『バニシング・ポイント』

1971年 アメリカ 監督:リチャード・C・サラフィアン 脚本:ギレルモ・ケイン 出演:バリー・ニューマン、クリーヴォン・リトル

 『デス・プルーフ inグラインドハウス』がきっかけで、久しぶりに昔のカー・アクション映画を観たくなりました。そこで、劇中のセリフにも出てきた『バニシング・ポイント』をDVDにて鑑賞。
 
 車の陸送を生業としているコワルスキー。彼はバーの店主と、「デンバーからサンフランシスコまで15時間で陸送する」という賭けをし、警察の追跡を振り切って猛スピードで走り続けます。盲目のDJ・スーパーソウルの協力もあり、順調に目的地へ近づいていくのですが、やがて警察の作戦も巧妙化していき‥‥。

 激しいカー・チェイスの連続。しかし撮り方や演出は非常に淡々としています。基本的に引きの画が多く、カット数も少なめ。いろいろな角度から寄りで撮って細かく編集すれば躍動感が生まれるのに、敢えてその逆を行っているのです。危険でスリリングなチェイスを、「何でもないこと」のように映し出すというか。その映像には、独特の寂寥感が漂っています。
 
 これは主人公の心情にも通じるでしょう。彼には、チェイスを楽しんでいる様子はありません。常に無口で無表情。そしてときどき、自らの暗い過去を回想します。
 そこには、夢の挫折や悲恋という個人的な要素に加え、ベトナム戦争や権力の腐敗など、当時の社会的な要素も深く影を落としています。最初にこの映画のことを「カー・アクション映画」と書きましたが、それ以上にやはり、「アメリカン・ニューシネマ」という呼び方が相応しい作品。
 
 全体の構成もちょっと変わっていて、内容的にはラスト・シークエンスに組み込まれるはずの描写が、いきなり冒頭にきています。これがまた独特の雰囲気を生んでいて、すでに冒頭から、ただ事ではない感じ。

 私は車に興味がないし運転もしないので、基本的に、車がメインの映画にはあまり感情移入できないのですが、この映画は別。コワルスキーの「旅」に引き込まれます。ただ、頻繁に観たいとは思いません。観ると悲しくなるので。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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