『再会迷宮』

(成人映画館での公開タイトルは『不倫同窓会 しざかり熟女』)
2007年 日本 監督:竹洞哲也 脚本:小松公典 出演:佐々木麻由子、サーモン鮭山、梅岡千里、那波隆史、青山えりな、松浦祐也、高見和正、倖田李梨

 先週「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE」にて、前回書いた『ヒロ子とヒロシ』と2本立てで鑑賞。脚本・演出・演技・撮影・美術など、あらゆる面でとても丁寧に作られている映画だと思います。また、リアルでしっとりしたドラマなのに、爆笑を誘うキャラクターが違和感なく登場していて、そこに興味をひかれました。

 舞台は地方の田舎町。主人公は、離婚して独り暮らしをしている30代の女性・真希(佐々木麻由子)。彼女の友人で高校時代の同級生・法雄(サーモン鮭山)は、5年前まで男性だったのですが、今では「ソフィービー・ルミ」と名乗るオカマのスナックママ。同じく真希の友人で元同級生の佳代子(梅岡千里)は、一貫して奔放な主婦で、常にセフレの居る生活を送っています。真希の元夫の親戚である若い女性・鈴音(青山えりな)と、鈴音の恋人の旭(松浦祐也)も、やたらとセックスしまくり状態。
 真希はもともと真面目で受け身的な性格のうえに、離婚の影響もあり、恋愛や男性に対して臆病になっています。周囲の人々の自由さを羨ましく思いつつも、一歩踏み出せないのです。そんなとき、高校時代に付き合っていた忍(那波隆史)が帰郷。ルミと佳代子は2人のために、小さな同窓会を開きます。そして。

 最初の段落で書いた「爆笑を誘うキャラクター」とは、鈴音の恋人・旭。彼は自称「鷹匠の弟子」で、常にフンドシ着用、しかも鷹のぬいぐるみの頭部みたいな物を手にはめ、騒々しく発情しまくっています。演じる松浦祐也は、顔も芝居も必要以上に濃い感じ。
 普通、こういうキャラクターがリアルなドラマに登場すると、あまりにも浮いてしまって、観ている側が困惑するという事態が発生しがちなのですが、この映画ではそうなっていません。不思議と作品に溶け込んでいるのです。何故なのか、自分なりに考えてみました。

 ひとつには、旭のこの珍妙ぶりが単なる賑やかしではなく、ちゃんと意味を持っているからでしょう。
 映画の終盤で真希が、それまでの真面目さから解放されたようなイタズラっぽい行動に出て、その理由を「ハジけてみたくて‥‥」と語るのですが、この「ハジけてみたい」という気持ちは、確実に周囲の人々の自由さに影響されてのもの。つまり、「私もハジけてみたい」。ルミのように、佳世子のように、鈴音ちゃんのように、そして旭くんのように。
 もちろんこれは、「彼らのやっていることを真似る」という意味ではなく、「時には彼らのように大胆なことをしてみよう」という意味。そして真希はイタズラっぽい行動のあと、さらに(彼女としては)非常に大胆な行動に出て、最終的には笑顔を獲得します。こう考えると、旭というキャラクターも意外と重要なのです。

 そして旭が映画の中でさほど浮いていないもう一つの理由は、ルミの存在。ルミは旭ほど珍妙ではなく、むしろある意味非常にシリアスなキャラクターなのですが、ビジュアル的には濃いのです。演じるサーモン鮭山は顔も体もゴツいので、女装姿がなかなか強烈。こういうキャラが頻繁に画面に映っていると、旭(そして松浦祐也)の珍妙さが緩和されるというか、「1人だけ目立ち過ぎ」という状態にならずに済みます。

 ところで「ソフィービー・ルミ」の「ソフィービー」について、劇中、ルミ自身がこう解説しています。「好きな女優の名前をくっつけたの、ソフィーとフィービー」。このセリフを聞いてすぐ私の頭の中に、ソフィー・マルソーとフィービー・ケイツの若き日の姿がチラリと浮かびました。大昔の一時期、彼女たちは日本の10代男子の間でかなり人気がありましたからねえ。その男子たちは、今では30代後半か40ちょいくらいになっているはず(念のため書いておきますが私は女子です)。
 そこで、この映画の主人公たち、そしておそらく脚本を書いた方がこの世代なのだろう‥と思って調べてみると、やはり脚本の小松公典氏は1970年生まれ、今年で38歳になる方でした。ちなみにルミ役のサーモン氏も同年齢。

 こうして書いているうちに、思い出しましたよ、私が中学生の時のこと。ある日『セーラー服と機関銃 完璧版』を観に映画館に行くと、前の席に私と同じ年頃の男子が座っていまして。彼は休憩時間中ずっと、中央にソフィー・マルソーの写真が付いたシングルレコード盤を手に持ち、写真部分をじーっと見つめていました。薬師丸ひろ子の映画を観に来て、ソフィー・マルソーの写真を凝視する男子。しかもレコード盤の。まあ、そんな時代でした。
 『再会迷宮』、個人的に好きな映画です。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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