ベラベラ喋る謎の男

 前回の『競輪上人行状記』の記事で小沢昭一のことを書いていて思い出したのですが、彼の持ち歌で『父ちゃん音頭』というのがあります。中高年男性の悲哀を楽しく表現した歌で、サビの部分の歌詞は、「♪ああ前立腺肥大症~」。
 私はこの歌の存在を、『伊集院光 日曜日の秘密基地』というラジオ番組で知りました。この番組では時々、「おバ歌謡」(おバカな歌謡曲)の特集をやっていて、その中で紹介されていたのです。伊集院氏は小沢氏をとても尊敬しているらしく、歌の解説をしながら小沢氏を激賞していました。
 
 まあ『日曜日の秘密基地』は、『小沢昭一の小沢昭一的こころ』と同じ局(TBSラジオ)の番組なので、その激賞には社交辞令的な意味合いも含まれていたでしょう。しかしやはり、そういうことだけではないような気がします。
 なぜなら、この世代も外見も全く異なる2人には、芸人としての基盤の部分で非常に大きな共通点があるからです。それは、本格的に落語の勉強をしているということ。小沢氏は若い頃からずっと落語の研究を続けている方ですし、伊集院氏は元落語家(三遊亭楽太郎の弟子)です。
 
 私はラジオが好きで、特に伊集院氏の番組のファンなのですが、そうなったのは随分前にたまたま彼の「2時間ひとり喋り」を聴いたのがキッカケ。ある日眠れずに枕元のラジオをつけると、ちょうど『伊集院光 深夜の馬鹿力』という番組が始まったところで、何となく聴いているうちに、どんどん引き込まれていきました。
 内容は、彼が仲間たちと決行した「日本最北端のエロ本自販機を探す旅」の様子をひたすら語る‥というもの。CMをはさみながらではありますが、約2時間、彼が1人で喋り続けました。
 
 実は私はその日、体調が悪くてかなり苦しかったのですが、気がつくと番組を聴きながらゲラゲラ笑っていました。そして笑うと同時に「この人、凄いな」と感心しました。
 彼の存在自体はそれ以前から知っていたのですが、こんなに喋りが巧いとは知らなかったのです。しかも掛け合いではなく1人でこれだけ長時間というのは只者ではないな、と。だから後に彼が落語家出身と知った時は、深く納得しました。「独りで語る」ということに関して厳しい修業を積んだ人でないと、なかなかああいう喋りは出来ないと思います。
 
 ちなみに『深夜の馬鹿力』は、毎回そういうスタイルで進行するわけではありません。通常は、まず冒頭で伊集院氏の長めの喋りがあって、その後はいろいろなコーナーに分かれており、リスナーのハガキ紹介の時間も多いです(最近あまり聴けてないので断言は出来ませんが)。また、内容的には『日曜日の秘密基地』は一般向けで、『深夜の馬鹿力』はかなりマニアックです。
 
 ところで、彼は小沢氏と違って本業が俳優ではないので、映画には少ししか出ていません。今後も多分あまり出ないでしょう。ラジオなどで活躍すべき人なので、それでいいと思います。ただ私の個人的な希望として、今後もし映画に出演する場合は、語りの巧さが重視される役で出てほしいです。思い切って、あの独特の容姿を封印してみるのも面白いかもしれません。例えば、彼はデヴィッド・リンチの映画が好きなので、ああいう奇妙かつ不可思議な作品のなかで殆ど姿を見せないままベラベラ喋り続ける謎の男とか、どうでしょうか。

※追記‥‥『伊集院光 日曜日の秘密基地』は、2008年3月末で終了しました。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
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