『アフリカの光』

1975年 日本 監督:神代辰巳 脚本:中島丈博 出演:萩原健一、田中邦衛、桃井かおり、高橋洋子、藤竜也
 
 前の記事に書いた『青春の蹉跌』と、同じ日に同じ劇場で鑑賞(といっても2本立てではなく各回入替制)。要するに、シネマアートン下北沢で行われていた特集上映「ショーケンが好きだ!」の中の2本を観たわけです。
 
 ちなみに私はショーケンのファンではありません。や、嫌いなわけではないですよ。いい俳優さんだと思います。でもあまり好みではないし、個人的な思い入れも無いのです。ただ今回の2本を立て続けに観て、特別な資質を持った俳優さんであることは改めて感じました。

 両方とも、神代辰巳監督の作品。神代監督といえば、長回しで俳優にダラダラした動きをさせることで有名ですが、この演出とショーケンの演技が実によく馴染んでいるのです。
 例えば、同じ神代監督の『棒の哀しみ』に主演した奥田瑛二は、ちょっとした仕草に至るまで非常に繊細な演技をしていたのですが、そこには「工夫」や「緻密な計算」といったものが感じられました。それに対してショーケンの場合、本当はある程度計算して演技しているんでしょうけど、そうでなく、まるで無意識に何も考えずに動いているように見えるのです。この違いは演技力云々というよりも、資質や持ち味の違いなのでしょう。

 『青春の蹉跌』も『アフリカの光』も、その無意識風の長回し演技が堪能できますが、特に『アフリカ~』は凄いです。ほとんど彼のダラダラぶりを鑑賞するための映画。なぜって、あまりストーリーが無いから。
 『青春~』の場合、骨格としては古典的で分かりやすいストーリーがあるわけですが、『アフリカ~』はかなり曖昧模糊とした世界。

 ショーケンと田中邦衛演じる2人組が「アフリカ行きの船に乗りたい」と北国の港町で粘るだけで、その理由も2人の関係も説明されません。そして田中邦衛は途中で画面から姿を消します。そうするともう、ショーケンの独壇場。たばこの煙をシュッ・シュッ・ポッ・ポと汽車のように吐き出したり、時報に合わせてオナラ(!)をしたり、何だか演技というよりも本当に暇つぶししているような感じ。
 
 彼はこういう「生きていること自体が暇つぶし」とでも言いたげな人物が似合います。『青春~』でも、やり方によっては「野望のために突き進むギラギラした男」になりそうなキャラクターを演じているのに、結果としてスクリーンに映っているのは、「全てがどうでもいいと思っているような男」なのです。『アフリカ~』ではそれに鮮やかな稚気が加わり、「諦感&稚気」という珍しい組み合わせを体現。余人には真似のできない境地に到達しています。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
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