まあ結局のところ、自分がどうしたいかということを、しっかりと再確認させてもらったわけです。
 
 ところで最初に書いたように、私がこの映画でいちばん印象に残ったのは、終盤でのタナカくん。

※以下の文章では、作品の結末に触れています。
 
 タナカくんは、スクリーンに映る幻の女に恋をしたあげく、現実を捨て、スクリーンの中の世界へ行ってしまいます。彼にとって、現実も、現実の女も、耐え難いものだった。だから幻想の世界へ行く。
 この「現実より幻想を選ぶ」ということも、友松監督の作品で、繰り返し描かれている要素です。そして監督はその要素を、特に悲しいこととして描くわけでもなく、ことさらに美化するわけでもない。まるで当然のことのように描いています。

 私が、友松監督のある面に苦笑しつつも、彼の作品や言動に注目しているのは、このあたりに原因があるのかもしれません。つまり、この件については、かなり共感しているのです。私の中には、「現実より幻想を選ぶ」ということに対して、「それもアリだろう」という思いがある。
 現時点で、自分自身がそういう選択をしたいわけではないのですが、だからといって、そういう選択をする人を否定したくないし、否定できない。悲惨なことだとも思わない。
 
 今回の作品では、自分の中にあるこういう傾向も、再確認させてもらいました。
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サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
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