『酔客万来』

正式タイトルは『酔客万来 集団的押し掛けインタビュー』
2007年発行 編集:酒とつまみ編集部 インタビューされている人:中島らも、伊崎脩五郎、蝶野正洋、みうらじゅん、高田渡
『酒とつまみ』公式サイト→http://www.saketsuma.com/

 あっついですねー。これだけ暑いと、世の中の呑み助さんたちはきっと「暑さ」を言い訳にして、ビールやらホッピーやら発泡酒やら、とにかく冷やし系のお酒をガバガバ飲みまくっていることでしょう(私もちょっとだけ‥‥)。そんなわけで、今回は「酒に関する本」をご紹介。映画とは関係ありません、多分。
 
 さて、まず私の好きなミニコミ誌で『酒とつまみ』というのがありまして。内容はまあタイトルのとおりで、ひたすら「酒」と「つまみ」を語る雑誌。といっても、酒に関する気の利いた蘊蓄や、洒落たお店を紹介する記事などは載っていません。では、どんな記事が載っているのかというと。
 例えば「酒飲み川柳」という連載コーナー。読者が酒飲みの実態や心境を川柳で表現して投稿し、編集部が「今号の一席」を選んでおります。最新号の一席は、「俺はゲロ 青空球児は ゲロゲーロ」。他の作品には、「立ちションの はずがズボンの 尻濡らす」なんていうのもあります。
 
 だいたいお分かりかと思いますが、この雑誌、全体的にゲロや下痢の話題が多いです。あと、「痛風になった」とか「γ-GTPの数値が異常に高い」などのフレーズも頻出。とにかく、酒飲みのバカな部分をかき集めたような雑誌です。編集者も読者も飲兵衛で、酒による失敗や体調不良が多く、そんな自分たちをバカだと認識したうえで楽しんでいる感じ。

 その『酒とつまみ』誌の名物連載「酔客万来」の、創刊号から第5号までの掲載記事に加筆して単行本化したものが、『酔客万来 集団的押し掛けインタビュー』。内容はこれまたタイトルどおりで、酒好きの著名人に編集部の面々が飲み屋でインタビューしたもの。もちろんアルコールまみれなので、インタビュー本というよりも「宴会の詳しい記録」みたいになっています。
 
 登場する著名人は、中島らも、伊崎脩五郎、蝶野正洋、みうらじゅん、高田渡(掲載順)。ご存じのように、最初と最後のお2人は、昼間の早い時間から飲み屋で目撃されることにかけては西と東の両巨頭だった、そして共に50代で亡くなった方たちです。そんなわけでやはり、らも氏と高田氏のインタビューは特に印象的。
 
 例えば、らも氏は最初ほとんど喋らず、手が若干震えているような状態なのに、酒がすすむと次第に饒舌になり、手の震えも無くなります。これはつまり‥‥ってことで、読んでいて何とも言えない気持ちに。
 また高田氏はトリなので、彼のインタビューの幕切れが本自体の幕切れになるわけですが、この部分は読んでいてウルッときます。発言も、締めの文章も、そして写真も。あえて詳述はしませんので、興味のある方は是非ご一読を。
 
 お2人に関しては、どうしても「若いうちに亡くなった」という事実を意識してしまうので、やや感傷的な読み方になってしまいますが、しかし『酒とつまみ』編集部が作った本だけあってバカ話もガンガン登場。基本的には楽しく読めますよ。らも氏も高田氏も、実に明るく面白く、その種の話をしてくれています。
 先ほど高田氏のインタビューの幕切れが云々、と書きましたが、これも一旦シリアスに終わったかに見えて最後の最後にまた○○話が出てくるという、『酒つま』らしい構成になっています。

 ところで、いかにも文科系な著名人が並ぶ中、なぜプロレスの蝶野氏が登場しているのかというと。なんと『酒つま』の編集長と蝶野氏は、中学校の同級生だったとか。そんなわけで、中学時代の思い出から有名レスラーの裏エピソードまで、多彩な話に花が咲いています。ちなみにこの本では、ゲストが何をどれくらい注文したかということも、かなり細かく書かれているので、プロレスラーがいかによく飲みよく食べるかが具体的に分かります。
 
 つぎに伊崎氏。彼は‥‥やたらと下痢の話をしています。ご本人いわく、「軟便友の会」の会長だそうで。ハア~。このインタビューを読むまで、こんな変な人だとは知りませんでした(←呆れながらも褒めている)。
 そしてみうら氏は、「京都って、ビンビンじゃない半勃ちの男たちが楽しむ街なんですね(中略)“はんなり”っていう言葉があるでしょ。あれはね、半勃ちのことなんだ」などと、お得意の屁理屈系エロ・トークを披露。さらに彼、『酒とつまみ』の見た目について「全ページ白黒の『月刊住職』みたいな雑誌」と言ったりして、さすがに比喩表現が巧いです。

 総評。いわゆる無頼派気取り(“酒飲みな自分”にウットリしているような人)でなく、ただ単に「酒が好き!」な人たちが登場しているところが、この本の美点だと思います。
プロフィール

サイボク

Author:サイボク
60年代後半生まれの♀。
東京在住。
twitter.com/saiboku_ya

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