『真夏のおでん』 観劇

 前に告知記事を書いた『真夏のおでん』、先日観てきました。昭和58年の小さな商店街を舞台にしたお芝居です。酒屋、魚屋、豆腐屋など昔ながらの個人商店が並ぶ街に、コンビニという強敵が出現。いろいろあって酒屋のオッサンとコンビ二店長が対立し、互いに店の存続をかけて花火大会の日の売り上げを競うことに‥‥。
 
 かなり前方の席に座っていたので、舞台上のセットを細かく観察することが出来ました。とにかく美術さんや小道具さんの頑張りがうかがえる、酒屋の店内のセット。当時の宣伝ポスター、ブタの蚊取り線香入れ、古い型のアイス菓子用冷凍庫など、あの頃の雰囲気がリアルに再現されていました。
 
 それは衣装やヘアメイクも同じ。まず酒屋のオッサンのはいているジーンズが、中途半端な丈のケミカルウォッシュ(あの、まだらな感じの‥‥)。足には茶色の健康サンダル。あと、コンビニに味方する女子高生2人組の髪型が、ポニーテールと聖子ちゃんカット。といった具合に登場人物たちのファッションが、いちいち懐かしくも恥ずかしい感じにまとめられていて、お見事でした。
 
 で、内容はといいますと、いろんな意味で「分かりやすかった」です。おそらくこのお芝居、老若男女を問わず誰が観てもスッと作品世界に入っていって、楽しんだり共感したり出来るでしょう。しかしそれは言葉を変えると、ちょっと屈折が無さすぎるということでもあります。
 
 私が気になったのは、ストーリーというよりもキャラクターの造形です。酒屋のオッサンは、少しダメなところもあるけど人情味にあふれた、いわゆる「あったかい人」。コンビ二店長は、合理的・打算的で人情味のかけらもない「冷たい人」。この対比が非常に極端で、特にコンビ二店長は完全な悪役・憎まれ役なんですよね。
 もちろんそれは、酒屋のオッサンをはじめとする商店街の人々の長所を際立たせる効果があるのですが、あまりにも単純な悪役すぎるというか‥‥。もう少し陰影や複雑さがあれば、キャラクターに立体感が増して、より面白くなったんじゃないかと思います。
 
 ただ、こういうのは好みの問題ですし、その人の演劇体験によっても評価は変わってくるでしょう。つまり、演劇にどんな要素を求めているか、ということです。
 思い返してみると、私は高校から大学の途中まではわりと演劇に親しんでいて(その後は急速に遠ざかりました)、当時観た作品を演出家の名前として挙げると、佐藤信、北村想、野田秀樹、鴻上尚史、渡辺えり子、つかこうへい‥‥。これらの人名でお分かりかと思いますが、学生のとき親しんだ作品にはけっこう屈折した内容のものが多かったんです。そのあたりで自分の演劇観が形成されたので、分かりやすい作品を観るとちょっと違和感を持ってしまうわけです。
 
 でも、今回の『真夏のおでん』の作・演出家である三島ゆたか氏は、映画『机のなかみ』のイベントなどでご本人を拝見して、その独特の雰囲気や芸達者ぶりにとても惹かれたので、今後のご活躍を期待しています!
 ちなみに、わが長年の知人・内藤トモヤさんの今回の役柄(酒屋のオッサン)および演技は、かなり本人の地に近かったです。特に、酒が入ると饒舌になってニヤニヤするところとか。そんなわけで、どうも素の内藤さんを見ているような感じでした。でも、泣かせどころでも押し付けがましくなく、抑え気味な演技でよかったです。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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