『春の夢』

ボンクラ3人組


2016年  韓国  監督・脚本:チャン・リュル  出演:ハン・イェリ、ヤン・イクチュン、ユン・ジョンビン、パク・チョンボム
※シネマート新宿&心斎橋で開催されている「ハート アンド ハーツ コリアン・フィルムウィーク」にて上映中。他の地域でも順次公開予定。
「ハート アンド…」の公式サイト→http://www.koreanfilmweek.com/


ソウルの場末で居酒屋を営む女と、その店に入り浸る3人のさえない男たち。
なんだかんだ言いつつ仲の良い彼ら4人が、ぶらぶらと過ごす日々を、モノクロの映像で描いた映画。
というだけでは、ない。

彼らにはそれぞれ事情がある。
居酒屋の女イェリは、中国の朝鮮族自治州からやってきた。仕事だけでなく父親の介護もしている。
チンピラのイクチュンには身寄りがない。施設で育った。
大家のジョンビン。そこそこ裕福だが、持病があって体が弱い。
脱北者のチョンボム。ろくに給料も貰えないまま、勤め先をクビになってしまった。

監督のチャン・リュルは中国出身で、以前から中国の朝鮮族を映画で描き続けている。
チョンボム役のパク・チョンボムは、かつて脱北青年が主人公の映画『ムサン日記』を、自ら監督・主演して作った。
おそらくはこの2人の思いが重なって、上記のような設定になったのだろう。

しかしこの作品、いわゆる社会派映画というわけでも、ない。
たしかに、差別や貧しさや人生の上手くいかなさ…といったものが、確実に底に流れてはいるのだが、多くの場面では、ひたすら4人が呑んだり遊んだりしている。
しかもその姿が、けっこうコミカルなのだ。

特にヤン・イクチュン。
本人が監督・主演の『息もできない』では、非常に暴力的なチンピラを見事に演じていたが、今回は同じチンピラでもかなりキャラが違っていて、なんというか、観ていていちいち「プッ」と笑ってしまうような役柄&芝居。
伸ばしっぱなしの長髪に派手な柄シャツ、太すぎるズボン…という絶妙にダサいファッションも、たまらん。
市場で、全ての店の人に話しかけながら少しずつツマミ食いして食事をタダで済ませる姿とか、やることなすこと、ダメダメだけど微笑ましい。

そして上のイラストに書き添えたように、3人組を演じているのは全員、映画監督なのだが、残りの1人、ユン・ジョンビンはというと。
彼自身は、『悪いやつら』や『群盗』など人気スターの主演作も撮っている、なかなかの売れっ子監督。
インタビュー時の撮影で、デカいグラサンをかけてビシッとポーズをとるような人なのだが、この映画では、おかっぱ頭に地味~な服を着て、ヌボ~っとした男になりきっている。

そういえば、この「実は監督」な3人が映画について喋るシーンがあって。
そこで話題になるのがジャッキー・チェンの『酔拳』というのも、なんか、いいんだよなあ。

そしてこの映画、ちょっと不思議な終わり方をする。
人によって解釈が分かれるだろう。
「ワケわからん!」と怒る人もいるかもしれない。
でもまあ、『春の夢』というタイトルなんだし(原題も)、辻褄が合わなくても、ちょっと奇妙でも、いいじゃないですか、夢なんだから。
と、かばいたくなる。

たぶん私はけっこう好きなのだ、この映画。
登場人物たちが、いつまでも心の隅のほうに残りそうな気がする。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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