『LOVE』

(成人館での公開タイトルは『イケイケ電車 ハメて、イカせて、やめないで!』)
1997年 日本 監督・脚本:田尻裕司 脚本:羅門ナカ、女池充 出演:朝倉麻里、池田一視、川屋せっちん、伊藤清美

 アップする順番がグチャグチャになってきました。これ、4月にポレポレ東中野の「人のデビュー作を笑うな」特集で、『PEEP SHOW』と2本立てで鑑賞した作品。実は随分前にある程度までは書いていたのですが、今ひとつアップする気になれず、そのままになっていました。

 人を死なせてしまい逃亡を続けるカップルとさまざまな問題を抱えた夫婦、そんな男女4人の運命が田舎町で交錯し‥‥という内容の、田尻裕司監督のデビュー作。以前観た彼の比較的近年の作品とはどうも雰囲気が違っていて、何だか瀬々敬久や井土紀州の世界をベースにして、今岡信治(近年は「いまおかしんじ」表記)の風味を混ぜたような印象を受けました。
 
 ただ、この映画の脚本家のうちの1人「羅門ナカ」は今岡監督の別名らしいので、彼の監督作をイメージするのは当然といえば当然なのでしょう。私がこの映画の中で「何となく今岡監督っぽいなあ」と思ったのは、終盤で夫婦の夫の方がやや突飛な行動を取るシーン。
 彼は田んぼのド真ん中で布団を抱えて妻の前に現れるのですが、この奇妙な突飛さが今岡氏の監督作を想起させました。しかし、こういう推測というのは当たらない場合が多いので、実際にはこのシーンは全く別の方のアイデアかもしれませんね、ははは‥‥。
 
 まあそれはいいとして、上記のシーン以外は全体的に、瀬々氏や井土氏の監督・脚本作品を連想しました。例えば、序盤でいきなり人が死んで、その「死」の影が全編を覆っていること。カップルの男の方が、「新宿のコインロッカーに捨てられていた孤児」という設定であること。そしてクライマックスの、皆が山奥の湖で浄化(昇華?)されるシーン。
 つまり、「死」がいつも傍にあるような感覚、また現実に起きた事件の要素を入れつつ観念的な描写でグイグイ押していくあたり、瀬々氏や井土氏的だなあーと思ったわけです。
 
 田尻・今岡・女池の3氏は皆若い頃に、瀬々氏や井土氏が関わった作品の助監督を務めるなどしていたので、知らず知らずのうちに影響を受けたのでしょうか。あり得ることです。そしてその影響(あるいは呪縛?)から少しずつ脱して、しだいに各自の持ち味を充分に発揮できるようになったのでしょう。おそらく。

 ‥‥というようなことを観た時に感じ、わりとすぐに書いてはみたのですが、今までアップしてなかったわけです。なぜかというとこの文章、あまり説得力が無いし、内容も無いから。だいたい、誰それの影響がどうとかエラソーに書いていますが、私は決して映画をたくさん観ているわけではないので、そういう人間が監督同士の影響関係など語ってもしょうがないのです、基本的には。
 あともうひとつ、私自身、そういう影響関係について考えたり書いたりするのは、あまり好きではありません。それよりも、個々の作品の構造などについて(稚拙ながらも)分析するのが好きだし、面白いと思っています。
 
 そんなわけで、自分としてもやや不本意だし、文中に名前を出した各氏に対しても少々失礼な気もするのですが、それでもやはり正直な印象として、記録しておきたいと思います。ひとことで言うと、この映画を観て、瀬々氏の呪縛力を感じました(井土氏は瀬々氏の弟子にあたる人なので、やはり大親分は瀬々氏であろう、と)。

 何だか瀬々氏のことを「怖い呪術師」みたいに書いていますが、まあそんな気がしないでもないです。以前記事に書いた15年ほど前の四天王特集で、トークのときに自分のことを「ワシはあ~」と語っていた彼の姿は、なかなか強烈でした。
 あ、そういえば5年くらい前、彼と今岡氏の師弟対談みたいなトークも観ました。たしか今岡氏が胸に「天才」という字がプリントされたTシャツを着ていて、そのわりには控えめな態度だったことを憶えています。もしかしたら、そのあたりから今回のような発想が出てきてしまったのかもしれません。
 
 ちなみに、瀬々氏が監督・脚本で今岡氏が助監督を務めた『本番レズ 恥ずかしい体位』という映画が、私はとても好きです。「最後にヨイショしておこう」と思って書いているわけではありません。本当に好きなのです。とても切なくて儚げで、重い夢のような映画。いつかこの映画についても書くつもりです。

 それにしても、田尻氏の監督作品なのに殆ど他の人のことばかり書いている‥‥う~‥‥すいません。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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