『洲崎パラダイス 赤信号』

1956年 日本 監督:川島雄三 脚本:井出俊郎、寺田信義 出演:新珠三千代、三橋達也、轟夕起子、芦川いづみ、河津清三郎、植村謙二郎 津田朝子、隅田恵子

 久しぶりに観直したくなって、DVDにて鑑賞。
 「洲崎パラダイス」とは、かつて東京・洲崎(現在の江東区東陽あたり)に実在した遊郭の名前。この映画は、売春防止法が施行される少し前の洲崎を舞台に、遊郭入口の飲み屋に集う人々の人間模様を描いています。
 かなりアッサリした薄味の映画で、私の場合、基本的にそういう映画にはあまり魅力を感じないはずなのに、不思議とこの作品には惹かれるのです。理由は多分、女性の描き方に好感が持てるから。

 まず、登場する女性たちのキャラクターが見事にバラバラであるところがいいです。
 ざっと列記してみると‥‥元娼婦の蔦枝は美人で色っぽく、何事にも積極的。蔦枝が働く飲み屋の女将さん・お徳は、地味でさっぱりした肝っ玉母さんといった感じ。近所の蕎麦屋で働く玉子は、若くてシッカリ者でそのうえ美人なのに、恋愛や男性にはさほど興味が無い様子。純情青年に愛されている娼婦の初江は、田舎っぽい素朴な雰囲気の少女。そしてお徳の夫の愛人は、恋愛にのめり込み過ぎている破滅型の女。    
 
 他にも、ストーリーには直接関係しないチラッと出てくるだけの女性たちが何人か居て、彼女たちも実にしっかりと描き分けられています。また、出演している女優さんたちの容姿も見事にバラバラで、例えば同じ美人と言っても、蔦枝役の新珠三千代と玉子役の芦川いづみは全く顔立ちが違うし、主役級から小さな役に至るまで、それぞれに特徴のある人がズラリと揃っています。
 
 とにかく約80分という短い上映時間の、ごく狭い地域だけを舞台にした映画で、これだけいろんなタイプの女性が鮮やかに存在しているのは、観ていて心地いいです。しかも先ほど書いたキャラクター説明はやや大雑把なもので、実際の人物造形はもう少し複雑。
 例えば蔦枝は一見、非常にちゃっかりした女で、甲斐性のない若い恋人を捨てて小金持ちの中年男にサッと乗り換えたりするのですが、最終的には決して「ちゃっかりしている」とは言えない選択をします。またお徳は、外見を飾ることに全く興味が無いような女性ですが、愛人と駆け落ちしていた夫が戻ってくると、少し化粧をするようになります。さらに素朴なはずの初江は、最後に謎めいた行動を取って青年を混乱させます。

 当然のことですが、ひと口に女と言ってもいろんなタイプの人が居るし、ひとりの女性の中にもいろんな面があるわけで。それを淡々と実感させてくれる‥という点で、私はこの映画が好きです。別の言い方をすると、「女は○○だ」と決めつけている映画は苦手なんですよ。その意味で、「女性は素晴らしい」的な感覚を前面に出している、女性賛歌のような映画も苦手です。
 
 ちなみに三池崇史やジョニー・トーなど、あくまでも男がメインで、ハナから女をきちんと描く気など無いゼ! という(風に見える)監督の映画は、いっそ清々しいと思います。けっこう好きです。妙な思い入れを持って描かれるよりも、最初から外されている方がいいですし。それと私を含め、「“男の世界”をビシッと描いた映画も好き!」という女性は、わりと多いような気がします。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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